エンタメも仕事も総合力が大事というお話 翔んで埼玉の総合力とコア層への訴求力を評価する
私はエンタメの未来予測をする時に総合力を重要視しています。本日は未来予想と人からの評価の受け方における重要な考え方、総合力について書いて行きたいと思います。
総合力が高いとは全体に大きな悪影響を与える欠点が無いという事です
例えばソシャゲにおいて10点満点評価で及第点は6点という基準で採点した時に
ストーリー9点
ゲームシステム4点
キャラクターデザイン8点
合計得点21点
のゲームと
ストーリー7点
ゲームシステム6点
キャラクターデザイン6点
合計得点19点
のゲームがあったとします。どちらが長く大きな売上を上げると思いますか?
それは後者の方なのです。合計得点は低くても大きな欠点がない方が売上は安定します。
ゲームを進めていく上で重要な事は不快感がない事です。音楽が不協和音であるとか、ゲームシステムがつまらなくて育成が苦痛でストーリーを見る事が非常に面倒だとユーザーが感じてしまったならばゲームの継続率は著しく低下します。
流行するエンタメビジネスには必ず総合力があります。
大ヒット映画
アナと雪の女王で考えてみます
曲が素晴らしいのは有名ですが、キャラクターデザイン、ストーリー、テンポ、映像美、子供も大人も楽しめるテーマ性とどの点のクオリティを見ても及第点以上を占めているので大ヒットしたわけです。
アナ雪はストーリーだけ抜き出して評価したならば及第点の6点という所でしょう。ストーリーが素晴らしいとされる映画には及ばないレベルです。
しかし、曲は9点、キャラクターデザインは8点と他の及第点以上の要素を組み合わせていく事で映画全体としては名作になったのです。
アナ雪の最初の構想はアナが雪の女王であるエルサを倒しに行くというものだったそうです。
仲の良かった姉を倒しに行く胸糞の悪い3点ぐらいのストーリーの映画でしたら、どんなに良い音楽でどんなに良いキャラクターデザインがあってもここまでの大ヒットは記録しなかったでしょう。
オオコケする映画は
ストーリー、役者、演出、音楽全ての評価が悪くてコケルわけではなく、
ストーリーはいいんだけど音楽が盛り上がらないとか
役者の演技は素晴らしいけどストーリーが酷すぎるとか
一つ以上は映画をぶち壊す酷い要素が必ず入っていますので観察してみると面白いと思います。
全部が悪いわけではなく、むしろ良い所の方が多いのに一つ抜き出て駄目なところがあると作品の売上や大衆の評価は大きく落ちます。
よく尖った方がコアなファンに人気が出ていいという意見も見ますが、尖った部分はそのままに著しく他よりも劣る部分も少しだけ改善すればファンの範囲は広がるのにもったいないなと感じています。
わかる人にだけわかればいいとクリエイター側が切り捨てる事は簡単ですが、ある程度は多くの人が楽しめる作り方にしておき、好きな人はさらに楽しめる作り方にした方が売上には繋がると思います。
最近のヒット映画ですと
翔んで埼玉がある程度のクオリティは維持しつつコアな人はさらに楽しめる作り方になっていると思いました。
以下、翔んで埼玉のネタバレがありますのでご了承ください。
映画のクオリティとしては
ギャグ、ストーリー、役者、演出、テンポ、CG、音楽と
一つ一つの要素に注目すれば翔んで埼玉よりも遥かにクオリティの高い映画はすぐに思いつきます。
しかし、翔んで埼玉は映画での重要な上記の要素で著しく観客に不快感を与える要素はほとんど持っていません。
観客がCGがショボくて残念な映画だなと感じてしまった瞬間にその映画の大ヒットは厳しいものになってしまうものですが
翔んで埼玉も予算がなかったのかはわかりませんが、CGがかなり怪しい部分があります。
しかし、不快感を感じないギリギリのラインに仕上げてきており、その不安定なCGがギャグ要素になっているので問題は無く感じてしまう構成になっていました。
馬鹿馬鹿しい事に全力で演技している役者達を見る事が翔んで埼玉の大きな魅力ですが、
関東在住のいわゆる翔んで埼玉のメインターゲットのコア層には関東あるある、埼玉あるあるでさらに映画の世界にハマる要素がたくさん散りばめられています。
埼玉知識がなくても楽しめる映画であり、
埼玉知識があると数段階上の楽しさを味わえるというのが
コアなターゲットも意識しつつ、大衆も見捨てていないという見事な作り方だったのではないでしょうか?
わかる人にだけわかればいい、楽しいと思う人だけ楽しめればいいと言ってしまって大衆を切り捨てる事は簡単ですが、
より多くの人に楽しんでもらう為に各要素は平均以上にしつつ、
コアなファンはさらに深く楽しめるような尖った仕掛けをしているエンタメこそが世の中で大ヒットしているという事実からクリエイター達は目を背けてはいけないと思います。
総合力が大事だというお話はエンタメの世界だけではありません。
例えば、飲食店においてもお客は味だけだはなく、従業員の態度、提供スピード、メニューのわかりやすさ、値段、BGM、店内装飾と様々な要素でお店の良し悪しを判断しています。
全てが不快感を感じない平均レベル以上かつ何か尖った良い所があるならば、その飲食店は繁盛しているはずなので是非観察してみてください。
仕事も総合力です。
90点の書類を作るためにスピードが30点ならばあなたの評価はガタ落ちです。
トロイ社員だとレッテルを貼られてしまうからです。
60点のクオリティで60点のスピードの社員の方が評価されてしまうのは期限がある仕事の世界では当たり前の事なのです。
得意な事を伸ばす事は非常に大切ですが、
最低限の人を不快にさせない平均ギリギリぐらいのレベルまで自分の総合力を高めた後に尖った部分を見せていくと驚く程、評価されるようになっている事に驚くと思います。
新入社員が先輩社員に怒られてしまうことも総合力が先輩社員と比べて不足している部分があるだけで尖った部分の勝負では先輩社員達に負けない物を持っている人がたくさんいると思います。
怒られて認められなくて悔しい思いをする事はたくさんあるとは思いますが、あなたの人間的な本当の力が先輩達に負けているというわけではなく、
人間は総合的に人やサービスを判断する生き物だという意識を持って、総合力を最低限の所までは磨いてみてください。
あなたの尖った良い所がより光輝いて他の人の目にも止まるようになってきます。