わたしのかばんに入れるものは•••【短編小説】
「仕事行ってくるね~。朝ご飯は、用意してあるから、レンジであっためて食べて~。」
リビングから母の声が聞こえ、目を覚ます。
「わかった~。気を付けて行ってきてね」
母の声掛けに気づいたわたしは、寝ぼけ眼のまま、返事をした。
ベッドの中で、天井を見上げたまま、
しばし考え事をしていたら、
8時30分を迎えようとしていた。
両親は、7時30分には家を出るから、
1時間近く時間が経ってしまっている。
「いけない!今日は、りんちゃんと、遊びに行くんだった!!」
急いで起きあがり、顔を洗ってから、食卓につき、母が用意してくれていた朝食を摂る。
母の作ったご飯を食べていたら、懐かしさを感じていた。
わたしは、あしたから新生活を迎える。
すでに引っ越しは終えている。
引っ越し作業を終えて、再び実家に戻ってきていたから、ひとり暮らしの生活は、明日からだ。
今日の夜行バスで向かい、明日の朝には現地に到着する予定である。
友だちともしばらく会えなくなるから、地元で暮らす最後の日は、遊びに行くことにしていた。
夕食を家族と食べたあと、バスターミナルまで、パート終わりの母に送ってもらう。
遊びから帰ったあとで荷物準備をするようでは、間に合わなくなる可能性もあると思ったわたしは、昨日のうちに、できる範囲の準備を済ませていた。
引っ越しを終えているから、家を出るときの荷物は、本当に少ない。
手帳と筆記用具、スマートフォンとタブレット、財布くらい。
リュック1つで収まってしまうくらいの少ない荷物である。
今使っているこのリュックは、機能的で、とても気に入っているわたしのかばんだ。
リュックには、5個のポケットと仕切りに分けられた2つのスペースがある。
とある一つのポケットのところには、あるものしか入れないと決めている。
その1つとは大切な人からもらったもの。
病気がちだった祖母が、わたしの大学受験合格祈願をして手づくりしてくれた、お守りである。
受験の時は、なんだか恥ずかしくて、友人にも見せることはなかったお守り。
でも、受験の時、必ずこのリュックに入れていた。
結果として、志望大学に合格できたから、わたしは、このお守りのおかげだと思っている。
このお守りの定位置は、リュックの中の独立したポケットだった。
受験をして、合格通知をもらった時、一番に報告しに行った。
「おばあちゃんのお守りのおかげだよ!」と伝えたら、にこやかな笑顔を返してくれた。
言葉を発することが出来なくても、その祖母の笑顔は、わたしに希望を託してくれたと感じた。
そんな想いが乗っているお守りだからこそ、このポケットには、お守りと夢を入れる空間にしておきたい。
今のところ、新生活でも、このリュックに活躍してもらおうと思っている。
その時の生活スタイルによって、持ち歩くかばんは変わるかもしれないけど、このお守りを入れておくスペースには、他の物を入れないようにしたい。
大切なお守りとともに、わたしの夢と祖母の想いを持ち歩きたいから。
食事を終えて、静かに手を合わせた。
≪ 完 ≫
※この物語は、フィクションです。
◎◎◎◎◎
あとがき
小説スタイル第2弾でした。
本当は、リアルなわたしのかばんについて
書くテーマだろうなあと思いつつ、
なんだか創作したくなり、
短編小説としてみました。
懐かしい食卓と思い出が掛け合わされると、
あったかさもあり、切なさも混じった
なんとも言い表し難いマリアージュを
味わいました。
そんな様子が伝わるといいな…と思い、
書いてみた作品です。
春、新生活シーズンですね🌸
新生活を始められたみなさん、
体調崩されていないですか?
頑張りすぎず、
毎日乗り越えていきましょう!
▼ステキな企画、ありがとうございます!▼
◎
最後までお読みくださり、
ありがとうございました!
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ここまでお読みいただいたあなたに、
幸せが訪れますように🍀
また次の投稿で、お会いいたしましょう。
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