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レインボーリボン メールマガジン 第99号 日本のバナナはなぜ安い?

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■■  レインボーリボン メールマガジン 第99号
■■   日本のバナナはなぜ安い?
  2022/6/30
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。

今月初め、在日本フィリピン大使が、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスの影響で、バナナ生産のコストが大幅に上昇しているとして、日本のバナナ小売り価格の引き上げを要望する記者会見を開きました。テレビではフィリピン・ミンダナオ島ダバオ市のバナナ農園で働く人々の映像が流れ、彼らの生活のために日本人はバナナ値上げを受け容れるべきという論調が優勢でした。

私が疑問に思ったのは、日本のバナナの価格が上がれば、フィリピンの人々の生活は潤うのか?ということです。

鶴見良行さんの「バナナと日本人――フィリピン農園と食卓のあいだ」という名著があります。歴史の書でもあり、社会学、フィールドワーク、ルポルタージュの書でもあり、何よりも思索、哲学の書です。
岩波新書で1982年第1刷発行、2021年第62刷ですから、多くの人に読み継がれていることがわかります。
この本では1978年のバナナの価格構成について、表にして説明しています。
この時代、多国籍企業のドール社にフィリピンの契約農家が納入するバナナの価格は、ドールのバナナを買う日本人が支払う金額の8.3%でしかありませんでした。
「バナナが商品化され市場に流れて来る過程で生れる利益は、フィリピンの生産とも日本の消費ともかかわりのない多国籍企業の手に入るようになっている」のです。
農家との契約は「騙し」と言っても良い手法、借金という「見えない鎖」で農家を縛り、農薬による自然・健康破壊、そして、地域の経済を「自立」とは真逆の構造に陥れ、貧困と暴力による支配を確立する――鶴見先生が克明に描いた「バナナと日本人の間にある構造」は、いま、変わっているのでしょうか。

根本的にはまったく変わっていないことを、多くの研究者、研究機関が告発しています。
「おいしいバナナのまずい問題~生産地フィリピンで起こっている人権侵害」
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2021/03/post-201900.html

「ビジネスと人権問題【バナナ生産業】」
https://slideshowjp.com/doc/899220/%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%81%A8%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E5%95%8F%E9%A1%8C-%E3%80%90%E3%83%90%E3%83%8A%E3%83%8A%E7%94%9F%E7%94%A3%E6%A5%AD%E3%80%91

多国籍企業による人権侵害の中でも特に心が痛むのは、むごい「児童労働」です。
長時間、低賃金、農薬による健康被害、何よりも「遊び」や「学び」を経験して成長していく権利を奪われていることです。

6月12日は国際労働機関(ILO)が定めた「児童労働反対世界デー」でした。
ユニセフによれば、新型コロナウィルスのパンデミックが始まって以来、子どもの貧困率が上昇し、世界の子どもの10人に1人が児童労働を強いられているといいます。

「児童労働が子どもたちに与える影響は壊滅的であり、それは生涯にわたって続く可能性があります。児童労働はすべての子どもが子どもとして生きる権利、搾取や虐待、暴力を受けずに成長する権利を侵害します。また、子どもたちの教育を奪い、将来の可能性を制限し、深刻な貧困の連鎖を生みます。」
(キャサリン・ラッセル・ユニセフ事務局長の国連演説)

日本では今月、「日本国憲法及び児童の権利条約の精神にのっとり」「全ての子ども」が「自律した個人として」「その権利の擁護が図られる」という「こども基本法」が国会で成立しました。
1994年に日本政府が子どもの権利条約を批准して以降、約30年を経て、ようやくの「基本法」です。

児童福祉法も改正され、虐待を受けた子どもを親から引き離す「一時保護」の手続きに司法審査を関与させることや、児童養護施設や里親家庭などで暮らす若者が自立支援を受けられる年齢の制限を撤廃することが決まりました。

世の中は少しずつ前進しています。
レインボーリボンも今月、こども食堂のボランティアが集まって、NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部(YSC)による「みんなでつくるインクルーシブ社会――minc」研修を受けました。
日本に定住する外国人や、外国にルーツのある子ども、そして「難民」の人権を守り、共に生きる社会をつくるための知識、意識、心構えを学びました。
これまでレインボーリボンが出会ってきた外国ルーツの子どもたちとの関わりについても発表したのですが、講師の先生から「レインボーリボンの歩みを聞きながら、活動を通してことばや心の壁を乗り越えている事例を知り、本当に感動した。海外ルーツの方たちにとって地域に居場所があるというのは、とても心強いことだと思う」と言っていただきました。

今月20日は、「世界難民の日」でもありました。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2022年、紛争や迫害で避難を強いられた人は1億人を超えました。その4割が子どもだそうです。
「生きる権利」を脅かされる子どもたちのために自分に何ができるのか、考えつづけています。

シンク・グローバル、アクト・ローカル(地球規模で考え、地域で行動する)。
こども食堂も「いじめ防止」も、多文化共生のPTA活動も、目の前にいる子どもたち、親たちのための小さな小さな活動ですが、「世界を変える」一粒だと思っています。

「私たちは豊かでかれらは貧しく、だから豊かな私たちがかれらに思いを及ぼすべきだというのではない。たがいに相手への理解を視野に入れて、自分の立場を構築しないと、貧しさと豊かさのちがいは――言いかえれば、かれらの孤立と私たちの自己満足の距離は、この断絶を利用している経済の仕組みを温存させるだけに終るだろう」
(「バナナと日本人」鶴見良行著)
(代表・緒方美穂子)

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