[東京90's 下北沢編]まぼろしと生きる町
この町に目抜き通りなんてものはない。駅前から無秩序に伸びる道はどれも車がすれちがえないほどに細く、どの通りも似たような商店街だ。どれも少しずつカーブしていて、土地勘が無いと自分がどの辺を歩いているのかあっという間に見失う。そんな通りの一つに面した半地下の料理屋におれたちはよく集まっていた。まだ一度も注文されたことのないものもあるんじゃないかと思うほど大量の料理が並ぶメニュー。毎回初めてのものを注文した。
思えばおれたちは不思議な顔合わせだった。バンドをやっているおれ、劇