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まえがき『朔望』~旅する日本語

 長かった。

「旅する日本語」コンテストへの応募作品として、連作短編『朔望』を書き終えた。11夜連続投稿で公開する予定です。

「旅する日本語」コンテストの概要はこちら。

 今年で三回目だそうですが、わたしは今年の4月からnoteを始めたので初参加です。

 ざっくり要約すると、

・課題ワード11個のうちのどれか一つを使う
・都道府県を入れる
・上の二つを満たした400字以内のショートストーリー、エッセイ、または写真

を投稿しなさいよ、というもの。

 400字…。

 よし、いっちょやってみますか、と、11個のワードを眺め、見ただけでサクッと使えそうな語を使って書いてみることにしました。

 400字…。無理じゃね?

 都道府県を入れるのも指定単語を入れるのも難しいのですが、わたしの場合、何よりもハードルは400字でした。

 仕切り直し。

 まずは11の言葉を調べるところから。手元にあるどの辞書にも、「喉鼓」だけ載っていませんでした。(ネットで調べてみたところ、広辞苑と大辞泉には載っている模様ですが未確認)

 意味については上記の募集note にも書かれていますが、用例を調べたくて、いくつか辞書を引きました。

 ところが、大半の語で、用例が古いものばかり。万葉集、古今和歌集、徒然草…。古き良き日本語の復古という意図はわかるけれど、中世よりも新しい用例が見つからない言葉というのはほとんど死語に近いのではないか。

 特に用例が一つしか見つからない(どの辞書にも同じ一文が載っている)言葉もあり、そういうものを現代語の文章内でどうやって使えば良いのか、どうすれば場違いにならないのか、出口の見えない迷路の中にいるようでした。

 この用例を調べるのに数日を費やし、次に、「旅とはなにか」を考えました。コンテストのタイトルは「旅する日本語」なので、「旅する」「日本語」という二つの要素があります。「日本語」の方は課題ワードが11個提示されているのでそれを使うとして、「旅する」の方。こちらは「都道府県」を入れるという条件がありますが、その都道府県がどう使われるかは、制限されていません。

 つまりある都道府県が出発地でも目的地でも経由地でも良く、あるいはぜんぜん関係ない地でも良いということだと解釈しました。しかし「旅する」なので、「旅」は盛り込むべきでしょう。でもこの「旅」も、いろいろと解釈できます。

「旅」とはなんだろう。どこかへ行くこと。旅行。日常的に行くところではないどこかへ行くこと。いつも行くスーパーや会社へ行くことを「旅」とは言わない。「旅」はきっと非日常的なものだ。

 そんな風にあれこれ迷いこみながら考え、とても重要なポイントに気づきました。

 帰ってくる。

 旅に出ると、帰ってくる。旅とはどこかへ出かけて行って帰ってくることだ。帰ってこなければ移住か、または行き倒れ、客死であり、「帰ってくる」ということが旅の重要な要素ではないか、と気づきました。

 帰ってくるとはなんだろう。始まった場所へ戻ってくること。ループ。

 こうして、わたしは「旅」を掴みました。これだ。始まりがあって目的地があって何らかのあれこれがあって、始まった場所へ帰ってくる。帰ってくれば、また旅に出ることができる。

 こうして、11の言葉を連れて出かける旅が見えました。

 明日の晩から11夜連続、午前0時30分に公開するという形で連載します。わたしの書いた「旅する日本語」は11のワード、11本の連作短編です。17日0時30分に第一回が公開され、27日午前0時30分に第十一回の最終回を迎えます。

 そのあと、28日の午前0時30分にあとがきを公開する予定です。(本編11本は完成済みですがあとがきは未着手です)

 自作まとめマガジンを用意してそこに回収していくので、ぜひ読んでいただければと思います。

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涼雨 零音
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