DEI②
前回のDEI①についての考察に続き、今回はより具体的な取り組みや課題について深掘りしていきます。
DEIを推進する取り組みとして挙げられていた一つが、
ニコイチ研修
と呼ばれる取り組みです。
これは異なる企業の社員同士がペアを組み、お互いの業務や組織文化について学び合う研修方法です。
この研修の利点は、自社の常識が他社では通用しないことに気づいたり、異なる視点や方法論を学べたりすることです。
DEIの観点からも、多様な価値観や働き方に触れることで、より包括的な組織づくりにつながる可能性があります。
また、女性リーダーの育成は、DEIの重要な要素の一つです。
Women's Initiative for Leadership
もその一つで、日本における女性リーダー育成の代表的な取り組みとして挙げられました。
これらのプログラムでは、リーダーシップスキルの向上だけでなく、参加者同士のネットワーク構築も重視されています。
多様な背景を持つ女性リーダーたちが繋がることで、新たなイノベーションが生まれる可能性も高まります。
DEIを推進する上で重要なのは、
組織全体で共通のゴールを持つ
ことです。
多様性を尊重しつつ、どのような組織を目指すのか、明確なビジョンを描くことが求められます。
このビジョン作りには、できるだけ多様な声を取り入れることが大切です。
トップダウンだけでなく、ボトムアップの意見も積極的に取り入れ、全員が「自分ごと」として捉えられるゴール設定を心がけましょう。
DEIの観点から見過ごせないのが、
ビジネス上の意思決定プロセス
です。
特に発注や取引先の選定において、「飲みの場(キャバクラなど)」での非公式な決定は避けるべきでしょう。
また、発注側も取引先のDEIへの取り組みをデューデリジェンスの一環として確認することが求められます。
これにより、サプライチェーン全体でのDEI推進につながります。
マイノリティに優しい会社は、結果的にマジョリティにも優しい
組織になることが多いです。
例えば、育児や介護との両立支援は、性別や家族構成に関わらず全ての従業員にとってメリットになります。
ただし、この実現には男女両方の価値観の変革が必要です。
従来の「男性は仕事、女性は家庭」という固定観念から脱却し、個人の能力と希望に基づいたキャリア形成を支援する文化づくりが求められます。
DEIを推進する上で、昔の男性社会を全面的に否定する必要はありません。
むしろ、時代の変化に合わせて、よりインクルーシブな組織へと進化させていく姿勢が重要です。
DEIの推進スピードは、組織のフェーズや現状に応じて調整する必要があります。
急激な変革は反発を招く可能性もあるため、段階的なアプローチが有効です。
DEIを急激に推し進めると、逆に組織内の分断を招く危険性もあります。
例えば、特定のグループだけが優遇されているという不満が生まれる可能性があります。
このリスクを回避するためには、透明性の高いコミュニケーションと、全員参加型の取り組みが欠かせません。
DEIの本質は「排除」ではなく「包摂」であることを、常に意識する必要があります。
DEIの推進は、組織の持続的な成長と革新のために不可欠です。
しかし、その実現には慎重かつ戦略的なアプローチが求められます。
一人ひとりの個性と能力が最大限に発揮される組織づくりを目指し、継続的な取り組みを行っていくことが重要です。