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#5【新卒1年目】軽率な行動がプロジェクト破断危機に! 

いつもお読み頂きありがとうございます。前回は【#4 腐りかけを救ってくれたのは同期でした】をご紹介しました。昔から大人数での活動が苦手な私にとって、コアな関りとなる数名の同期は本当にありがたい存在でした。

 ようやく外部出向、国の研究機関での仕事も慣れてきた頃、新卒1年目最大の危機が勃発します。と言うか「させます」が正しいですね。
 今回は、不用意な行動と軽はずみな発言により会社初の産学官連携プロジェクトを破断の危機にしてしまった、メチャクチャ苦いエピソードです。
 



やってしまった備品破損の報告漏れ

 配属1カ月でまさかの外部出向辞令、そして出向先は国の研究機関という新卒1年目にはハードルの高い状況になってしまった私です。

研究室の責任者で産学官連携プロジェクトの中心リーダーでもある先生からの激辛レポート指導もなんとかクリアできるようになってきた頃、出向から2カ月強の時間が経っていました。
 研究設備や試験機器などの使い方もマスターして、ある程度のことは一人で作業できるようになりました。
そして研究室の1画のデスクを借りて、測定の結果をまとめていく日々。

そんな一通り慣れた頃に、事件を起こしてしまったのです。

今でもはっきり覚えている金曜日の夕方、金属材料の表面観察で顕微鏡を使用していました。この時は、私がお世話になっていた研究室には他に誰もいませんでした。
不意に操作を誤って、レンズを近づけすぎてサンプル表面に触れてしまったのです。

「パキッ!」

「んっ?何の音だ???」
その圧力で顕微鏡の試料台座に置かれていたガラスプレートにヒビが入って破損させてしまったのです。

やってしまった・・・。謝罪と報告をしないと、と思った瞬間、別装置から試験終了のアラームがなりました。

「止めにいかないと!!」と急ぎ向かいの試験室へ。結果をまとめたり、月曜日の会社のミーティングで出す報告書を作成したり、研究室には誰もいない上ために、使用した場所のすべての施錠や退館確認、片づけとバタバタしていて、この出来事のことがすっかり頭から抜け落ちてしまっていました。

そのまま帰宅。報告することを忘れてしまった完全に自分のミスです。

産学官連携プロジェクトの破断危機!

毎週月曜日は、会社に出社し午前中は開発室のミーティングに参加。朝出社し、自分のデスクでメールチェック・・・。

「!!!!!」

研究室の先生から『備品の破損について心当たりのある人間は申し出るように』という内容のメールが関係者に送られていました。それも、あまり穏やかな書きぶりでなかったのを記憶しています。

「しまったぁ~~・・・」報告していない・・・ことにそこで気が付きます。

すぐにメールで自分で破損させたことを返信しました。
その後は、私の上司に連絡が入りもちろん上司と共に研究室に呼び出しとなりました・・・。

研究室の先生からは、
「破損を故意に隠していたのではないか」、
「報告ができない人間は信用できない」、
「日下部は出禁」、
「研究は中断する」、
「プロジェクト継続も難しくなる」、

と言ったことをいわれたそうです。

 お世話になっている研究室の先生は、特にこういった基本的な部分に厳しい方であることはレポート指導の中でも十分わかっていました。慣れてきた中で、研究室の先生との関係ができてきたと思い込んでいたのかもしれません。あくまで社外の人間である意識が薄れていた気がします。

 上司からも状況の確認と、なぜすぐに報告しなかったのか詰められましたが、まずは研究室に出向いて謝罪が最優先です。上司がアポ調整をしてくれて謝罪に向かうことになりました。

この間、この後の展開を想像すると生きた心地がしませんでした・・・。

軽はずみ発言が招いた大激怒

研究室の片隅にあるミーティングテーブルに座り、先生を待ちます。雑多な研究室内には応接セットはありません。長机にパイプ椅子。テーブルの上には論文冊子の山。重苦しい空気が漂い、なんとも言えない長い沈黙の時間が過ぎていきます。

怪訝な顔して研究室の先生がやってきましした。

先生「で、今日はどんな説明が?」
上司「この度は大変申し訳ありませんでした。備品を破損させた上に、そのご報告をすぐにせず、先生からのご指摘後の報告となったこと本当にお詫びいたします。」
私「自分が破損させたにも関わらず、ご報告を失念しこのようなことになってしまって申し訳ありませんでした。」

先生「破損させたことを隠そうとしていたのではないのか」
私「いえ、そういうつもりはありませんでした。バタバタしていてご報告を忘れてしまって、本当にすいません」
先生「こういう基本的なことができない人間と一緒に研究はできない」
私「私が継続できないのは仕方がないことだと思います」
先生「それを決めるのはあなたではない!〇〇さん(上司)が判断して話をすること。壊した備品はどうするつもりだ!」

ここで、私もカチンと若干感情的になってしまって
私「破損させて備品は、私個人で弁償します!!」

この一言で先生は大激怒!

先生「弁償、お前、あれがどういうものかわかっているのか!!弁償できるものならしてみろ!!」
「あれは売っているものではない、〇〇先生(研究室に所属する別の先生)が自作した高精度の加工品なんだ。唯一無二、おなじものはない!!」

ここではじめて、自分の失言に気が付きましたが、最早手遅れです。お金で買えない物を破損させた事実も知らずに、軽はずみに自分勝手に弁償するといった自分。研究室の先生が本当に求めていることが何なのか想像もせずに、表面的な言葉を捉え、売り言葉に買い言葉で応酬してしまった未熟さ。

この後、平身低頭とにかく謝罪し続けて、助け船を出してくれたのはこの加工品を制作された〇〇先生でした。

〇〇先生「まぁ~、そのくらいにしたってや。日下部君だってわざとやったわけではないでしょう、物は壊れるもの。またつくるから」

おそらく半泣きくらいだったので本当にありがたい一言でした。
〇〇先生にも謝罪し、その後もよくして頂きました。

〇〇先生の仲介もあり、産学官連携プロジェクトは継続。私も研究室の出禁指示も解け、担当交代となることなく研究を続けることができました。

 会社の上司もさすがにこの場に居合わせていたので、これ以上詰められることもありませんでしたが、会社初の産学官連携プロジェクトが新卒1年目の粗相によって破断危機にあったことはメチャクチャ肝が冷えていたことと想像できます。

この後も度々言葉のチョイスや使い方について研究室の先生からご指導頂くことになりました・・・。『親しき仲にも礼儀あり』を実感しつづけ、身に付けていったような気がします。

朝礼での全社謝罪

 プロジェクトが継続になり、一安心ですが、まだまだやることはあります。会社初の産学官連携プロジェクトとは言え、流石に新卒1年目が社長や重役に経緯説明や謝罪を行うことはありませんでしたが開発部の方々にはそうはいきません。

開発部では毎朝始業前のラジオ体操と朝礼が日課になっていました。これは、所属者全員が参加しますのでだいたい30名くらいになります。

ラジオ体操が終わり、業務連絡の時間。
開発部長より全体に
「みんなに聞いてもらいたいことがある。日下部、前へ」

開発部は全部で3つの部署に分かれていて、部長、室長をはじめ全て年上の先輩方です・・・。そんな方々の前にでるだけで手足が強張り、心拍周波急上昇です。足早に前に出て

「この度は、大変申し訳ございませんでした。自分の未熟さで大事なプロジェクトを壊してしまうだけでなく、大事な国の研究所や大学とのつながりすら失くしかねない事態を起こしてしまいました・・・。」

私のプロジェクトの詳細や自体の状況を知っているのは係長以上の役職者だけでしたがケジメの謝罪です。会社の看板に傷をつけてしまえば、自分以外の方々の立場にも影響がでるのは必然です。

オフィスは沈黙に包まれましたが、

「まぁ、やっちゃったもんはじょうがない」
「なんとかなったんだろ」
「落ち込まず、がんばれ」


と、励ましやフォローの言葉を頂き、責められるようなことがなかったのは本当にありがたかったです。

こうして本件については最悪の事態を回避できましたが、社会では新人だから、新入社員だからという言い訳は通用しないことを学びました。会社の代表として研究室に出向しているわけですから、と言うことは今はよくわかりますが当時はとにかく意識も含めて甘かったですね。

この1件を機に研究室の先生方との関係はより密になっていきました。ピンチはチャンス、逃げずに向き合ってしっかり誠意をみせること、相手の立場や状況、主張の本質に目を向ける重要性など学びの多い事件となりました。

研究は先生の指導のもと一定の結果を出し、論文投稿、学会発表と進んでいくのですが、新卒1年目が終わりを迎え2年目に突入する頃に私の仕事環境はより過酷な大きな変化を迎えます。《続く》

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