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#4【新卒1年目】腐りかけを救ってくれたのは同期でした 

いつもお読み頂きありがとうございます。前回は【#3「配属1カ月で社外出向辞令!?】をご紹介しました。今思ってもマイナスな受け止め方しかできていなかったなぁ、と思います。どうせやるなら全力で楽しんだ方がよかったのに(笑)

 新卒1年目なんて、理想と現実のギャップにもがき苦しむ時期ですよね。漏れなく私にもそんな時代がありました。
 今回は、出来ない自分を追い込んで部屋に引篭もる寸前で周囲に助け出されたと言うエピソードです。 


出向先は国の研究機関

 長い研修を終えようやく配属されたと思った矢先、まったく想定しなかった出向辞令となった私。それも会社初の産学官連携プロジェクトの研究員だと言うから荷が重い・・・。
そして出向先は国の研究機関。配属部署の先輩と関係を築く間もなく単身で新天地へ向かうことになりました。

東京からただでさえ土地勘のない名古屋での勤務。

今みたいにスマホの地図アプリなんて存在しない。

乗り換え案内を事前に調べ、紙の地図頼り。

未開のエリアにある研究所。

入口には警備員。

セキュリティも厳しく、ものものしい雰囲気ですべてがアウェイ。

おまけに上司との関係値は皆無。

「ご愁傷様」と言われるほど得体のしれない人との前評判の方です。
上司に連れられ、研究室に挨拶へ。

新卒1年目には酷な環境ではないでしょうか?
緊張度合いはMAX・・・。

とにかく失礼の無いように、と乏しい経験値から言葉を選んで自己紹介をしたのを記憶しています。

国の研究所は、グループ単位で活動されており全部で5名所属されていました。このプロジェクトの担当は、グループ責任者の先生です。先生方は50代前後がほとんどで一番若い方で30代半ば。23歳の私はまったく勝手のわからない異世界に単身送り込まれてしまいました。

大学時代の卒研プレゼンでノックアウト

 研究の詳細は記載しませんが、熱を電気に変える半導体を使用した部品開発の基礎研究でした。大学での私の専攻は材料工学。一見、専門分野のように思うかもしれませんが、扱っていた材料も分野も全く異なるフィールドで当該テーマに関しては無知。
つまりはほぼ素人に毛が生えた程度の状況で国の研究機関で共同研究をおこなう担当者にされてしまったのです。

 会社から研究所の先生方にどのような人物紹介をされたのかも不明。そんな中、一番若い30代半ばの先生が指導担当についてくれました。最早いくらするのかもわからないおそらく超高額な加工機械や分析機器の取り扱い説明を受け、壊してはいけないのでひたすらメモしまくりました。
 
一通り、研究所のルールや取扱い手順などを教えてもらったくらいのタイミングでプロジェクト責任者の先生から

「日下部くん、来週、大学で研究していた内容プレゼンしてもらうから準備しておいて」
「えっ、あっ、はい・・・」

心の中では、いやいや無理でしょ・・・。資料は持ってきてるけど・・・。
 大学の卒業研究は、教授の研究テーマを大学院生が分散して研究。さらにその一部を学部研究生が担う感じでした。つまりは自分のやりたいことではなく、既にある研究の一部を手伝う形でしたので、突っ込まれたら応えられないのが目に見えていたからです。

案の定、プレゼン当日はツッコミの嵐・・・。
「そのロジックはおかしくないか?」
「この研究結果と考察がリンクしない」
「そもそもその条件でよかったのか?」
 etc

大学の卒研発表より遥に次元の異なる質問が矢継ぎ早に・・・。もちろんフォローしてくれる味方もいませんので、ほぼ答えられずノックアウトです。

最終的には「まぁ、学部生の研究なんてこんなもんだね」と言われる始末。
私のレベルを確かめるために行われたのは間違いありませんでした。
研究の最前線で活動されているプロフェッショナルとなんちゃって研究職の差は天地の差を感じた出来事でした。
※研究室の先生方は厳しいですが面倒見の良い人達でした。

終わらないレポート地獄

プロジェクト研究は、研究室の先生の指導のもとと言うか、言われるがままに手を動かすのが私の役割みたいになりました。
分野的にもゼロベースでの勉強。資料や論文で勉強する毎日。
それでも会社に進捗報告をしないといけませんので週報にて進捗をまとめていきます。

1週間の①研究内容、②進捗、③結果データ、そして④考察と⑤今後の予定を記載し、金曜日に研究室の先生に提出しました。

私は出向の身分とは言え、所属は会社ですので毎週月曜日の午前中のみ会社に戻り開発室の会議に参加。この時に報告する流れとなっていました。

出向間もなくは、研究がそんなに進むわけもなく会社の会議では特段突っ込まれることはなかったのですが、月曜日の午後に国の研究室に行くと私のデスクに週報が返却されていました。

それを確認してギョッとします。
なんと、私の週報は真っ赤だったのです!!研究室の先生のフィードバック文字で埋め尽くされ再提出指示となりました。

私は唯々驚くばかり。先ほど、会社の会議で提出して何も言われなかった週報がほぼ全ダメ出しだったのです。
正直言えば、新卒1年目で報告書の書き方もよくわかっていなかったのもありますが、とにかく修正指示が細かい。フォントサイズの指定から文章構成、表現方法まで・・・。

研究論文という執筆の最前線で戦っている先生方にとっては当たり前のことが全く理解できていない私に対する指導だったと今はわかります。

が、翌週1週目の週報を修正して、
1週目(再提出)と2週目(新)の2つの週報を提出、また修正指示。
1週目(再々提出)と2週目(再提出)と3週目(新)の3つの週報を提出、
これでようやく1週目の週報
が合格・・・。
エンドレスで週報がたまり続けていく地獄にハマります。

先生の修正指示通りに書き直しても、また新たな修正指示が出てくるのです。私にはもう何が何だかわからない状態。そして、こんな報告を上司にもできず・・・。とにかく抱え込むことになっていました。

この時に徹底的に私を指導してくれた先生方のおかげで文章を端的にまとめるスキルが身に付いたのは言うまでもありません。これは起業後から今に至るまで私の財産になっています。

引篭もりからの脱出!

レポート地獄に陥った私は、研究データのまとめ、週報の修正の為、休日も部屋でレポート作成に追われます。
会社への報告書も滞り、毎週月曜の会議の為の報告書は出勤前の早朝5時起きで作成、早めに会社に行って印刷するパータンが2,3カ月続きました。

そして更にきつかったのが、毎週月曜日の開発室の会議。出向して1カ月後くらいから上司の詰問時間がどんどん長くなります。

「日下部くん、この研究の可能性はどうなんだ?」
「こんなスピードで結果はでるのか?」
「先生はなんて言ってるんだ?」 etc

気が付けば、開発室の会議で先輩の報告30分、その後私への詰問は2時間半・・・。最早、ひたすら説教をされ続けている感覚です。
毎週月曜日がとにかく憂鬱でしたが、会社に行かないと言う選択肢はありませんのでとにかく休日を全て使って対応していました。
これがこの上司のもとへ配属された歴代の新卒の先輩方が辞めていった理由だったのですが、この時はそんなことを考える余裕すらありませんでした。

出向していますので、同期とは職場では顔を合わせることはありません。寮に戻っても自室に閉じこもり、休日も必要時以外外出もしない生活。

ある休日に例によって自室に閉じこもって仕事(?)していると、
「ピンポーン」とインターフォンが鳴りました。
朝8時くらいで、こんなに朝から誰だろうと出ると、寮の先輩がいました。

「日下部、行くぞ!」
「???、行くってどこにですか?」
「今からフットサルだ。準備しろ。」
「いや、レポートやらないといけないんで無理です」
「いいから、行くぞ、お前の同期達もみんな行くから」
「はぁ・・・」

みたいな感じでしたが、無理やり連れ出され、久しぶりに陽射しのもと運動したり、同期とバカやったりしました。
その後は、寮の近くにある銭湯に行き疲れを癒しました。

週1回の会社での私の様子を気にした同期が先輩に相談してくれていたらしく、この日を境にメリハリをつけた生活に戻ることが出来ました。

先輩からは「どうやったって、あの人(上司)から怒られるんだからやりすぎなくていいんだよ。みんなお前のこと心配してるぞ」と言われ、本当に救われた気がしました。

その後も、休日になると同期や先輩とでかけたり、寮の中で各部屋を行き来して一緒に食事したりと絆を深めていきました。

 同期やこの先輩とは会社を退職した後も、みんなそれぞれのフィールドで活躍していますが先方でもお互いの結婚式の時は全員集合。今でも連絡を取り合っています。たまたま同じ時期に出会っただけの他人ですが、新卒時代の同期は私にとってかけがえのない存在なのです。

 SNSの普及で手軽に繋がれる環境が手に入った変わりに、その関係の希薄さやボタン一つで人間関係をリセット出来てしまう世の中ですが、今一度、自分の周りにいる「あなたを大切にしている」人たちの存在を感じてみて下さい。
 大事なことを見落としているかもしれませんし、もしかしたら現状を打破する突破口はそこでみつかるかもしれません。

この後、私は研究室の先生を激怒させる問題を引き起こし、産学官連携プロジェクトである共同研究を破断寸前にしてしまいます。《続く》

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