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ジョブ型雇用の入門書/要約&図解『ジョブ型雇用はやわかり』

『ジョブ型雇用はやわかり』は、世界トップクラスの人事コンサルティングファーム、マーサージャパンによって執筆された一冊です。
本書では、日本型のメンバーシップ型雇用との違いや、なぜ今ジョブ型雇用が注目されているのかを、非常にわかりやすく解説しています。

物語やノウハウ本ではありませんが、ジョブ型雇用の基礎を学ぶための教科書として最適です。
ジョブ型雇用について初めて学ぶ人でもすぐに理解できるように構成されており、経営者や人事担当者はもちろん、キャリアアップを目指すビジネスパーソンにもぴったりのガイドブックです。

組織改革を進めたい、または自分の仕事の幅を広げたいと考えている方にとって、この本は強力な味方となるでしょう。
ジョブ型雇用の基本から実践まで、この一冊でしっかりとマスターできます!いつもとは異なり、テキストではなく表にも整理しているので、よかったらご活用くださいな!

ということで、本書の要約を記載します。

本書の説明

就社から就職の時代へ、転職が当たり前の時代となる中で、必然的に個人のキャリア形成、企業の人材活用についての関心が高まっています。いわゆる配属ガチャではなく、専門性を身につけるために職能に就職する考え方が広まっています。

本書ではジョブ型人事制度を説いていますが、ビジネスパーソンの目線で言い換えると、「ジョブ型キャリア形成」でしょうか?
これまでのメンバーシップ型では、キャリア形成を会社が担っていたのに対し、ジョブ型では自分のキャリアを自分で決められる。鬼滅の刃語で言い換えると、「生殺与奪権を会社に握らせるな!」であり、自律的にキャリア形成するためにはジョブ型人事制度への理解は欠かせません。

本書は人事部や経営者だけでなく、若手ビジネスパーソン向けにジョブ型雇用を正しく理解し、きちんと活用するための実践的な方法が説明されています。

第1章 ジョブ型雇用とは何か

背景・特徴メリット・デメリットを理解する

ジョブ型人事制度を理解するためには、対比として語られるメンバーシップ型への理解が必要です。

本書をベースに、はたこが整理

判例によって強化される雇用保障(メンバーシップ型の確立した理由)

  • 戦後のGHQの占領政策では、「組合活動を認め強化する」という、その世代では世界的に見てもかなりリベラルな政策がとられた。

  • 組合の主張は「工場が焼失しても雇用は確保されるべき」という、社会保障色が強い内容だった。そのため、戦後はメンバーシップ型の要素が強化されていった。

  • 戦後、解雇は実態として広く行われたが、日本における雇用保障は判例により強化された。最終的には、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性という解雇が認められる4要件が整理された。上記を満たすのが事実上難しいため、現実的に解雇できず、そのかわりに広く異動権が認められるようになった。

⇛戦後の占領政策による組合活動と結果としての雇用保障、それに対する人事異動権により確立

過去から現在に至るジョブ型ブームの変遷

第2章 ジョブ型雇用の基本形

基点はジョブディスクリプション

1.メンバーシップ型との人材マネジメントシステムの違い

  • メンバーシップ型では、等級、評価、報酬、相互のサブシステムの関係性が深く、1つを変えれば他に影響が出やすい仕組み。そのため人事部門はそのルールにおいて例外をできるだけ避けることが求められ、制度・ルールの守護者としての役割を担う。

  • ジョブ型では経営・事業のニーズに沿った運用が行える環境を作ることに焦点が当てられる。人材マネジメントの基点は事業課題を実現するためのジョブの定義であり、人事の運用主体はラインマネジャーが担う。人事部門は事業側のニーズに合わせやすい仕組みを準備し、効果的かつ効率的に運用するためのサポートをする。

2.JD(ジョブディスクリプション)は機能によって使い分ける

  • 国内の外資系企業でも、個別の職務ごとに詳細なJDを整備している企業は約半数に過ぎない。すべてのジョブに対して詳細なJDを準備しようとすると、毎年の組織変更に応じて大規模なメンテナンスが必要となり、負担に耐えられにくなる。

  • 「採用・公募の材料」「後継者育成の基礎」など、JDには複数の機能があるため、目的に応じた適切な内容、具体性のレベル感を意識する。

  • 次世代リーダー育成を目的とするなら、職務内容だけでなく経験やコンピテンシーを明瞭にする。一部のジョブには詳細なJDを準備するが、大半のジョブは簡易なJD、という企業が多いのはそれゆえである。

  • ある企業では個別のJDに代えて、職種とキャリアレベルのグリッド単位で、遂行するジョブの業務領域を表現している。ジョブ型は会社と個人のジョブの合意がスタートラインのため、お互いがジョブを想起できれば機能する。

3.ジョブ型における報酬制度の特徴

  • 大きな特徴として、①職種別に報酬が決まる、②昇給や賞与等、決定権の多くが現場に移譲されている。

  • ②を適正な人件費を維持しながら実現するために、現場長は期初の計画段階で翌年度の採用計画、採用に必要なコスト計画、部下の昇給・賞与に関する決定など、人件費の増加につながる決め事に加えて、その人件費増加に見合う組織としての成果を明確にする。このやりとりの中で現場長は、組織の生み出す成果の可能性と総額人件費のバランスに心を配り、ギリギリのラインを考え抜くようになる。

4.現場の責任と権限が強まる評価制度

  • ジョブ型の評価制度では過度な精緻さを追求せず、育成やFBが重視される。評価結果の報酬への反映についても、緩やかなガイドラインに留めるケースが多い。あくまで、報酬に関する個別ニーズの充足、本人へのFBのしやすさが中心に置かれる。組織横断的に客観性や公平性を担保する必要性がないためである。

  • 裏を返すと、メンバーシップ型でマネージャーは評価分布規制の仕組みのせいにして説明責任から逃れられていたが、ジョブ型では成果責任から逃げられない。

5.キャリア自律を促すことによる問題

  • ジョブ型で専門的なキャリア志向が強くなると、経営人材の確保が難しくなる。そこで、早期からリーダー候補の人材を選抜し、有用な経験を与える。年齢や年次を考慮せず、1つの独立した事業体を束ねるリーダーを育てる。

6.組織の新陳代謝に向けた取り組み

  • 個人がジョブの期待値を満たせない場合、PIP(業績改善プログラム)を実施する。具体的には、上司と対象者との間で業績や能力、行動面に関する課題と改善に向けたアクションプランを決めて、定期的なモニタリングとフィードバックを継続する。このような措置を避けるためにも、適性やポテンシャルを見た慎重な採用や育成が必要。

7.キャリア自律を促進する環境の整備

  • 社員個人が自らのキャリアを考えてスキルアップやリスキルの努力をするには、会社はできるだけ個人が希望するキャリアに挑戦する権利を提供しなければならない。そのために重要な要素は、ジョブに関する情報提供。

  • 空きポストについての公募の機会、職種別の採用、本人の同意に基づく人事異動の提供が求められる。

第3章 経営戦略とのかかわり

経営者の観点から、ジョブ型雇用が企業経営や競争優位にもたらす意味は何か

1.いまいる戦力で戦うか、そのつど必要な戦力を集めるか

  • 雇用契約の前提の違いは、「長期にわたって有効な1回の合意×働き方を限定しない」メンバーシップ型と、「短期間有効な合意を繰り返す×1回あたりを限定しない」ジョブ型という形で表れている。

  • メンバーシップ型では使える人的経営資源の総量と質が決まっている。典型的には、過去の成功体験が通用する世界での、一定のプロセスの反復・徹底・習熟を求めるのであれば、優れた仕組みとなる。一方、人的経営資源が固定資産になりやすい。

  • ジョブ型では随時更新される戦略・方針に照らして組織とジョブをデザインし、そこに必要な人的資源を社内外から調達するため、変化に強い。対して、阿吽の呼吸による連携やチーム作りに難しさがあり、人件費も高くなりがちである。

  • 必要なことは、自社が置かれている経営環境と戦略の丁寧な読み解き。

2.経営戦略と人事戦略をつなぐ要員計画

  • 組織を作る、ジョブをデザインする際に重要なのは、①戦略を実現するために必要な組織ケイパビリティをイメージする|②その組織ケイパビリティを身につけるために必要な人材の質×量を思い浮かべる|③集まった人材が組織として効率的に動けるように、責任・権限を分担し、指揮命令系統を決める。

  • 経営戦略を反映した人的経営資源の配分方針を表すのが組織図であり、組織図に込められた経営戦略的な意図を、社員1人ひとりに目標として落とし込むための仕組みが目標管理。

  • 要員計画とは、戦略を実現するためにいつ、どこに、どれだけの質×量の人材が必要になるかをあらかじめ想像し、それと現状とのギャップをまとめた計画。同じ経営資源でもカネについては1億円はどこにいっても1億円の価値だが、ヒトはスキルや経験も違えば、向き不向きもあるため、ヒト資源の質の可視化が欠かせない。

第5章 ジョブ型雇用がもたらすもの

経営者にとってのジョブ型雇用

  • ジョブ型雇用においては、人材の流動性が高まるため、優秀な人材のリテンションを図ること、また、社員のエンゲージメントを高めることが不可欠である。

  • 企業のミッションやビジョン、さらに戦略目標を、経営者自身が自分の言葉で明確に、かつ繰り返し社員に説明すること。様々なステークホルダーに向かって発信すること。

  • 多様な人材からコミットメントを引き出しその力を結集するためには、組織の目的や目標をきちんと言語化し、その構成員一人ひとりに意味合いを理解してもらう必要がある。その組織で働くことは社会的に意義のある活動に参加することである、というメッセージを発信することにより、社外から人材を獲得することに繋がる。

  • 具体的には、「その会社が提供できるキャリア形成の機会とはどのようなことなのか」「他社と差別化できる経験とは何なのか」「中長期的な視点から組織内にどのような育成ニーズがあるのか」「機会や経験を後押しするような協力的かつオープンな組織風土が醸成されているのか」「ヒトの成長を促す仕組みが構築されているか」等に応えられるよう施策をリードしていく。

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