マガジンのカバー画像

読書録

54
柳流水の読書録です。
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

【読書録】井筒俊彦全集

 井筒俊彦の『イスラーム哲学の原像』という本を読んでいるという話はした気がする。それは新書だった。いわば、東洋の哲学、宗教をすべて網羅しているかに見える井筒俊彦の、一番入門に近い本である。
 前には、そのどの辺に当たるのかわからないが、大乗起信論という本について書いたものや、『イスラーム文化』などを読んだことはある。しかしそれらも、それほどコアなものではなかった気もする。
 予想するに、特にコアな

もっとみる

【読書録】ミシェル・ド・セルトー『ルーダンの憑依』

 僕が私淑している作家の佐々木中という人が、ツイッター上で勧めていたので読み始めた。あまりこの、セルトーという人の研究領域について詳しくは知らない。最初の方を読んだ感じは、フーコーに近い。遡るべくもない過去について、徹底して資料を頼りにして、目の前に見えるように再現して見せる。しかし、佐々木中は、まさにその、歴史上あったことの、再現のしにくさというものが一番わかると言って、本書を紹介していたのだっ

もっとみる

【読書録】ルナン『キリスト伝』

 長いこと図書館で借りていたけど、ようやく読み始めた。
 キリスト教史の古典で、この人自身は十九世紀の人だけど、その時期に最大限深掘りをして、例えば福音書のうちヨハネの福音書は、前半は実は誰によって書かれていて後半は……などという話が始まる。
 今やそのような見方が当たり前になったが、当時で考えて、キリスト教者にとったら、完全な冒涜の書になっていたのではないだろうか。
 前に読んだ幸徳秋水の『基督

もっとみる

【読書録】井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』

 宣言通り、読書録を久しぶりに更新しようと思う。
 だが、読書録って、こういう系の記事を書いたことのある人はわかるだろうが、その場で読んでその場で書くという感じより、だいたいひと月前までの以前の蓄積から、引っ張り出して再生するという感じの方が近い、その場でいっぺんに読むというのは、自分が相手にしているような本だと難しい。今急に書こうと思っても、その以前の蓄積というのがなければ、急には立ち上げられな

もっとみる