信藤 玲子*Qの本棚
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11/16『ターングラス』YouTube ネタバレトークライブのお知らせ&図書新聞に『エイレングラフ弁護士の事件簿』の書評が掲載されました
「テート・ベーシュ」という言葉をご存じでしょうか? もともとは、左右または上下が逆に印刷された2枚の切手を指す言葉のようで(コトバンクより)、頭と足がくっついたという意味を持つ。 では、テート・ベーシュの本と聞くと、どういうものが頭に浮かぶだろうか? 頭と足がくっついた話? つまり、どちらからでも読み進められるということなのか? ガレス・ルービン『ターングラス 鏡映しの殺人』(越前敏弥訳)は、まさにテート・ベーシュ仕立てになっていて、1881年のイギリスを舞台としたエセ
11/16(土)大阪翻訳ミステリー読書会(『偽りの空白』)&全国翻訳ミステリー読書会YouTubeライブ(『ターングラス』ネタバレあり)のお知らせ&図書新聞に書評が掲載されました
2024年11月16日(土)、第17回大阪翻訳ミステリー読書会を開催いたします。今回の課題書は、『偽りの空白』(吉井智津訳 早川書房)です。 オーストラリアに移住したベトナム系一家に生まれ、メルボルンでジャーナリストとして働いていたキーが、弟の死の真相を捜査するミステリー。作者であるトレイシー・リエンが、ベトナム系オーストラリア人である自らのルーツと向きあい、移民社会と言われるオーストラリアの真の姿を掘り下げた意欲作です。 といっても、まったく難しく考える必要はありません
図書新聞掲載『シャドウプレイ』書評&全国翻訳ミステリー読書会YouTubeライブ第21弾「第3回 夏の出版社イチオシ祭り」(2024/8/4 14時~)
少し前の話になりますが、2024年7月6日号(第3646号)の図書新聞にジョセフ・オコーナー『シャドウプレイ』(栩木伸明訳、東京創元社)の書評が掲載されました。(書評へのリンクも下に貼っています) この小説は、19世紀末ヴィクトリア朝時代にアイルランドで生まれ、イギリスで執筆活動をおこなった作家、ブラム・ストーカーの生涯を描いています。 はて? ブラム・ストーカーって誰? とお思いのかたもいらっしゃるかもしれません。けれども、ドラキュラ伯爵の名前を知らない人はいないはず。
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読者賞を救う=世界を救う!? 6/22「読書会有志対抗おススメ本バトル 2024夏」&7/14 大阪翻訳ミステリー読書会のご案内
すでに報道されているとおり、今年、2024年で翻訳ミステリー大賞が15年の歴史に幕を閉じました。事務局のみなさま、長いあいだお疲れさまでした。 記念すべき最後の翻訳ミステリー大賞には、『破果』(ク・ビョンモ/小山内園子訳、岩波書店 )が輝きました。 65歳になった殺し屋の女、爪角(チョガク)の〝生きざま〟を描いた韓国ミステリー。〝生きざま〟なんてクサい言葉はふだん使わないのですが、この小説にかぎってはどうしても言わずにはいられない。長編小説というより中編程度の長さであるにも
【読書会告知】 ミン・ジン・リー『パチンコ』(池田真紀子訳 文藝春秋)を読んで、物語の舞台となった鶴橋コリアタウンを散策しましょう!
2024年2月24日(土)に、ミン・ジン・リー『パチンコ』(池田真紀子訳 文藝春秋)を課題書として、第15回大阪翻訳ミステリー読書会を開催いたします。 オバマ元大統領の推薦本としてアメリカで大ベストセラーになり、ドラマ化も話題を呼んだため、いまさら紹介不要かもしれませんが、軽くおさらいすると…… 物語が幕を開けるのは、日本に併合されていた朝鮮半島。港町釜山の下宿屋の娘が、ひとりの男と恋に落ちる。だが、男には日本に妻子がいた。男の子どもを身ごもった娘は、別の男の助けを借りて
パリテの町・大磯で気づく女性に背負わされた「重し」 和田静香『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』
和田静香『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと』(以下、遅フェミ)を読みはじめてすぐに、この箇所で深く頷いてしまった。 19歳からフリーの音楽ライターとして働いてきた作者は、社会が不況になってCDが売れない時代になり、さらにデジタル化が進んで紙の雑誌が続々廃刊すると生計を立てるのが難しくなり、40代半ばからコンビニなどでバイトをして食いつなぐ日々を送っていた。 ところがコロナが到来してバイトも首になり、まさに八
人間の底知れなさとは? 映画化も話題になったデイヴィッド ・グラン 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』(倉田真木訳)
2023年11月26日、デイヴィッド ・グラン 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』(倉田真木訳)を課題書とする読書会に参加しました。 この本は、1920年代に実際に起きた連続殺人事件を主題として、著者デイヴィッド ・グランが徹底的な調査に基づいて記したノンフィクションである。2017年にアメリカで刊行されるやいなや〈ニューヨーク・タイムズ〉のベストセラーランキングにランクインし、アメリカ探偵作家クラブ(MWA賞)の犯罪実話賞に輝いた
大阪翻訳ミステリー読書会(『殺人は太陽の下で』)レポート掲載と続刊『Death at Paradise Palms』について&『この密やかな森の奥で』のご紹介
私が世話人を務めている大阪翻訳ミステリー読書会のレポートが、翻訳ミステリーシンジケートのサイトに掲載されました。(一文のなかで翻訳ミステリーを連呼してしまったが、名称なのでお許しください) 今回の課題書は、ステフ・ブロードリブ『殺人は太陽の下で—フロリダ・シニア探偵クラブ―』(安達眞弓訳 二見書房)でした。 リタイアしたシニアたちが暮らすフロリダの住宅地で、若い女の死体がプールに浮いているのが発見された。こんな平和な場所でいったいなぜ? どういうわけだか腰が重い警察にかわ
伊坂幸太郎〈殺し屋シリーズ〉最新刊『777』発売直前!! ただの殺し屋小説ではない『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX』をご紹介
伊坂幸太郎の〈殺し屋シリーズ〉第3弾『AX』を読了! したと思いきや、最新刊『777』(トリプルセブン)が、9月21日に発売されるとのことなので、この〈殺し屋シリーズ〉を紹介したいと思います。 そもそも〈殺し屋シリーズ〉ってなんやねん? というと、その名のとおり、殺し屋たちを描いた物語シリーズである。けれども、殺し屋をテーマに据えた小説はとりたてて珍しくない。これまでにもミステリーやサスペンスでたくさん書かれてきた。 では、なぜこのシリーズが斬新でおもしろいのか? と
パンデミックを生み、パンデミックを乗り越えた親子の絆を描いたディストピア小説 Eve Smith 『The Waiting Rooms』
こちらのブログを読んで、Eve Smithの3作目が出ることを知りました。 2020年、パンデミックのさなかに刊行されたデビュー作の『The Waiting Rooms』は、驚くほどパンデミックの状況にシンクロしていたので強く印象に残りました。いまのところ、まだ訳書が出ていないようなので、ここであらためて紹介します。 “Crisis(危機)”の発生 この小説はケイト、リリー、メアリーの三人の女性の視点から交互に語られていく。 まずはイギリスを舞台にしたケイトの章か
『マナートの娘たち』読書会レポート&8/6 14時~ 夏の出版社イチオシ祭り(全国翻訳ミステリー読書会YouTubeライブ第15弾)のお知らせ
先日、このnoteでも告知しましたが、ディーマ・アルザヤットによる短編集『マナートの娘たち』を課題書とし、訳者の小竹由美子さんにもご参加いただいて、大阪翻訳ミステリー読書会をオンラインで開催しました。 そのレポートが翻訳ミステリーシンジケートのサイトに掲載されているので、ご興味のあるかたはぜひお読みください。 レポートにも書きましたが、シリア系アメリカ人である作者ディーマ・アルザヤットは、分断と対立の深まるアメリカの現在を見事に切り取っています。 なかでも原書の表題作で
ロマンス小説を脱構築したロマンス小説 エミリー・ヘンリー『本と私と恋人と』(林啓恵訳)+現在アメリカで大ヒット中の『HAPPY PLACE』
さて、みなさんは〈ロマンス小説〉といったら、どんなものを思い浮かべるでしょうか? 地味で冴えない独身女性が、華やかな友人の彼氏として紹介された大金持ちのイケメン男性と突然恋に落ちる…… あるいは、美貌、富、みんなからうらやましがられるような婚約者まで、なにもかも手にしていた主人公が、ある日いきなり素朴で誠実な男性に心奪われる…… いま思い浮かんだのは、現実のロマンス小説にはありえないほど陳腐な例ではあるが、「正反対の者が恋におちる」というのがロマンスの常道であるように思え