人は同じ事を繰り返す
人は同じ事を繰り返す生き物である。
長い歴史を見てもそうだが、今回の話は1人の人間の一生の中の話である。
例えば、大好きな映画を繰り返し観たり、食事をするとなるとお気に入りのレストランばかり訪れたり、
買い物をする時もいつもと同じものばかりを買ったりする。
このように人は同じ事を繰り返す。
その中でもフロイトは、その人にとって有害な行動ですら繰り返す人間の習性に興味を持っていた。
行動心理学者のB.F. スキナーが提唱したように、人間は嬉しかった事や楽しかった事など、ポジティブな事はまた繰り返す傾向がある。
例えば、勉強を頑張ってテストでいい点数を取り、母親に欲しかったゲームを買ってもらえたら、より一層勉強に励むようになる。
子供が親に褒められると何度もその行動を繰り返すのはこれが理由である。
しかし、スキナーの理論では、ネガティブな結果を招いた行動は人間は繰り返さない傾向があると述べている。
例えば、高いところからジャンプをして骨折すると、もうしないようになる。
悪い事をして怒られると今後しなくなる。
このように、行動心理学的には、過去の辛い経験やネガティブな経験はあまり繰り返されないとされている。
しかし、フロイトによると、人は過去のトラウマや辛い経験すらも何度も繰り返すそうだ。
例えば、過去に恋人から暴力や性的暴行を受けた経験のある人は、その後もそのような恋人と付き合うケースが多い。
また、ストレスや不安から逃れるために飲酒や喫煙、薬物を繰り返す人もいる。
彼らは、それが良くない事である事は分かっている。
客観的に見ても繰り返さない方が良い事は一目瞭然である。
しかし、なぜ彼らは同じ行為を繰り返すのか?
フロイトはこの傾向を「反復強迫(repetition compulsion)」と読んだ。
これは、過去のトラウマや辛い経験と同じ状況を再度作り出す事で、そのトラウマを乗り越えようとする無意識的な欲求の事である。
「もっとこうすれば」とか「今回はこういう風に話せば」とか「あの時とは違ってこんな風に付き合えば」というように、過去に乗り越えられなかったトラウマや経験を、その時とは行動や考え方を変えて乗り越えようとするのだ。
しかし、ほとんどの場合、上手くいかない。
過去に恋人から身体的・精神的暴力を受け苦しんだ人は、また暴力的な恋人を作る事でその時のトラウマを乗り越えようとする。
しかし、乗り越える事が出来ず、また同じ事で苦しむのだ。
このように同じ事を繰り返す人は、ただ学ばない人というわけではないのかもしれない。
過去のトラウマを必死で乗り越え、強くなろうとしているのかもしれない。
逆に、同じ事を繰り返す人は過去にトラウマや苦い経験があるのかもしれない。
それが分かれば何度も何度も同じ事を繰り返さなくて済むかもしれない。
最後まで読んで頂きありがとうございました。