漢方薬の生薬「甘草」に含まれる‟イソリクイリチゲニン”が痩せ菌を増やしているって!?
漢方薬を語る上で最初に触れないといけないのが「甘草」ですが、今日は3回目になります。
ここまでは、効能や副作用についてでしたが、今日は腸内細菌との関係性についてです。これまでにも何度か漢方薬と腸内細菌の関係性については語ってきました。大建中湯とラクトバチルス菌などの関係性は、9月29日のコラムで書いていますので良ければご覧ください。
それでは本題に移りますが、今日は甘草に含まれる成分である「イソリクイリチゲニン」がメタボリックシンドロームを改善するメカニズムに関する研究から引用します。
イソリクイリチゲニンはフラボノイドの一種で摂取することで腸内細菌の善玉菌が増え、腸内のバリア機能を向上させ、メタボリックシンドロームが改善されるというものです。
これにはどうやら、インスリンの抵抗性を改善するというメカニズムが働いているようですが、このインスリン抵抗性については、以前10月8日のコラムで、インスリンの抵抗性を高める腸内細菌とインスリンの感受性を高める腸内細菌について触れています。
考え方として同じなのですが、どうやらイソリクイリチゲンがインスリンの感受性を高めるバクテロイデス菌を増やすようなのです。インスリンが血糖値上昇をゆるやかに抑えるため、この論文ではメタボリックシンドロームを改善すると結論づけています。
また、腸管の粘膜質であるムチンを調節しているアッカーマンシア菌も増やすため、これもメタボリックシンドロームを改善する要因だとしています。
もちろん、マウスによる実験段階ですし、漢方薬は甘草だけが作用しているのではなく、他の生薬との相性など関係性は重視しないといけませんが、バクテロイデス菌やアッカーマンシア菌を保有されている方は、メタボリックシンドロームには少なからず有効に働くと見て良いかと思います。
これはあくまでもメタボリックシンドロームに焦点を当てた研究ですが、甘草が腸内細菌に何らかの影響を与えていることは推測できます。
腸内細菌叢は人により違います。そして漢方薬が効く人、効かない人、効きやすい人、効きにくい人、それぞれ程度の差もまちまちです。
漢方薬の生薬や他の食材が、消化吸収される消化酵素の働きや、最終的に腸内細菌のエサになり代謝物を生み出す過程を、より踏み込んで見て行きたいと思います。