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BooQuiz2 ~万能から、愛すべき不完全さへ~

早速ですが、BooQuiz1の答えです。
エーリッヒ・フロムの
「愛するということ」
でした。
鈴木晶 訳
紀伊国屋書店

シンプルな装丁も素敵です。

この本は、哲学の面白さを教えてくれた本です。
わりと読みやすいですので、もしご縁があれば是非。

ということで、BooQuiz2はじめます。

この本の著者は、神経学と精神医学の教授でした。
ご自身が本当に、ほんとうに大変な体験をされています。
ですが、だからこそ「人生にはどんな時も意味がある」「どんな劣悪な状況下にあったとしても人間に残る善なるものがある」といった言葉が説得力を持ちます。

彼の著書で最も有名なものは、きっと誰もが一度は耳にしたことがあると思います。
ですが、今回私が読んだものは関連する別の著作です。
正確にいうならば、未発表のものをたくさん集めて編集したものです。

彼のロゴセラピーや実存分析、といったメインどころの感想は他の方にお任せすることにします。

とても興味深く感じたのは、
人間の不完全性にこそ意味がある、という部分でした。

事実として私たちは不完全な存在である。
でも、それは絶望するものではない、と著者は言います。

自分の現在の姿を自分のあるべき姿に照らして判断する人、つまり自分自身に理想という物差しを当てる人が、価値がない人間だと言えるでしょうか。

p157

自分は、理想の自分と比べてどうか。
そういうことを考え、また自分にはそれが足りていないと認識できる人は、
もうそれだけですでにその人の正しさの証明である、と言います。

言い回しは少し難しくみえますが、
自分にはまだ、こんなところが足りないな~、と自らを振り返れる人は、いいとこあるよ、偉いよ!と言ってくれてるんだと思います。

そして、一人ひとりの人間がそれぞれに不完全で、でもそれがかけがえない存在なのだということを生物の世界のモデルで説明してくれます。

生物の発生の起源まで遡ると、細胞はもともと「万能」でした。
「原始」細胞はあらゆることができます。食べたり、運動したり、増殖したり、周囲の環境を何らかの方法で「感知」したり何でもできるのです。

p.157

でも、その「原始」細胞はより高等な有機体の細胞組織へと進化した結果、
特殊化し、ついにたった一つの機能しか果たせなくなりました。

個々の細胞は、当初の「完全」な能力の代わりに、相対的で機能的な大体不可能性を手に入れました。例えば、目の網膜細胞は、もう食べたり運動したり増殖したりできません。けれども、(中略)見る能力は、ずば抜けています。

p157

そして、それぞれに役割を持った細胞たちは互いに交換することのできない”オンリーワン”になったのだ、と。

これって、なんだかこの世界や人間の存在とよく似ているなあと感じました。
最初は、色々な選択肢や可能性を抱いて生まれてきて。
時間をかけて、自分だけの”とっておき”を見つける。

役割だったり、性格だったり、職業だったり、才能だったり。
それは多種多様なのでしょう。
そこに至る道筋も、その先も、すべての瞬間に意味があるのだと
思えます。

そして、その人らしさというのは必ず誰もが持っているものです。
意識などしなくても。
みんなが、生まれながらにもっている。
それこそが尊くて、何ものにも代えがたいものなのだ、と。

著者から、そんなメッセージを受け取ったような心持ちがしています。


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