見出し画像

【インタビュー】アーティスト・阪田マリンさん Z世代は昭和カルチャーになぜハマる?

音楽、デザイン、ファッションと、「昭和」のカルチャーが注目されて久しい昨今。2024年も、昭和のTVCMのリバイバルや、昭和テイストのポスターやキャンペーンが話題になっています。Z世代はこのブームをどのように受け止めているのでしょうか?

昭和と現代を融合した「ネオ昭和」を提唱するZ世代のアーティスト・阪田マリンさんにインタビューし、昭和のカルチャーに若者がハマる理由を探りました。また阪田さんは大阪在住であり、2025年の万博に向けて盛り上がる大阪で「昭和を感じられるスポット」も教えてもらいました。

阪田マリン/2000年12⽉22⽇⽣まれ。23歳。昭和カルチャーが大好きで“ネオ昭和”と⾃ら命名し、ファッションやカルチャーを発信するZ世代のアーティスト兼インフルエンサー。数々のメディアや企業からの出演オファーが殺到中。SNSでの総フォロワー数は約30万⼈。懐かしくも新しい“ネオ昭和歌謡プロジェクト”「ザ・ブラックキャンディーズ」としても活動し、昭和99年9月9日に2ndデジタルシングル「青いたそがれの御堂筋」をリリース。初のファースト写真集“今って昭和99年ですよね?阪⽥マリン1st写真集”が発売中。

中学の頃から昭和好き。「仲間探し」がSNSのきっかけ

――阪田さんが昭和の魅力についてSNSで発信し始めたきっかけを教えてください

中学生の頃、祖母の家でチェッカーズさんのレコードを見つけて聴くようになってから、昭和の文化に惹かれ始めました。高校に入ってからも『ビー・バップ・ハイスクール』や『湘南爆走族』といった当時のヤンキー映画も観て、「高校生でもこんなに堂々とカッコよく自分を表現できるんだ!」って憧れの気持ちが止まらなかったんですけど、周りの友達に昭和好きが全くいなかったんです。カラオケに行っても歌謡曲を歌う勇気はなくて……。

その時、私と同世代の昭和好きはどれくらいいるのか知りたくて、Twitter(現X)やInstagramで『#平成生まれの昭和好き』というハッシュタグをつけて発信してみたら、たくさんの仲間が見つかりました。それから、平成生まれも共感できる、現代と昭和をミックスした「ネオ昭和」なポートフォリオや情報を発信しています。

――同じZ世代からはSNSでどんな反響がありますか?

「仲間ができてうれしい」という声をよくいただきます。最近で一番うれしかったのは、現役の高校生の子から、「私も昭和が好きでずっと隠していたけど、マリンちゃんを見て自分もSNSで発信したい」と言ってくれたこと。少し前までは昭和好きってちょっと言いづらいところがありましたが、勇気を与えられる存在になれて本当に幸せです。それに、今は昭和好きって言うことに抵抗感がなくなってきていると思いますし、多様性がどんどん受け入れられるようになって、「好きなものは十人十色でいいよね」ってZ世代間で認め合える時代になっていると感じます。

Z世代だからこそ気づく「昭和」の魅力

――阪田さんが感じる「昭和の魅力」はどんなところにありますか?

一言で言うと「不完全の中の美しさ」という風に私はよく話しています。例えば、今の時代に音楽を聴こうと思ったらサブスク1クリックで聴けますけど、昭和はレコードを取り出してターンテーブルの上に置いて針を落として5秒ぐらいの間があって、やっと流れ出すんですよね。その間が音楽をより一層尊くするというか、間の美しさに昭和の魅力はあると思います。

――Z世代にとって、昭和の文化は新鮮に感じる部分も多いですか?

経験したことがないからこそ新鮮、というのはあるかもしれません。今の時代、新しいものや便利なものがあふれていて、結構うんざりしている部分もあると思うんですよね。「早く返事しなきゃ」とか、便利だからこそなんだかしんどいってことがありすぎて、今の時代には経験できない距離や間に、Z世代は新鮮さとうらやましさを感じていると思います。電話ひとつ取ってみても、すぐに相手につながるなんてできなかったですよね。

お父さんやお母さんが出るかもしれないっていうドキドキの状態で家に電話をかけて好きな人が出た時の喜びって、今は決して味わえない感覚で。待ち合わせも、来ないなぁってそわそわしたり、駅の掲示板にメモを残したり。先が読めないから、嬉しいとか悲しいとか、いろんな感情が波打ってたと思うんです。でも、今の時代はなんでもすぐにキャッチできるから、感情が常に平坦(笑)。昭和は、喜びや感動が今よりも倍増できた時代なのかなって感じます。

――阪田さんはネオ昭和歌謡プロジェクト「ザ・ブラックキャンディーズ」として音楽活動もされていますが、昭和歌謡の魅力はどこにあると思いますか?

歌謡曲にしても、美しい間が世界を作っているのが魅力だと思います。分かりやすいのはイントロで、昭和の歌はイントロだけでも30~40秒ぐらいある曲が多いんですよカバーしているアン・ルイスさんの『六本木心中』もですし、石井明美さんの『CHA-CHA-CHA』もセリフが入ったりして50秒後くらいに始まるんですけど、イントロだけでひとつの物語が完結しているから、何度も聴き入ってしまいます。最近はイントロが長いと飛ばしたりする人もいるらしくて、本当にもったいない! 時間をかけて良い音楽を繰り返し聴くことが、流行り廃れが早すぎる現代に必要じゃないかなって思います。

――阪田さんはメイクやファッションも昭和の流行を取り入れていますが、工夫している点はありますか?

「昭和のコスプレ」にならないようにしています。私が伝えている「ネオ昭和」は、昭和と現代のちょうどいいミックスを目指しているので、ファッションは昭和のものを取り入れても、メイクは令和風にしてアレンジを加えています。眉毛はファッションに合わせて濃い時もありますが、基本は今流行っているメイクです。「ネオ昭和」のメイクとファッションを意識し始めてから、たくさんのZ世代の方から共感してもらえるようになりました。

昭和風の広告やキャンペーン、Z世代的にアリ?ナシ?


――昭和を感じさせる広告や商品パッケージが流行ですが、率直にどう感じられますか?

そうですね……本当に昭和が好きで企画しているのか、流行っているからやっておこうという程度なのか、昭和好きには一発でバレます(笑)。 昭和レトロなイベントや企画が増えていますけど、とても刺さるものもあれば、「あれ? これは昭和じゃないぞ」っていうものもあるのが正直なところです。

――具体的に、どんなところに「昭和好き」のこだわりを感じますか?

例えば「純喫茶」は、インスパイアされた新しいカフェが増えていますし、広告やパッケージにもよく使われていますよね。「クリームソーダ」はそのアイコンとしてよく見かけると思いますが、昭和好きは、クリームソーダ単体だけではなく、その器にも注目します。昭和の喫茶店でよく使われていた「アデリア」というブランドのレトロな柄が描かれたグラスがその代表ですが、こだわっている喫茶店や広告では、きちんとアデリアが使われているんです。

でも、こだわっていないものだと、特徴のない無地のグラスで。もちろんそのままでも素敵なんですけど、細部までこだわってくれたらもっといいのになって感じます。昭和のレトロ感が好きなZ世代はそこまで気にする子は少ないかもしれないですが、本気で昭和が好きな立場からすると、バレちゃうのは惜しい!って感じです。

2025年は大阪万博開催。大阪のディープスポットも注目に

新世界の商店街 ©(公財)大阪観光局

――阪田さんは大阪在住ですが、2025年の万博開催に向けて、「世界におすすめしたい大阪の昭和レトロなスポット」はありますか?

やっぱり、新世界です。お店もですし、町の雰囲気もすべて昭和が色濃く残っていて、歩くだけでたくさん発見があります。休日は絶対に訪れるぐらい大好きな街で、大体、フィルムカメラを持って風景を撮影したり、レコードショップで中古レコードを漁ったりしています。「ドレミ」という喫茶店も好きで、名物の「プリンローヤル」がおすすめです。新世界巡りはタイミングが合えば昭和好きな仲間と行くんですけど、レコードを探している時とか散歩する時、私は何時間もじっくり浸りたいタイプなので、一人で過ごすことが多いです。現代から離れて「昭和に生きている」と思いたい日があるので、そういう時は「今、昭和に来てるんだ」って一人で思いながら新世界を歩いています(笑)。

――大阪府内で、まだあまり知られていないディープなスポットを教えてください

中心地から外れちゃうんですけど、東住吉区の「駒川商店街」は、レトロな雰囲気たっぷりでぜひ行ってみてほしいです。この商店街の「天寅(てんとら)」というお惣菜屋さんのコロッケサンドが大好きで、行くたびに買っています。普通のコロッケサンドはパンにコロッケが挟まっていますが、ここのお店はコロッケの間に卵サラダを挟んでいて、見た目のインパクト抜群ですし、味も本当においしくて。レトロな駒川商店街で、ぜひこのお惣菜を食べてみてほしいです。

阪田マリンさんSNS・webサイト

昭和のカルチャーをこよなく愛する阪田マリンさん。バブリーだけど少し不完全で、さまざまな感情がキラキラと輝く昭和時代は、若い世代に魅力的に映るようです。「ネオ昭和」という形でZ世代のみならず、当時を生きた人たちのファンも多く、SNSのフォロワーも増えているそう。Z世代と昭和世代をつなぐアーティストとして、今後の活躍からも目が離せません。

電通プロモーションプラスでは、Z世代をターゲットとしたプロモーションの企画・実施やZ世代との共創のサポートをおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
お問合せ先はこちら