高尾歳時記 2024年4月20日
西山峠のニリンソウの大群落が開花のピークを迎えています。
ニリンソウはその名のとおり、一株に二輪の花をつけます。花期をできるだけ長くして受粉の確率をあげるため、まず一輪目が開花し、そのあと遅れて二輪目が開花します。そして、二輪目が終わりを迎えると葉は急速に朽ちていき、一ヶ月もするとニリンソウは跡形もなく地上から消えてしまいます。
現在ほとんどの株が二輪をつけていて、一部は一輪目が終わっており、葉が朽ち始めている株もありますので、ピークを過ぎ終息に向かいつつあるところです。
昨日4月19日は二十四節気の穀雨。桜の季節も終わり、春も終盤です。約二週間後、5月5日は二十四節気の立夏。夏の始まりです。
高尾では、ツボスミレ(ニョイスミレ)、アケボノスミレやコミヤマスミレなど、季節の最後のほうに咲くスミレが開花し、春が終わりに近づいていることを知らせています。
今日は気温があがり、午前11:00の高尾山山頂の気温は22℃。市街地は26℃と夏日となり、今年初めて春夏仕様のウェアを着用しました。ちょっと歩くだけで汗ばむような陽気で、一気に季節が進んだよう。高尾山は大変な混雑でした。
今日もお花の多いところを巡ってきました。
コミヤマスミレは自然公園法に基づく環境大臣指定植物(*3)で、採取ないし損壊することは明示的に犯罪です。自然公園法の罰則は六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金。本当に刑罰が科されるのは、常習的に繰り返し野草を盗掘するなどよっぽど悪質な場合でしょうけど、高尾山はその全域が国定公園に指定されていて、さまざまな規制があります。例えば、登山道脇などにロープが張られて立ち入らないよう促されているのをよく見かけますが、これも自然公園法に基づき、公園管理者である東京都が行政権限を執行しているものです。わかりやすくいうと、犯罪に対する未然の「警告」です。高尾山には長年かよっていますが、一度だけ、6号路で狼藉をはたらいていた輩が警察官に逮捕されしょっぴかれていくのを目撃したことがあります。
ロープやその他の規制設備や設置物には「明治の森高尾国定公園」と札がさがっていますが、公園管理者である東京都が行政権限で設置したことを意味します。他にも罰則を伴う規制がありますのでご注意を…とはいえ、登山道から外に足を踏み出さない、動植物に触らないなどごくあたりまえのルールを守っていれば大丈夫です。
かわいいお花を見つけたら写真を撮りたくなってしまう心情は(なにせ私自身がそうですので)理解できますが、花を撮影したいのであれば、距離をとって自然を壊さずに済むための十分な性能を持つ、きちんとした機材(カメラ)を準備しましょう。スマホでは届かない距離なのに、我慢できず登山道をはずれ、生息地を踏み荒らして接写を試みる人が、残念ながら高尾では絶えません。スマホはあくまでもスマホであり、カメラではありません。そういう用途のために作られていません。先人たちが残してくれた、今我々が享受する高尾のこの素晴らしく多様な植生と植物を引き続き後世に伝えるためにも、登山道の外に足を踏み出さないと撮れないのであれば、お願いですから撮影を諦めましょう。
(*1)
五百川裕・倉重祐二・高橋英樹,『日本の野生植物 4』, (平凡社、2016), P.225
(*2)
福原達人,『日本の野生植物 2』, (平凡社、2016), P.107
(*3)
参考資料