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高尾歳時記 2024年10月5日

 稲垣栄洋静岡大学教授著「面白すぎて時間を忘れる 雑草のふしぎ」(三笠書房)に、セイタカアワダチソウについて、おもしろい記述があります。全て引くと長くなってしまうので、以下に要旨をまとめます。

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 海外からやってくる植物には強そうなイメージがあるが、実際はそれほどでもない。多くの外来植物にとって、日本は不慣れな場所であり、生き残ることは難しい。それでも、日本に定着するものがある。

 日本に定着した外来種で最も有名なもののひとつは、セイタカアワダチソウであろう。第二次世界大戦後、アメリカから輸入された物資に種子が混入し、高度成長期、国内の物流の発達にともない、全国に広がった。

 古来、日本の秋の原風景はススキ野や、野の花がポツポツ咲く枯れ野であった。これを、セイタカアワダチソウは黄色一色で全て染めあげてしまう。

 この、日本の原風景をがらりと変えてしまうほどの鮮やかなひとり勝ちには理由がある。セイタカアワダチソウは根から毒性のある物質を分泌しており、その毒で、まわりの植物を駆逐してしまったのである。

 ところが、あれほど猛威を振るったセイタカアワダチソウは、現在すっかり衰退してしまった。

 衰退の原因は、「自家中毒」にあったといわれる。他の競争相手がいる間は、毒は強力な武器であった。しかし競争相手がいなくなると、その毒で、自らも被害を受けるようになってしまったのである。
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セイタカアワダチソウ

 そして、その顛末は本書をご覧いただければと思いますが、私はセイタカアワダチソウで真っ黄色に染まった野原を見たことは(少なくとも記憶には)ありません。ですが、一時期は深刻な問題となったようで、国立環境研究所のHPによれば、「日本の侵略的外来種ワースト100指定種…外来生物法で要注意外来生物に指定された」とのよし。なんだかとっても恐ろしそうです。もとい、こんにち、少なくとも高尾ではほかの植物とうまくやっているように見えますけどね。

 稲垣教授によれば、これは、自然界ではひとり勝ちは許されないという例なのだそう。

高尾では、セイタカアワダチソウは他の植物とうまくやっているように見えます。

 植物が自己防衛のために昆虫や動物の接触を防いだり、他の植物の繁殖を抑制したり、逆に自身にとって有益なものをおびきよせるためになんらかの物質を放出することを、アレロパシー(Allelopathy)と呼ぶそうです。なんでもやりすぎはいけないということなのでしょう。自然界には、サーモスタットのようにやりすぎいきすぎを制御する仕組みが色々あること(例のひとつは、食物連鎖)は学校などで教わりましたが、こんなところにもあるんだ、と興味深く読みました。人間社会にも示唆があるような気がします。

 本日の高尾の天気は雨。午前10時時点の高尾山山頂の気温は20℃。極端に低いわけではありませんでしたが雨天で肌寒く、すすき梅雨らしい一日となりました。

早朝の高尾山口駅を出発。天気が悪いからでしょうか、人出は少なめでした。出発時点では、雨は一時的にやんでいましたが、このあと本降りになりました。
今年はツユクサが豊作で、観察できる期間も長かったのですが、そろそろ終盤です。
カントウヨメナ。個体数は多い。
イヌタデは真っ盛り。里から山中まで、あちこちで見られます。
キツネノマゴももうそろそろ終盤です。
ヒガンバナはほとんど終わり。若干残っていました。
ツリフネソウはまだ観察できますが、終わりに近づいています。
黄色いキツリフネもそろそろ終わりです。
ミゾソバも少なくなってきました。
タニソバは盛りを迎えています。
アキノウナギツカミも盛り。
ノブキはほとんどすべて結実していました。あちこちで観察できます。
今日も見つけました!ミツバフウロ。高尾では本当に数が少なくなっています。
イヌショウマは見頃を迎えています。ふもと山中あちこちで観察できます。
オトコエシはピークを過ぎています。
ムラサキシキブの実。雨に濡れてしっとり。
ミズヒキは盛りを過ぎています。
チャノキの花が咲いています。文字通り、茶畑に植えられ、お茶の葉をとるのがこのチャノキです。これは野生のもの。
歩いていたら、キンモクセイの甘い香りがただよってきました。まさに秋の香りです。
キバナアキギリはもうそろそろ終わり。
マツカゼソウも終盤。
ヤブマメもそろそろ終わり。
ナンテンハギは夏の花なのですが、今年は観察できる期間が長い。
オオヤマハコベは盛りです。沢沿いなどの、湿った環境を好みます。
ヤマゼリも盛り。あちこちで見かけました。
シラヤマギクは盛り。
カントウヨメナも盛りです。
クサボタンの花はほとんど終わって…
こちらはクサボタンの実。森で目立ちます。
ノダケ。稜線でよく見かけます。
ヤマハッカ。ハッカの香りはしません。
名残のツリガネニンジン。ほぼ終わっています。
ゲンノショウコ。今日みたいな冷たい雨の日は花を閉じてしまうのですが、若干数開いてくれていました。
雨は写真にうつりませんが、こうするとうつせますね。
アズマヤマアザミ。盛りを過ぎています。
ノハラアザミ。盛りをすぎています。
(小仏)城山山頂は誰もいませんでした。
ガマズミの真っ赤な実。
稜線は霧に包まれて何も見えません。
一丁平の展望台も、なにも見えません。
毎年楽しみにしているセンブリの花。順調に育っています。花の時期は、例年だと10月中旬ぐらいです。
シモバシラはピークを過ぎています。
アキノキリンソウ。これが咲き始めると、秋の深まりを感じます。
高尾山山頂に到着。こちらも遠景はゼロ。
高尾山山頂のモミジはうっすらと色づいています。紅葉の見頃は、例年ですとだいたい11月上旬から中旬です。


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