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高尾歳時記 2024年9月28日

去年のほぼいまごろ、2024年9月25日の読売新聞朝刊、「編集手帳」から引きます。読売新聞東京本社版。原文縦書き。

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彼岸花が咲き始めた、という各地からの便りに心が和む。曼珠沙華まんじゅしゃげ、つまり天界に咲く花という別名を知る方も多いだろう。秋の花を待ちわびたのは、暑すぎた夏がやっと終わるからにほかならない◆彼岸花は気温が20度ぐらいに下がると突然現れ、赤い花を咲かせる。桜と同じく、花のあとに葉が育つ。ほとんどの植物が枯れている時期に、誰にも邪魔されることなく光合成を行い、栄養を蓄えるそうだ(『すごい植物最強図鑑』中央公論新社)
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ヒガンバナはピークを少し過ぎたぐらい。あちこちで満開の花を見かけます。一部は終わっていました。

ヒガンバナと同じヒガンバナ科の植物で、キツネノカミソリという植物があります。仲間というだけあって、読売新聞のコラムに記述のある、「突然花を咲かせる」「花の後に葉が育つ」という性質そっくりの生態なのですが、時期はこちらの方が早い。種の保存のための作戦は同様なのですが、時期が重ならないのは、お互いに協力しあっているからなのか、それとも遠慮しあっているからなのか。

キツネノカミソリ。8月3日撮影。

今年の秋のお彼岸ですが、入りが9月19日(木)、明けが9月25日(水)でした。去年に引き続き今年も猛暑でしたが、「暑さも寒さも彼岸まで」のとおり、ようやく過ごしやすくなってきました。

今日早朝の高尾山口駅前の気温は20℃。気温は低めですが、湿度が高く、体感はぬるい感じ。ですが、不快ではありません。昨日時点の天気予報は雨だったのですが、直近時点で予報は曇りになりました。

予報が悪かったからなのか、高尾山の人出は若干少なめ。午前09:00の高尾山山頂の気温は23.5℃。涼しくなるこの時期は、本来なら人出は多くなるのですが、特に主稜線はあきらかに少なく、静かな登山になりました。

今日も花の多いところをめぐってきました。

ツユクサは高尾ではもっとも一般的に観察できる花のひとつですが、今年は特に多いですね。今日もあちこちで見かけました。
イヌホウズキ。個体数は多い。
イヌタデ。山中ふもとあちこちで見かけます。
ムラサキシキブが結実していました。
シュウカイドウはピークを過ぎています。
ツリフネソウはピークを過ぎて、終わりに向かっていますがまだまだ見頃の花がたくさん。森で一番目立っています。
キツリフネはもともと個体数が少ないので見つけられるかは運次第。今日もぽつぽつ咲いているのを見かけました。
ノブキの花は終盤に向かっています。花が明らかに少なくなってきました。
そして、これはノブキの実です。花が終わって、どんどん結実しています。こちらはいっぱい見かけました。
草むらにいっぱいはえているチカラシバも、雨露がつくと風情あるすがたになりますね。
あっ!アキノウナギツカミが咲きはじめています。ミゾソバとそっくりなのですが…。
決定的なちがいはこの葉っぱ。アキノウナギツカミの葉は基部が茎をまきこみ、長細い卵形になります。
一方、ミゾソバの葉は基部が茎をまきこまず、茎に近い部分が左右に広がってそれぞれ先がとがるとともに、葉先もとがって、縦に見ると牛の顔のシルエットのような形になります。
ミゾソバは高尾ではもっとも多く観察できる花のひとつ。この時期はアキノウナギツカミも咲くので混同するひとが多いのですが、混乱に拍車をかけるのが…。
このタニソバです。ミゾソバそっくりの葉ですが、基部が茎をまきこむという特徴があります。花がミゾソバに比べて白っぽいものが多いのですが、ほぼ白い花をつけるミゾソバもあるので、アキノウナギツカミ、ミゾソバそしてタニソバは、葉を確認して同定するのが確実です。
ゲンノショウコ。こちらも高尾ではごく一般的にあちこちで観察できる花ですが…。
こちらはミツバフウロ。今日見つけたのは、紅が濃い個体でした。
ミツバフウロは、高尾では数がとても少なくなかなかお目にかかれません。ですが、今日はラッキーなことに何箇所かでその元気な姿をみることができました。
このミツバフウロはゲンノショウコそっくりの花をつけるので、見慣れない人には同定がとても難しい。今日見つけたのは紅が濃い個体でしたが、高尾ではゲンノショウコと同じぐらい白い個体が多い。両者には、ゲンノショウコには花柄に腺毛がある一方ミツバフウロにはない、ゲンノショウコは茎の下部の葉が五裂するがミツバフウロの葉はすべて三裂であるなどの違いがありますが、そんな細かいところを見なくても、そもそも両者は全体的な雰囲気が全然違うのです。この雰囲気の違いを、残念ながら私は言葉で表現することができません。
表現できないのですが、見ればパッとすぐにわかります。
遠い将来はわかりませんが、Googleレンズの正答率が低いのには、こういった言語化できない違いがあることも原因です。
もっとも、植物の同定を画像だけでやるのは基本不可能です。私はあくまでもシロウト愛好家であり、専門家ではありませんので頑張って勉強していますが、実物の観察にまさるものはありません。山にくるたびに発見があります。今までのまちがいにもよく気づきます。
ミズヒキ。こちらも高尾では最も多く観察できる花のひとつ。
フユイチゴ。その名のとおり、11月以降寒くなるころにイチゴの実がなります。
マツカゼソウ。秋の花ですが、ピークを過ぎて、徐々に少なくなってきています。ミカン科の植物で、鼻をちかづけるとかすかに柑橘の香りがします。
アズマヤマアザミ。個体数は多い。
名残のタマアジサイの花。ほとんど終わっています。
オオヤマハコベ。個体数が少ないということもありますが、この花を見つけるのは難しい。
ぜひ見つけてみてください。そしたら理由がわかります。
レモンエゴマはピークを過ぎています。
あっ!今週もジャコウソウを見つけました。高尾では個体数は少ないのですが、今年は比較的多く見かけます。
ヤマゼリ。ヤマゼリの花には、いつも虫が群がっています。蜜なんかが美味しいということなのか、それとも何らかの成分を放って、それがが虫を誘うのか。
ナンテンハギ。ピークを過ぎて、少なくなってきています。
カントウヨメナ。個体数は多い。
シロヨメナ。こちらも個体数は多い。
オトコエシはピークを過ぎています。小さい株がほとんどですが、稜線上ではひとの背丈ほどにもなる大きな株がみられます。
あっ!ここにもジャコウソウが!今年は多いですね。
クサボタンはピークを過ぎています。去年と比べると、今年は少なめです。
(小仏)城山から都心方面。空の雲は厚く、空気も霞んで眺望はほとんどありませんでした。
タイアザミ(トネアザミ)。この個体は総苞片が立派です。個体数は多い。
ノハラアザミ。こちらも個体数は多い。
ノダケ。稜線でよく見かけます。
一丁平の展望台から、富士山方面。こちらも眺望はほとんどなし。
ヤマハギはピークを過ぎて、少なくなってきました。
ヒヨドリバナもほとんど終わり。
キバナアキギリは散り始めていました。
おお!これはオケラの花です。そういえばしばらく見かけなかったような…。
ガマズミの実。だいぶ落ちてきています。
イヌショウマの花が咲きそろってきました。見頃はもうちょっと先。
シモバシラの花はピーク。稜線のあちこちで見かけました。
モミジガサ。個体数は多い。
高尾山山頂に到着。富士山方面。ほとんど何も見えません。
同じく高尾山山頂から、丹沢主脈方面。こちらも眺望は限定的。
ここからは先週、9月22日の写真。この日、高尾山は大雨になりました。
雨が降るとところにより、登山道は川になります。
登山道を流れる雨水は徐々に流路をせばめ、より強い流れとなり、地面をえぐっていきます。
流水による登山道の崩壊を防ぐため、水が流れやすいところには排水のための水切り板が設置されています。この水切り板には、流路を最短にし、登山道の侵食を遅らせることで整備の手間を少なくする効果があります。
雨が降ると活動が活発になる生き物がいます。森の緑も濃くなります。
雨の登山もいいものです。

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