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高尾歳時記 2024年3月30日

昨日3月29日、東京では桜の開花が発表されました。

NHKの報道によると、今年の東京のサクラの開花発表は平年より5日、統計を取り始めてから最も早かった去年(2023年)より15日それぞれ遅く、また、2013年以降で最も遅いとのことです(*1)。今年は3月に入ってから寒い日が続きましたので、桜の開花はだいぶ遅れました。

高尾山ケーブルカー山麓駅(清滝駅)前のソメイヨシノの木も開花しています。開花状況はまだ咲き始めで、1〜2分咲き程度。

高尾山ケーブルカー山麓駅(清滝駅)前のソメイヨシノは開花したばかり。
もう一週間もすれば満開となるでしょう。

満開まではあと一週間程度と思われますが、高尾駅至近の大光寺境内の江戸彼岸桜はひと足先に満開を迎えています。

大光寺の江戸彼岸桜はひと足先に満開を迎えています。京王線高尾駅のプラットフォームより。

桜の開花は遅れましたが、高尾ではスミレの花が例年通り次々に開花しています。本日見かけたのは以下の通り:
・タカオスミレ(ヒカゲスミレ)
・タチツボスミレ
・アカフタチツボスミレ
・アオイスミレ
・ナガバノスミレサイシン
・オカスミレ
・エイザンスミレ
・ヒナスミレ

タカオスミレ

タカオスミレは、1928年植物学者中井猛之進博士が高尾山で発見し、ヒカゲスミレの変種として発表。そののち、変種ではなくヒカゲスミレの一品種、すなわち同種の色違いであると再分類されたものです(学名:Viola yezoensis var. yozoensis f.discolor (Nakai) Hiyama ex F. Maek = 「Nakai」は中井猛之進博士、「Hiyama」は桧山庫三氏)。

ヒカゲスミレは、その葉に鮮やかな緑色から茶褐色ないしは黒紫色までかかる色違いがあり、また、葉の両面とも濃い色のものや、表側だけ濃いものなど様々な個体が存在します。このうち、葉の両面ともに色の濃いものをタカオスミレと呼びます。高尾山で発見されたり、高尾山の名を冠した植物は様々ありますが、そのうちのひとつです。

ヒカゲスミレは葉の色合いにバリエーションが多く、全体が緑色のものをヒカゲスミレ、葉の表面が茶褐色で裏が緑色のものをハグロスミレ、葉の両面共に黒紫色のものをタカオスミレと呼び分ける向きもあるようですが、実際はこれらの中間的な色合いのものがあったり、同じ株からヒカゲスミレとハグロスミレの特徴を持つ葉が出ていたり、最初は濃かった葉の色が時間の経過とともに徐々に抜けて緑色になったりと、厳密にどれがどれ、と識別できない個体が多く存在します。したがって、それら全てをヒカゲスミレと呼んでもさしつかえありません。高尾では上述のさまざまなバリエーションの全てを観察できます。

こちらは葉がほとんど緑色。ヒカゲスミレの基本種に近い個体。
こちらのヒカゲスミレは葉が濃紫色で、タカオスミレと呼んでもいいでしょう。
こちらも葉が濃紫色でですが、部分的に色が抜けて緑がかっています。ヒカゲスミレはこのように、葉の色にさまざまなバリエーションがあります。
ヒカゲスミレ(タカオスミレ)は限られたところでしか咲いていませんが、種子のほかに地下茎を伸ばして繁殖するので、このように群生を作ります。
アオイスミレ。高尾ではもっとも一般的なスミレのひとつです。
タチツボスミレ。こちらも高尾ではもっとも一般的なスミレのひとつ。
こちらもタチツボスミレですが、アカフタチツボスミレと呼ばれる品種。
アカフタチツボスミレは、このように葉の葉脈が濃い赤色に染まることからそう呼ばれます。
オカスミレ。一番の特徴は花の側弁にびっしり毛がついていることです。このオカスミレはアカネスミレの変種とされており、アカネスミレも同じく花の側弁にびっしり毛がついているのですが、オカスミレは花茎や葉がほとんど無毛である一方、アカネスミレは全身が微毛で覆われているという違いがあります。オカスミレもアカネスミレも高尾では普通に観察できますが、個体数は少ない。
花が完全に開く前のエイザンスミレ。エイザンスミレのいちばんの特徴は、この深い切れ込みの入った葉。
エイザンスミレの花は、スミレの中でも最大級。
同じくエイザンスミレ。このように、日当たりのいい斜面で燦々と降り注ぐ日を浴びている姿をよくみかけます。
人気者のエイザンスミレ。個体数は比較的多い。
ナガバノスミレサイシン。ふもとから山中まで、あちこちで見かけます。
ナガバノスミレサイシンは花の形や色にさまざまなバリエーションがあり、同定できるようになるためには若干の慣れが必要です。
こちらもナガバノスミレサイシンですが、このように、エイザンスミレに匹敵するぐらいの大きな花をつける個体もあります。
ヒナスミレ。ふもとでみかけることはまずなく、基本的に山中でしか観察できません。
同じくヒナスミレ。そのお雛様のような可憐な姿で、人気の高いスミレです。

昨日は移動性の低気圧が日本列島を横断し、冷たい雨の一日となりましたが、今日はぽかぽか陽気となり、午前10時時点の高尾山山頂の気温は19℃。人出は多く、混雑していました。

スミレいっぱいの高尾を巡ってきました。

ハクモクレンが満開。
ハクモクレンの純白の花が青空に映えます。
某所で見つけたザゼンソウ。高尾で自生しているという情報に接したことはありませんので、人為によって定着しているものでしょう。
高尾ではカタクリの自生が記録されていることは確認していますが、この場所は広範囲に群生しているので、こちらも人為により定着しているものでしょう。
昔はこのカタクリの根から片栗粉をとったんですよね。根気のいる作業だったことでしょう。
アズマイチゲは花のピークを迎えています。
ユリワサビはこの時期ふもとから山中まであちこちでみかけます。
こちらはコハコベの花。里山では雑草扱いかもしれませんが、よくみると可愛い花をつけます。
ニリンソウは次々に開花しています。開き初めはこのようなかわいい桃色。
高尾には、日影沢と西山峠にニリンソウのすばらしい群生があります。見頃はもうちょっと先。今年も楽しみです。
ヤマエンゴサク。ふもとで群生している姿を観察できます。
コチャルメルソウの花が開花していました。花の形がラッパににているので、チャルメラのラッパの連想から名付けられた花です。
フタバアオイが花芽をつけています。フタバアオイはその名のとおり、一株につき二枚の葉をつけるのですが、自然界ではありえない三つ葉のフタバアオイは吉兆の象徴として古くから家紋の意匠に採用され、最終的に専用として召し上げたのが、かの御公儀の葵の御紋であるのはみなさんご存知の通り。
ヤマネコノメ(ヤマネコノメソウ)。この時期沢沿いの湿った環境で多く見かけます。
ヨゴレネコノメ。こちらもこの時期、沢沿いの湿った環境でよく見かけます。
ヤマネコノメやヨゴレネコノメ、そして高尾の人気者のハナネコノメは同じユキノシタ科ネコメノソウ属の植物で、みな同じような環境に生育します。
(小仏)城山から、富士山方面。本日空は快晴でしたが、春霞が濃く遠景はぼんやり。
同じく城山山頂から、都心方面。春霞で遠景は限定的。
一丁平のコブシが開花していました。
カントウミヤマカタバミの花は、この時期ふもとから山中まであちこちで
観察できます。
高尾山山頂に到着。引き続き空は快晴ですが、春霞で遠景はぼんやりしています。
同じく高尾山山頂から、丹沢主脈方面。ぼんやりしていますが、稜線は見えました。

*1
NHKホームページ 首都圏ナビ もっとニュース 「桜開花予想2024 東京で開花宣言 横浜や熊谷 水戸などの開花と満開はいつ?」、閲覧日:2024年3月30日


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