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【読んだ本の話】兼好の「徒然草」から学ぶ、最旬の価値観。つべこべ言わずに「やりなさい」


古典を読了した爽快感

今年は大河ドラマをきっかけに「古典を読もう」という気運が高まり(私の脳内で)、色々検討した結果手にしたのは「徒然草」。

源氏物語はおそらく長くて無理そうとか。
枕草子は大学生の頃読んだしなとか(記憶はないが)。
そういう上っ面だけの検討です。

「徒然草」はすべてを通して読んでみると、学生時代に「一部だけ取り出して読んだ時」の印象とは全く違います。

これは、価値観の総体です。

価値は見る角度によって姿形を変えていくもの。

一人の人間が多面的であるように、一人の人間が書くものも複雑な思想が絡み合ってできているのです。

だから、「一冊を通して読んでいただくことが大前提。そのためにこの本を作った」と、訳者の島内裕子さんが後書きに書かれているように。エッセイや散文は、一つひとつが短いからこそ、全体像が大切になるようです。

私が付箋を貼った箇所の価値観について

面白いなー! と感じた部分には付箋を貼りました。

私が付箋を貼ったところに、何が書いてあるの?

読了した頃には、初期の記憶がありません(かわいそうな脳みそ)。

そこで付箋をたどる、二度目の旅へ。

私が読んだのは、
「徒然草」/兼好/校訂・訳:島内裕子/ちくま学芸文庫/2010年4月初版
下記の要約も、訳者の訳を参考にしていますが、間違っていたら申し訳ありません。

第75段
要約「何もすることがないことこそ最上だ。人の意見に惑わされず、自分が自分らしく生きられる一番いい時じゃないか」

これは、デバイスに時間を奪われ、人のSNSに振り回されている現代人に刺さるワードですね!

第82段
要約「揃いすぎたもの、完璧なものほど魅力はない。あえての不揃い、あえての未完成ほど面白い。建築物も未完成がいいし、書籍も章段が欠けているくらいがいい」

この記述を、建築家のブルーノ・タウトさんが「未完成推し」の典拠にしたとか(あとがきより)。

第92段
要約「物事を行うとき、あらかじめ予備を用意しておくとどうしても気が緩む。常に、今この一回だけがチャンスだと思って臨むべし」

「やりたいことがあるなら今すぐやれ、その一回だけに全集中しなさい」的なアドバイスは、本全体を通して何度も見られます。スタートアップの極意本なのかなと思いました。

第107段
要約「男の子は女性から笑われないように育てることが大事。だが、男が気を配っている女って、そこまで大したものか? 恋愛をしているときだけは引き込まれるが、そんな時でさえ自分を見失わないように頑張れ」

原文は、「女の性は、皆僻めり(ひがめり)」です。
兼好さん、女子から嫌なこと言われたんですかね?

第140段
要約「死後に財産を残すのはナンセンス。相続争いが起こるし。ゼロで死ぬのが理想、っていうか財産持たないのが理想!」

なるほど!
確かに!

第171段
要約「ゲームをしていると、自分の周りを見ずに遠くばかり気にする人がいる。が、実際勝つのは自分の足元を把握していた人。政治も、健康もすべて同じ。自分の心と体と目の前をしっかり見つめることで事態は好転する」

SNSで流行っているものを追うより、自分のこと、自分の周りのこと、自分がやるべきことを見定めようという提言。


第188段
要約「起業のために資格を取ろうとか、○○のために先にこれをやろうとか、余計なことをしているうちに人生が終わる。やるなら今やれ、すぐやれ、それでも時間は足りないし、明日天変地異が起こったら実現不可能になる。つべこべ言わずにやりなさい」

これもスタートアップの極意かなと思いました。あと私に対しての苦言かなとも。

第190段
要約「結婚して同居することほどがっかりすることはない。どんな女も一緒に住んでいると嫌になる。通い婚くらいがベスト。独身も最高」

兼好さんに、本当に何があったのか。

第191段
要約「どんな飾りも、色も、夜こそ美しく映える。香りも、楽器の音色も、夜にこそ美しく感じられる」

谷崎潤一郎の陰翳礼讃を思い浮かべたものの、谷崎は「羊羹も暗いところで見るといい」と言っているのに対し、兼好は「暗くてよく見えない時でもちゃんと着飾れ」と言っているので、なんかちょっと違う。

わかるところとわからないところ

いくつか付箋を貼った箇所の、要約をまとめてみましたが、上記は「わかる!」「面白い!」と感じたところ。

もちろん「わからん」ところもありました。
価値観に馴染めないところも。

身分の上下に関するところ、身分の高い人の嘘や悪戯は脇に避けてしまうのが気になったり(いや、それダメだよね?って)。

ただ、一貫して兼好さんが言っていることに、

「人生はいつ終わるかわからない。準備に時間をかけていたら準備のまま終わる。だから今がほんとに大事」

みたいな意見があります。

そんな兼好さんは、とても若いうちに仏教の道へ入ったらしく。徒然草に「法師になって色んな人に教えを授けたいなら、今すぐ出家しろ」というような一文もあることから、この姿勢を自分でも貫いています。

スマホ見てないで、自分を振り返り、何ができるかを棚卸しして、今すぐ始めなさい。
人の言うことに惑わされちゃダメ。
つべこべ言わずに始めなさい。

…というような概念が、とにかく何回か登場します。

それ以外も面白いです。おすすめ!


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