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海外でも大人気! 「ぎょうれつ」シリーズ最新刊『とりさん なんの ぎょうれつ?』発売記念 オームラトモコさんインタビュー
「ぎょうれつ」をテーマに、楽しいしかけ絵本シリーズを生み出したオームラトモコさん。その作品は、日本を飛び出して、海外でも大人気!
シリーズの新刊『とりさん なんの ぎょうれつ?』刊行を記念して、「ぎょうれつ」シリーズの創作秘話をうかがいました。
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オームラトモコ
東京都生まれ。会社員を経て、PALETTE CLUB SCHOOL を卒業後、イラストレーターとして活躍。『こんなおつかいはじめてさ』(講談社・第3 回ピンポイント絵本コンペ最優秀受賞作品)でデビュー。「ぎょうれつ」シリーズ(ポプラ社)のほか、『アニマルランド』(金の星社)、『でんしゃが とおりまーす』(世界文化社)など数々の絵本を手掛ける。
シリーズのはじまり
――どうして「ぎょうれつ」をモチーフに選ばれたのですか?
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個展の作品のために、なにげなく動物図鑑を見ていたら各動物の説明文のところに体のサイズが書かれているのが目に留まったんです。実際のサイズを数字であらためて見ると、すごくリアルに動物の大きさが感じられておもしろいなあと思いました。
そこで、いろいろな動物のサイズを調べていたら、だんだんと絵として動物を並べてみたくなってきて。どうせ並べるなら、大きさ順に並べたほうが、見た目もきれいかなと。
そこからさらに、「一番大きい動物って何?」と思って調べたら、図鑑に「クジラ」が載っていて。
「そうかぁ、クジラって海に住んでいて、こんなに大きいのに動物なんだよね」と、あらためて感心。
「もしや、これだけの大きさなら、かなりの数の動物を背中に乗せられるのでは?」と思いつき、大きさ順の動物たちをクジラの背中に乗せる絵のイメージがわきました。
はじめは、イラストだけをギャラリーで展示しようと思っていたのですが、どうせならこの絵をもとに何かお話にして展示しようと考えて、結局、個展では、この作品を絵本のダミー本としてファイルにしたものをテーブルで展示しました。
――この絵本のダミーが、初代担当編集者の目に留まり、絵本として出版することになりました。出版までの道のりで、思い出深いエピソードはありますか?
1作目の『なんの ぎょうれつ?』の絵本制作を進める際の最初の打ち合わせで、あれこれ意見をやりとりしている中で、「まずはこの行列を1本の線で繋がっていると考えてみましょう」と編集さんがおっしゃられて、すごくハッとしたのを覚えています。
絵本は、1冊でひとつのストーリーであって、ページごとに完結するものではないのに、私はついつい1画面ばかりに気をとられて全体像が見えていなかったことに気づきました。
こりかたまった頭をほぐしてもらった気持ちでした。
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――そんなやり取りがあって、読者がワクワクしながら「ぎょうれつ」の先を追っていける構成ができあがったのですね! 並んでいるあいだの会話やエピソードにも、思わず笑ってしまいます。
人間の世界でも行列に並んでいる人たちはおしゃべりをしたり、スマホを見たり、ときには寝ていたりと、さまざまな方法で待っていると思います。
絵本の中のキャラクターたちは人間ではありませんが、生き物としての感情は同じだと考え、人間と同じような感覚で並んでもらっています。
この絵本の構成上、並んで待っているシーンが長いので、読者が飽きないように、それぞれの生き物の特徴に合わせて、見開きごとになるべく変化をつけています。
あまりお行儀のよい待ち方をしていない方もいますが(笑)、同じ目的をみんなで共有しあうことで最後は達成感みたいなものを感じてもらえたらうれしいです。
――並んでいたみんなが一堂に会する、ダイナミックな観音開きのしかけページも魅力ですよね。
『なんの ぎょうれつ?』の絵本構成を考えていく中で、見せ場として、クジラのページは横長の大きな見開きにしたいと思いました。
当時、知識が浅いながらも、絵本のしかけとして観音開きがあることは知っていたので、「この絵本にいかせそう!」と考えたかと思います。
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ワイドなページは、シリーズの見どころのひとつ。
――その後、順調にシリーズを重ねていかれましたが、最初からシリーズの構想はあったのでしょうか?
完全に想定外だったので、シリーズになったことは自分でも驚きしかないです。
――そんな想定外のシリーズ化でしたが(笑)、2作目は「おばけ・妖怪」のぎょうれつ。オームラさん、おばけや妖怪がお好きなのでしょうか?
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古今東西のおばけや妖怪がせいぞろい!
妖怪やおばけは……じつは苦手です。
4作目の虫も……とても苦手です。
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リアルなのに、かわいい虫たちがいっぱい!
では、なぜ描いたのかと言われれば、苦手だけれど描いてみたい(挑戦してみたい)という気持ちのほうが勝ったのかもしれません。
「得意なものだけ描いていても、絵は上達しないよ」と学校の先生がよく言っていたので、その言葉が脳裏に焼きついていたのかもしれません。
絵のこと
――苦手なものを描くのは……たいへんじゃないですか⁉ 写真資料などをご覧になって描くんですか?
資料は結構見るほうだと思います。
書籍以外でも、今はネットで検索すれば、ひとつのモチーフでたくさんの情報が出てくるので便利になりました。
このシリーズのイラストは「ややリアル」だと思いますが、最初は「すごくリアル」に描く予定でした。
しかし、現実問題として私の画力が追いつかなかったため、結果的に「ややリアル」という絵に仕上がったという感じです(笑)。
デフォルメ具合に関しては、どこまで省略するかはいつも悩むところではありますが、違和感がない程度にしています。
――しっかり実物の資料と向き合い、どう描くか試行錯誤されるオームラさん。だからこそ、特徴をとらえながら、とっても親しみやすいキャラクターが生み出されます。このシリーズで登場するのは、50以上の生き物たち……。1冊の制作期間はどのくらいかかったのでしょう?
作品にもよりますが、ラフは修正作業を含めて1か月〜2か月くらい。本描きは4か月くらいでしょうか。
シリーズの中では、『こんやは なんの ぎょうれつ?』が一番時間がかかったと思います。おそらく本描きだけで6か月くらいかと。
――どんなふうに作品を仕上げていくのか、絵の制作過程を教えてください。
ラフはかなり大ざっぱなので、下書きでしっかりと資料を見ながら作業を進めていきます。
下書きは手書きで描いたものを、パソコンで読みこみ、大きさやレイアウトを調整します。
できあがった下書きを実寸でプリントしてみて、全体のバランスをチェックしたら、この下書きを元に本番の線画をおこしていきます。
線画を描く際は、小さい絵は描きにくいので部分的に拡大して描きます。
この線画をパソコンで読み込み、汚れなど修正したら、ぬり絵のように色をのせていきます。色は、保存してある絵の具のテクスチャーをはめこむ感じです。
最後に、全体の色味を調整してできあがりです。
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まだ全体のフォルムはざっくり。
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ウロコなどの細かいところは、さらに別に描き、パソコン上で合成することも。
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色あざやかに、躍動感のあるページに仕上がりました。
――なんと緻密で、こまやかな作業! こうして命をふきこまれて、絵本の中で生き物たちがいきいきとしてくるんですね。
海外でも大人気!
――このシリーズの魅力は、海外にも広がっています。アジアやヨーロッパを中心に翻訳され、フランスではノールイゼールこどもが選ぶ文学賞、スウェーデンではピーターパン賞を受賞されました。
シリーズ1作目の『なんのぎょうれつ?』が海外で翻訳されると最初に聞いたときは、じつは半信半疑だったんです。
当時のわたしは、絵本を出版できるだけでもありがたいという状況だったので、「海外でも出版するなんてウソでしょ?」という感じで(笑)。
実際にできあがった翻訳絵本を手に取ってようやく、「これは現実なんだ」とすごく感動した記憶があります。
――初々しいオームラさんのエピソード! そんな記念すべき1冊目からはじまり、15の言語に翻訳されました。
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では、通常サイズのほか、プチサイズ版も販売されています。
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最新作について
――このたび、待望の新刊『とりさん なんの ぎょうれつ?』が刊行されました! 「とり」というモチーフは、描いてみていかがでしたか?
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なぜか鳥の絵は子どもの頃によく描いていました。
美術や工芸の授業で制作した木工品やタイルのモザイク画、選挙ポスターなんかも、たしか鳥を描いていたと思います。
ペットとしてセキセイインコを飼ったことがあるので、生き物としては身近な存在だったからかもしれません。
今回の作品では、たくさんの鳥が登場しますが、鳥は口がくちばしなので表情をつけるのが難しかったです(笑)。
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鳥たちのいきいきした表情やしぐさが楽しい!
――今作のしかけのページでは、ふだん飛べる鳥たちが飛行機に乗って……という展開です。『なんの じゅうたい?』でも、たくさんの乗り物を描かれていますが、乗り物を描くコツありますか?
乗り物は、絵のモチーフの中でも難しいほうだと思います。
もちろん、私もいつも苦労しています。
昔、仕事で自動車の絵のラフを提出したら、編集者さんに「この絵の自動車だとドアが開きませんね」と指摘を受け、最初はよくわからなかったのですが、タイヤとドアの位置関係は重要らしく、説明を受けて「なるほど〜」と、とても納得した思い出があります。
それからは、乗り物のドアやタイヤ、飛行機の羽などの位置関係は気をつけるようになりました。
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それぞれの窓には、登場してきた50の鳥たちがいます!
――『とりさん なんの ぎょうれつ?』のラストでは、この飛行機が意外な展開をしていきますので、絵本を開いて、確認してくださいね!
(構成/編集部 井出香代)