#16 息を呑むほど夕焼けで(石川美南)/にんじんの濃厚リゾット
いきなり引き込まれた短歌というファンタジー
6年前、京都の恵文社一乗寺店。
石川美南(いしかわ・みな)さんの歌集『離れ島』をたまたま手にとった。
美しい深緑の帯には "短歌の中でやわらかに息をする言葉たち"。
歌人の世界にすーっと連れて行かれるような、
不思議な感覚は今でも覚えている。
息を呑むほど夕焼けでその日から誰も電話に出なくなりたり
『離れ島』漂流の記憶
大人の、良質なファンタジー。
詩や短歌は「説明」や「論理」が投げ出された世界だ。
美しい夕焼けを見たから、誰も電話に出なくなる、というのは
論理的にはつながっていない。
なのに、「そんなこともあるかも・・・?」という気にさせる魔法。
その放り投げられ方が、心地よい。
石川さんの短歌には感傷的なところはなく、
ふしぎな世界の中に、ほのかな愉快さが漂っている。
夜になれば移動する木々(まづは根を)(続いて幹を)国境へと
駅前にできてゐる海(昨夜未明、見境なく打ちにき雨は)
でも、ほんとうに不可解なことだけど、
ファンタジックな世界を漕ぎ進むにつれ、
短歌という空想のなかのにんげん含めた生きものたちが、妙に、動物として正しいような気がするのだ。
夕日があまりにも美しかったら、電話になんて出なくていいのかもしれない。
にんじんで、濃厚なリゾットを作る
引用した「息を呑むほど夕焼けで・・・」の一首から、
にんじんリゾットを作る。
にんじんだけで、こんなに濃厚な味になるのかと
息を呑むリゾット、ぜひ作ってみてください。
材料(2人分)
・米 1cup (無洗米でなくても大丈夫)
・にんじん 中1本(なるべく甘くて新鮮なものを)
・にんにく ひとかけら
・玉ねぎ 半個
・パセリ ふた枝くらい
・コンソメ 3g
・お湯 800ccくらい
・白ワイン 30〜50cc(安価なものでよいです)
・バター 5~10g
・パルメザンチーズ 大さじ2
塩、胡椒、オリーブオイル
作りかた
【下準備】
玉ねぎ、にんにく、にんじん、パセリは細かいみじん切りにする。
(チョッパーがあれば便利)お湯をわかす。
①オリーブオイルをフライパンにしき、にんにくを炒め、いい香りがしてきたら玉ねぎをかるく炒める。※焦がさないように注意
②米(洗いません)を足し、お湯(300ccくらい)とコンソメ、白ワインを足し、人参を入れる。
★白ワインがお店の味に近づくコツその1
③ときどきナベをかきまぜながら、水分が少なくなったら湯を足していく。
味をみながら、コンソメを足してOK。
④何粒か食べてみて、アルデンテになっていたら、塩かげんを見て、
最後にバターと胡椒、パルメザンチーズを足す。パセリを散らす。
食べるときにオリーブオイルをひとまわしかける。
★仕上げのバターとチーズ、オリーブオイルがコツその2
米は洗わなくていいのですが、気になる人は洗って水を切るか、無洗米を使うとよいかと。
にんじんだけとは思えないくらい、濃厚でうまみのあるリゾットです。
ベーコンがなかったので試作でにんじんだけで作ったら、
びっくりおいしかったのでレシピ公開しました。
あまったらアランチーニ(ライスコロッケ)にしても◎
息を呑むほどの夕焼け
福岡に帰ってきて、息を呑むほどびっくりしたのは、
にんじんの味の濃さと、りんごのようなみずみずしい甘み!
切ったそばから香りが甘い。
そして、夕焼けの美しさ。
家から徒歩3分の海。
電話にはギリ出るけど、
まぁ、
いろんなことがどうでもよくなる夕焼けである。
作者とおすすめの本
■作者についての私的解説
石川美南(いしかわ・みな)神奈川県生まれ。1980-
早稲田大学の短歌実作ゼミで水原紫苑に師事。
短歌結社に属さず、短歌同人誌pool ・[sai]のほか、
さまよえる歌人の会で活動されている。
リアルとファンタジーのあいだを、ひょうひょうと行き来するような短歌。
連作・構成の意識が強く、短歌一首一首を味わうというより
ぽーんと物語の中に放り込まれるような感じ。
「発車時刻を五分ほど過ぎてをりますが」車掌は語る悲恋の話
コーヒーを初めて見たるばばさまが毒ぢや毒ぢやと暴るる話
「物語集」より
人生のドラマティックな一場面を切り取った歌を読むことが多かったので、歌人がことばで浮かび上がらせる世界の側面にくらくらし、とても面くらいました。
いつまでもその世界にたゆたっていたい余韻があります。
サイト:http://www.yaginoki.com/
■おすすめの本
「離れ島」