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『水星の魔女』はガンダムだけどガンダムじゃない! 一期の8000字レビュー - 『水星の魔女』の魅力

『水星の魔女』、おもしろい

 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、おもしろいよね!!!!! という勢いから、この文章を書いている。(Season 2 放映日の前日)
 新世代のファンを意識して制作されたという本作※0 は、制作者側の意図にたがわず、この作品を「はじめてのガンダム」として観た方が結構いらっしゃるようである(リアルの知り合いでもちらほら)。
 正直、いちガンダムファンとして、ニコニコしている。

 この作品の魅力をさらに伝えるために、ぜひいいたいことがある。それは一言でいうと、『水星の魔女』の魅力の一端は「ガンダム」だけど「ガンダム」じゃない点にあるんじゃないか、という話。

※0 例えばこちらを参照
『機動戦士ガンダム水星の魔女』岡本プロデューサーインタビュー「固定概念を外して見ていただけると嬉しい」 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

『水星の魔女』とは

 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下『水星の魔女』)は、2022年10月よりTV放送・配信が開始されたサンライズ制作のテレビアニメで、ガンダムシリーズの最新作である。監督 ⼩林寛氏、シリーズ構成・脚本 ⼤河内⼀楼氏。

A.S.(アド・ステラ)122――

数多の企業が宇宙へ進出し、巨大な経済圏を構築する時代。

モビルスーツ産業最大手「ベネリットグループ」が運営する
「アスティカシア高等専門学園」に、
辺境の地・水星から一人の少女が編入してきた。

名は、スレッタ・マーキュリー。
無垢なる胸に鮮紅の光を灯し、少女は一歩ずつ、新たな世界を歩んでいく。

公式サイトSTORYより引用

 ガンダムTV放映シリーズらしからぬ「学園もの」という設定、初の女性主人公、そしてそのストーリー展開とキャッチーな台詞から、2022年10月放映のSeason 1 時点において、SNS上でも大きな話題を呼んでいる※1

 ファンの間では、スレッタおよびその登場機体であるエアリアルをめぐった謎への考察がなされていたり、ラストシーンの「グロい」描写の意義や是非についていろいろと主張がされたりしているが、あえてこのnoteでは触れない※2
 なぜなら、そこは自分が思う『水星の魔女』の魅力のメインではないから。

※1 例えば以下の記事など参照
 『ガンダム 水星の魔女』大成功を導いた“Twitter占拠作戦”の破壊力 明らかに不便な「毎週1話」方式が日本で好まれる理由とは《タイパよりリフレイン?
※2 各種SNSなどでいろいろ考察がされているので、興味がある方はどうぞ検索してみてください。


ガンダムシリーズの「お約束」

 まず『水星の魔女』の「ガンダム」らしさを語る上で、ガンダムシリーズの「お約束」を復習しておこう。
 ガンダムシリーズがファンに期待させるストーリーラインを、あえてひとこと※3 で述べるなら「宇宙移民時代に、地球周辺を舞台として、宇宙や地球の組織・国家が、ガンダムなどの人型ロボットを使いながら、人類や地球の未来をめぐって、争う話」 である。
 もちろん作品によって濃淡はあるが、TV放映された宇宙世紀シリーズ、およびアナザーガンダムシリーズ※4 は、基本的にこの物語の定型を踏襲している。

 例えば初代の作品『機動戦士ガンダム』※5 は、スペースコロニーと呼ばれる宇宙居住地への移民がすすんだ未来のお話である。地球から最も遠いスペースコロニー国家「ジオン公国」が、地球の連邦政府に対して、独立戦争をおこすのがメインのストーリーライン。その際に兵器として使われるものが人型のロボット「モビルスーツ」であり、ガンダムはこの一種で、作中では高性能な試作機としてえがかれている。
 この初代の作品単体だけでも、大小さまざまな組織・人物が登場するため、それらの戦う理由を一概に述べることは難しいが、それでもマクロには、「地球と人類の行く末に関するある一定の主義・主張」と「それらに関連する対応や私怨」を動機としてその争いが展開していく。

 これ以降の作品は、宇宙世紀シリーズはもちろんのこと、アナザーガンダムシリーズも含めて、多くの作品がこの物語の類型に属している。
 『水星の魔女』は、他の作品同様、それらの多くの部分を踏襲しているが、同時に新しい魅力もうちだしている。

※3 5W1Hにそって、無理やり「ひとこと」をひねり出した。この限りではない作品がたくさんあるのは承知しており、たとえば各種OVA作品や漫画作品、またSDガンダムシリーズやガンプラ系統の作品、果てはMSVなど、いろいろな展開がされている(お願いなので、石は投げないでください)。
※4 多くのガンダムシリーズが共有する世界観である「宇宙世紀」に分類されない別世界の作品群のこと。いうなればパラレルワールドの作品。『水星の魔女』もこれに分類され、他にも有名どころでいえば『機動戦士ガンダムSEED』『機動戦士ガンダム00』などがある。
※5 いわゆるアムロとシャアのお話。


『水星の魔女』は何が「ガンダム」じゃない?

 では『水星の魔女』の新しい魅力とは何か。ここでは説明をわかりやすくするために、5W1Hにそって順にみていく。

When 時代

 これまでのガンダムシリーズは、だいたいは「宇宙への移民がすすんだ時代」の話であり、そして『水星の魔女』もこれを踏襲している。
 ただ異なる点として、「数多の企業が宇宙へ進出し、巨大な経済圏を構築する時代」と公式にあるとおり、その主体が国家や宇宙移民ではなく、企業※6 となっているのが新しい点といえる

 学校で習う歴史が、幕府や国家の存亡ごとに時代が区切られることが多いように、時代を記述する際に何を主体とするかという視点は非常に大事なポイントである。この時点で、すでにこれまでの作品と切り口が異なる※7 ことを予告している。

※6 物語で重要なポジションを占める企業は過去作でも登場しており、例えば宇宙世紀シリーズにおいては、「アナハイムエレクトロニクス」がある。これは軍産複合体を担う巨大企業であり、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』、『機動戦士ガンダムUC』など多くの作品でキーとなる組織である。しかし、だからといって宇宙世紀シリーズに対して、「巨大な経済圏を構築する時代」のような記述がされることはあまり見かけない。
※7
 「GAFAM」や"Big Tech"と呼ばれるような存在がニュース等で取り上げられている2020年代現在において、この設定はストーリーに対してある種の納得感やリアリズムの構築に役に立っているのかもしれない。


Where 舞台

 従来シリーズでは地球圏が舞台となっており、具体的には「地球・月・スペースコロニーおよび周辺の宇宙空間」で話の多くが展開される。それ以外に登場するのは、惑星でいうと火星、せいぜい木星あたり※8 で、水星という場所に大きく視点があたるのはほとんど初といっていい(気がする※9 )。
 もちろん水星は『水星の魔女』でもSeason 1 時点ではそこまで言及・登場しているわけではないが、それでも作品のスコープの違いがみて取れるだろう。

※8 例えば火星は、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の主要な舞台の一つである。『機動戦士Ζガンダム』では主要人物(いわゆるライバルキャラ)のパプテマス・シロッコは木星帰りという設定だし、漫画作品『機動戦士クロスボーン・ガンダム』には木星帝国なる国家も登場する。
※9 流石に漫画やスピンオフも含めた全作品を追っているわけではないため、ちょっと自信がない。これについてご存知の方、ぜひTwitterとかで教えてください。


Who 組織 

 従来は「国家・自治体やその連合体、あるいは反政府組織」などがメインだったが、今回はなんと「学園」※10 である。
 
ただ学校といっても、公教育の場というよりは、大企業の下部組織として存在するエリート養成機関というおもむきで、イメージとしてはイギリスのパブリックスクール(全寮制の私立学校)に近いものである。

 しかしこの「学園もの」の導入によるガンダムシリーズへの影響はすさまじく(!)、少なくとも『水星の魔女』Season 1 時点においては猛威をふるっている。具体的には、「謎の転校生」「ツンデレお嬢様」「お金持ち学校」「生徒/生徒会の強大すぎる自治」「少女漫画的ハーレム」「俺様キャラ/謎の美少年/腹黒生徒会長」「部活動」という数々のテンプレートの部分的な導入により、話の展開をしやすくしており、それでいてガンダム作品としては「新しい」ものになっている。

 そして同時にこれは、視聴者の間口を広げることにも貢献している。従来シリーズは「娯楽作品」として成立させるために、ガンダムシリーズファンの期待から大きくそれない話作りが、どうしても多かったように感じる。それゆえ、前述のガンダムシリーズの文脈に触れていない視聴者にとって、それらの従来作品のハードルが高かったのは、一つの側面として事実だろう。
 この「学園もの」の導入によって、ガンダムシリーズの前知識がない視聴者にもとっつきやすく※11、むしろ漫画・アニメファンの多くが触れている(と思っている)学校が舞台の作品であることは、ストーリーが一定の期待を裏切らないことを予告している。

※10 人物・組織という観点では、『水星の魔女』の宇宙移民と地球の住民の関係性が、従来のガンダムシリーズと異なる、というのもポイントとしてあげられる。初代の『機動戦士ガンダム』がそうであったように、多くのガンダム作品においては宇宙移民が抑圧される側であり、地球の住民が既得権益を保有している。しかし本作では、宇宙の住民が利益を独占しながら武力的支配をしており、地球出身者が学内でも差別の対象となっている。
※11 後述するが、従来のファンに対しても入りやすい仕組みづくりが同時にある。


What ガンダム

 従来作品の多くでは、基本的に「高性能な試作機・ワンオフ機」の代名詞であった兵器としてのガンダムだが、今回の主役機「エアリアル」は、医療用技術「GUND」をベースとした兵器として扱われている。

GUND:
パーメットを利用した身体機能拡張技術。GUND技術を軍事転用したシステムは「GUNDフォーマット」と呼ばれ、これを搭載したモビルスーツは「GUND-ARM」と総称される。

公式サイトWORDSより引用

 ガンダム作品において、「ガンダム」が意味する概念や射程は、実は作品ごとに微妙に異なっており、それがどう説明されるかはファンにとって実は楽しみにしているところ※12 でもある。
 従来シリーズでも、「ガンダムおよびモビルスーツ周辺技術がどのような技術分野をもとにしているか/活かされているか」の描写が全くなかったわけではない※13 が、明確に、かつ大々的に「医療技術」としたのはこれまで類がない※14 といえる。
 これは、ガンダムという人型兵器の必要性(リアリティ)の醸成に一役かっているとともに、ただ戦うだけではないロボットの魅力※15 を効果的に訴えることの一助となっている。

※12 アナザーガンダムシリーズで顕著であり、例えば『機動戦士ガンダムSEED』でのガンダムはOS起動時の画面表記に由来している。
※13 こちらも例をあげると、『機動戦士ガンダムSEED』では主人公はカレッジで工学系のゼミに所属しているため、わずかだがモビルスーツではないロボット技術の描写がある。また『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』でもロボットアームの平和利用を考える研究者が登場する。
※14 最初から主人公機であるエアリアルがガンビットと呼ばれる遠隔操作兵器を使っているのも大きなポイントである。従来は敵の重要機体やラスボス機、主役機でもかなり高性能機のみにその搭載が限定されていた遠隔操作兵器(ガンダム作品においてはビットやファンネル、ドラグーンなどと呼称される、現代でいうとドローンのようなもの)だが、『水星の魔女』では第1話から惜しみなく活躍しており、観ていて痛快であった。例えるなら、MCUの映画『キャプテン・マーベル』のラストシーンのようなものである。
※15 作中でエアリアルは、プロモーションビデオの素材になるなど、「戦いの道具としてのガンダム」以外の魅力を部分的に発揮している。過去作でも、例えば『∀ガンダム』では、主人公機の∀ガンダムが牛を胸部のミサイルコンテナに入れて運んだり、手を伸ばして橋代わりになったりと、「デカいロボットが牧歌的かつ日常的に存在する」という良さが描写されている。ロボットって戦うだけが魅力じゃないんですよね。


Why 動機

 従来のガンダム作品では、冒頭に書いたとおり人類や地球の未来をめぐったパワーゲームが繰り広げられる・主人公はそれに巻き込まれることが多い。Season 1 放映時点では正直なんともいえないところがあるが、おそらく『水星の魔女』も同様の流れを踏襲するだろう。

 ただし『水星の魔女』がこの観点で異なると思われるのは、主人公の主体性である。多くのガンダム作品において主人公は、何かの争いを契機としつつも、作中で戦う意義(大義)を発見し、徐々に主体性を獲得して物語に介入していくケースが多い※16
 一方、本作の主人公、スレッタのモチベーションは「楽しい学校生活・将来水星に学校を作る夢・ミオリネへの好意」の3つを柱としている。他のガンダム作品の主人公に比べて共感しやすく、内向的ながらも正直者・主体的な言動もあいまって、視聴者としては非常に応援したくなる。
 この主体性が、今後のパワーゲームの中で今後どのように変化していくかは、非常に気がかりなポイントである。特に、母親であるプロスペラからのマインドコントロールをにおわせる描写があるゆえに、このスレッタの動機や人格には、視聴者はいやでも注目せざるをえない。

※16 宇宙世紀シリーズ・アナザーガンダムシリーズの両方において、多くの民間人の主人公は、戦うことや人をあやめることに忌避反応をしめす。そのため、『水星の魔女』のSeason 1 最終話におけるスレッタの行動は、ガンダムファンからみてもかなりセンセーショナルなものとして受け取られただろう。ちなみに、職業軍人ではないにも関わらず、物語の冒頭から強い戦闘意志がある・人をあやめることに躊躇がない主人公が登場する作品としては、『新機動戦記ガンダムW』『機動戦士ガンダム00』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(いずれもアナザーガンダムシリーズ)などがある。これらの作品においては、殺伐とした幼少期を過ごしたがゆえに、そのような性格となっている。


How 争い

 従来のガンダムシリーズは、基本的には戦争や局所的な武力行為を解決の手段※17 としてる。
 本作の場合も、Season 1 時点では断言できかねるが、後半の展開をみるに類似したものになる可能性が高そうである。
 それでも本作が特徴的なのは、「学園もの」というフォーマットに導入された「決闘」というシステムである。

決闘:
モビルスーツを用いて行われる、学生同士の私闘。当事者は金銭、栄誉などお互いに望むものを懸けて戦う。相手モビルスーツのブレードアンテナを折った者が勝者となる。

公式サイトWORDSより引用

 初見だと、なんじゃこれは、という感じがある。しかし、ヤンキー漫画における「タイマン」の概念や、「学園もの」でいえば『少女革命ウテナ』※18 における決闘など、一部の界隈・ファンにとっては非常に親しみ深い設定である(と思う)。
 ガンダムシリーズとしてまったく前例がないわけではない※19 が、このように「学園もの」というフォーマットで、しかも戦争や武力衝突が発生する世界観と両立して導入されたのは、おそらくはじめてであろう。
 この設定は、ストーリー展開をスピーディーにする効果をうむとともに、部分的には死人が出ることのない※20 安心感も視聴者に提供している。

※17 宇宙世紀シリーズ、アナザーガンダムシリーズにおいては多くの作品見られる特徴。もちろん、ガンダムビルドシリーズなど、例外は存在する。
※18 本作のシリーズ構成・脚本である大河内一楼氏は『少女革命ウテナ』の小説が小説家としてのデビュー作とのこと。『水星の魔女』の第1話は、おそらく意図的に『少女革命ウテナ』アニメ第1話を踏襲したつくりになっている。
※19 
例えばアナザーガンダムシリーズの『機動武闘伝Gガンダム』では、ガンダム同士が各国家を代表して1対1の武闘大会をおこない、勝った国が国家間の主導権をえられるという設定。また、ガンダムの模型(ガンプラ)によるeスポーツ「ガンプラバトル」がお話の軸となる『ガンダムビルドファイターズ』では、いわゆる「ホビーアニメ」のようにガンプラでの勝敗によって揉め事を解決していく(『水星の魔女』の戦闘描写は、かなりの部分でこの『ガンダムビルドファイターズ』や他のガンダムビルドシリーズを彷彿とさせるのだが、割愛)。もっと拡大解釈していうのであれば、初代『機動戦士ガンダム』の頃から、1対1の決闘めいたシーンというのは沢山ある(例えば、ガンダムとグフの戦闘などは、時代劇における1対1の殺陣を想起させる)。
※20 ビームの出力などが制限されていると思われる描写が多くある(それでも結構危ないシーンがあるので、実際にあったら事故が多発するとは思いますが)。これによって、作中の決闘外の死者が本当にいたましく感じる。


『水星の魔女』がひらく地平

 これまで見てきたとおり※21、『水星の魔女』は「新しくて」、「新しくない」ガンダム作品である。
 Season 2 が今後どのように展開していき、最終的な作品の評価がどうなるかは神のみぞ知るところではあるが、少なくともSeason 1 の時点で多くのことをやってのけた。スレッタ出生の謎やゴア描写などを除いても、非常に魅力的で「新規性」の高いガンダム作品※22 である。
 その魅力から、これまでの作品に比べて間口の広い作品となっており、新規ファンを取り込むことに成功し、そして従来のガンダムファンをないがしろにするわけでもない※23

 「新しさがなければ新規ファンが入ってこず、新しいことをしすぎると従来のファンは離れる」というのは長期シリーズの宿命だが、今作はそのバランスを上手くとっている好例とすら個人的には思っている。
 この作品が多くに人の目にとまることを、いちガンダムファンとして願ってやまない。また同時に、このnoteがあなたの視聴のおともになれば幸いである。

(文:イツキ) 

※21 合計文字数が8,000字を超えてしまった。
※22 なお、まだまだ語りきれてないところは多い。仮面キャラはガンダムシリーズライバルキャラのお約束だけど本作では母親だとか、作品の根幹にある家父長制とその打破の仕方のえがき方や、モチーフとなっている「魔女」「呪い」の扱い(「ガンド」とは北欧とかだと魔術を意味するらしい)とか、従来作品や同時代作品と比べたときのジェンダー描写の特徴と限界、デリングの「これはガンダムだ、私がそう決めた」の発言は保守的ファンの態度を揶揄しているのでは?とか、新商品A(仮)の時点で予約しないとプラモが手に入らない、そしてグエルの貴種漂流譚の話とか、ヤマザキのエアリアル美味しいとかとか。というか当初は、作家論的に『∀ガンダム』の「23話 テテスの遺言」内のロランの台詞「お前な、自意識持てよ!」からはじまる大河内一楼氏の作風と変遷をまとめたかった。が、色々本作のインタビューを読むうちに、この作品の造詣を1つの作家論で捉えることはあまり理がないと考え断念した。。
※23 例えば『水星の魔女』本編の前日譚として事前配信されたPROLOGUEは、ある意味「従来のガンダムに期待されることようなことはちゃんと踏襲していくんで安心してね」というメッセージにもうけとれた。初見で『水星の魔女』本編1話をみるのと、PROLOGUEをみるのとでは、ファンの期待も大きく違うだろう。

追伸

おまけとして、ちょっとしたクイズを置いておきます。

Q. 『水星の魔女』に登場するスレッタの母親「プロスペラ」や主人公機の「エアリアル」の名前は、シェイクスピアの作品『テンペスト』の主人公である魔術師「プロスペロー」とそれに仕える空気の妖精「エアリアル」に基づいているのでは? と界隈で噂されています。さて、『テンペスト』では、プロスペローとエアリアルは最期にどうなるでしょうか?




答えはこちら↓








A. 『テンペスト』のラストで、プロスペローは魔術を捨て、エアリアルを解放し自由の身とします。この結末を『水星の魔女』が果たして踏襲するのか。踏襲するとしたら、この場合の「魔術」とは何か。踏襲しないとしたら、スレッタとミオリネはどうなるのか。非常に興味がそそられます。ぜひ一緒に、結末を見届けましょう。

参考文献: シェイクスピア著、松岡和子訳『テンペスト』 筑摩書房、2000 年


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