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「やる気」はどこから来るのか

はじめに:みんなが悩むこと


「宿題をやりなさい!」「もっと頑張れよ!」

子育て中のご家庭でも、そして学校でも職場でもありとあらゆる場面で、こんな言葉を何度放ったことでしょう。

でも、言えば言うほど空しくなる...そんな経験、ありませんか?

「やる気スイッチ」という言葉をよく耳にします。確かに、子どもたちは好きなこと、マイクラみたいなものには目を輝かせて取り組むのに、勉強となると途端にやる気をなくしてしまう。

その差は何なのかぁー。

どうすれば子ども・部下たちのやる気を引き出せるのか、と悩んでしまうものです。

実は、この「やる気」については、心理学の分野で100年以上も研究が重ねられてきました。

最近の研究からは、私たちが思い込んでいた「常識」が必ずしも正しくないことも分かってきています。私もこのテーマにめちゃめちゃ関心があるので前にも何度か扱ったことがあります。

【参考】

たとえば、「ご褒美を約束すれば頑張る」「競争させれば伸びる」「ほめれば伸びる」などなど。本当?その根拠は?

今回は、ちょっと前に読んだこの本をもう一度読み返して「やる気」について考えてみます。めちゃくちゃいい本なのでぜひ手に取ってみてください。

そもそも「やる気」とは

ちょっと逆説的な話から入りましょう。

ありますよね、「あ〜、彼(彼女)はやる気がないんだ」って思っちゃうこと。(僕はめちゃくちゃあります)

意外かもしれませんが、「やる気がない子」というのは、実は誤解かもしれません。

モチベーション研究100年の歴史を辿ると、

  • モチベーション1.0:生存のための基本的な動機づけ

  • モチベーション2.0:報酬と罰による動機づけ

  • モチベーション3.0:学び、創造、成長への内発的動機づけ

のように理論がどんどんと精緻化されてきました。そして多様なモデルがあるのですが、わかったこと、それは・・・

人間には生まれながらにして学びと成長への動機づけがある

モチベーションは複雑で、「やる気ブーストボタン」みたいな単純な「ハウ・ツー」は存在しない

たとえば、授業中はぼーっとしているある生徒。でも、休み時間になると友だちとサッカーに熱中し、家では何時間もゲームの攻略動画を研究している・・・

大人でも同じです。あるプロジェクトにアサインされたAさん。めちゃつまらなそうに稟議書書いているのに、クリエイティヴな発想を要求される企画書を書いている時はイキイキと参加してくる・・・

というように、子ども大人でも、場面によって全く違う顔を見せることありますよね?

実は、やる気には「領域」があります。勉強、スポーツ、趣味、友だち付き合いなど、それぞれの分野で、やる気の強さは違って当たり前なんです。

さらに、同じ勉強でも、先生が変わるだけで突然やる気を出す子もいます。「あの先生の授業は楽しい!」という経験、誰にでもありますよね。つまり、やる気は環境によっても大きく変わるものなんです。

領域と環境、やる気はなにもうちから沸き起こる力だけではなく、その環境ににも左右されるものなんです。

このように、やる気は「その子の性格」という単純なものではありません。むしろ、様々な要因が絡み合って生まれる、とても複雑な現象なのです。

冒頭で話した「やる気がない」というのは、実は学習された無気力感と呼ばれるものだったりします。人間は生まれた時から好奇心の塊でいろいろなもの・ことに興味をしめします。しかし、つまらない、乗らないというのを繰り返しているうちに、「やってもつまらん」というのを学習しちゃうんですね。

「達成=成功」という思い込みへの疑問

この本のクライマックスとも呼べるポイントがありまして、それはこれまで成功のための重要な要素と考えられていたモチベーションをあえて別の視点からみたことなんです。

達成(パフォーマンス)=能力×モチベーション

モチベーションには「成功する」ためのものだけではなく、「居る意欲」という要素もあると提案しているんですね。鹿毛先生は

  • 「得る意欲」(能力・資格等の獲得)

  • 「成る意欲」(理想の自己への変化)

  • 「居る意欲」(現状に誠実に向き合う)

という3つの種類の視点から「意欲」分析し、特に今の時代ではdoing よりもbeingの方が重要なのではないかと提起しているのです。

どういうことかというと、「得る」「成る」ではなく、「在る」ことに焦点を当てたモチベーションです。

具体例で言うと、学校だったら、毎日きちんと登校し、授業に参加するとか、家庭だったら、決まった時間に起きて、身支度を整えるとか、そんな生活習慣ですね。

大人だったら、同僚との約束を守り、期限を意識して仕事をするとか、職場の整理整頓を心がける、みたいなことですかね。

では、なぜに「居る」意欲に価値があるのでしょうか。それは、誠実に生きる・在ることができるようになると、日常生活の土台がしっかりし、長期的な成長の基盤になるからだそうです。そして、それが人としての誠実さを育み、結果として、より大きな達成にもつながるのだそう。つまり、ガリガリ上昇するのではなく、コツコツと持続可能に成長するのが重要ってことですね。

じゃ、私たち大人ができることって何でしょうか。

まず大切なのは、「環境づくり」です。たとえば、机の上が散らかっていると勉強する気が起きないように、子どもたちの意欲は環境の影響を受けます。ただし、これは単に物理的な環境だけでなく、心理的な環境も重要です。

特に効果的なのは、以下の3つのポイントです:

  1. 「できる」という実感を積み重ねる

  2. 選択の機会を与える

  3. 安心できる関係性を築く


居る意欲は、「成功」という華々しい達成とは異なる形で子どもの成長を支える、もうひとつの大切なモチベーションといえます。地道だからこそ、それを認め、支える大人の役割が重要になってきます。

これは現代の「受験」やSNSでパパ・ママ界隈に蔓延する「キラキラ成功」への警鐘なのではと思ってしまうのは私だけでしょうか。


「在る」意欲、これって自分を認めるようになるとても大切なポイントですね。

まとめ


「やる気」は、私たちが考えているより、ずっと奥深いものです。

目に見える成果や達成だけでなく、日々の小さな努力や誠実な取り組みにも、「やる気」が隠れています。

だから「結果」だけではなく「努力」をみてあげることが大切なんですね。
(努力=>過程・プロセスとか)

さらには、子どもの多面性を理解し、安心できる環境をつくるってのも重要みたいです。

重要なのは、「できて当たり前」と思わないこと。

自警の意をこめて、子どもや同僚・部下の小さな努力を認める、地道な取り組みを支える環境をつくるのが大切なんですんね。

明日からがんばろ・・・は!、もう日付変更線変わっている

【興味のある人向け】
最新のモチベーション研究 脳科学サイドから


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