ヤノベケンジさんの巨大作品が観たい! 京都・大阪・兵庫で作品世界を体感できる場所 7カ所。
日本の現代アーティストのヤノベケンジさん。1990年代から、「サバイバル」をテーマにした大規模な機械彫刻のシリーズを発表し、現在は京都造形芸術大学教授で、同大学内のウルトラファクトリーのディレクターを務めています。
近畿地方には、そのヤノベケンジさんが制作した数多くの作品が常設で設置されているんです。その作品は、一見かわいらしかったりユーモラスでありながら、さまざまなメッセージや物語、祈りが込められています。
この記事では、京都・大阪・兵庫でヤノベケンジさんの作品が見られる場所をめぐり、その写真と解説、地図をあわせてまとめました。近畿の街を歩きながら、ヤノベケンジさんの芸術世界を体感してみませんか?
大阪
▍大阪中之島美術館 《SHIP'S CAT (Muse)》、 《ジャイアント・トらやん》
2022年に大阪市都心の中之島エリアにオープンした「大阪中之島美術館」。黒い直方体の外観が特徴的なこちらの美術館には、2つの作品が設置されています。
《SHIP'S CAT (Muse)》
無料で誰でも見られる屋外の芝生広場に設置された高さ3.5Mのオブジェです。芝生の緑色と、赤いスーツのコントラストが映えますね。
大航海時代にネズミや貨物から船を守る「旅の守り神」として世界中を旅してきた猫をモチーフとした「SHIP'S CAT」のシリーズ。こちらでは、ロシアのエルミタージュ美術館で、ネズミから美術品を守る警備員として飼われている猫にもなぞらえ、「MUSEUM CAT」の役割も持たせているそう。
巨大な白猫はの姿が愛らしいだけでなく、屋外で刻々と変化する自然の光によって見え方の変化する大きな瞳、なめらかに加工された金属の手袋や係留柱にも周囲の風景が映り込み、美しい作品です。
《ジャイアント・トらやん》
もう1点は美術館の中、4Fと5Fの吹き抜け空間にある、全長7.2Mのロボット型の巨大彫刻作品。
巨大ながらも、あどけない、こどものような雰囲気も持ち合わせるこちらのロボットのモデルとなっているのは、ヤノベケンジさんのお父様の腹話術人形を、ちょびヒゲ、バーコード頭、アトムスーツを着たキャラクターにした「トらやん」です。
首や腰を回し、腕を振って踊ったり歌ったりしながら火を噴く作品で、これまでにイベント等で美術館も含む場所で火を噴くパフォーマンスを行ってきていました。お腹にはトらやんも乗っているのがユーモラスですね。
子どもを守るロボット守護神は、美術館も守る守護神にもなるのでしょう。
▍南茨木駅 《サン・チャイルド》
《太陽の塔》のある、大阪モノレール「万博記念公園駅」の隣駅で、阪急南茨城駅の南側ロータリーに立つのが《サン・チャイルド》。高さは6.2M。
東日本大震災の復興・再生の願いを込めた希望のモニュメントで、右手には希望を象徴する「小さな太陽」、左手にはヘルメットを抱えています。放射能防護服を着ていますが、そこで表現しているのは、ヘルメットを脱ぎ、放射能の心配の無い世界を取り戻した未来の姿。
茨木市は、ヤノベケンジさんが小・中・高校時代を過ごした町。ちかくにあった大阪万博の跡地で幼い頃に遊び、「未来の廃墟」のように感じた感覚は、その後の作品にも影響しているそうです。
▍(番外編) MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)※ 毎年数日間の公開
こちらは常時公開はされていませんが、約1,000㎡の工場・倉庫跡に、国際的に活躍する現代美術作家の大型作品を保管しており、年に数日間ですが、ヤノベケンジさんをはじめ、宇治野宗輝さん、金氏徹平さん、名和晃平さんらの巨大な作品を見ることが出来る場所です。
ジャイアント・トらやんは2022年に中之島美術館に移設されるまでの間は、こちらのシンボル的な作品となっており、作品直前の2021年の11月には、ここで火を噴くパフォーマンスも開催されました。
ヤノベケンジさんの作品以外にも、宇治野宗輝さん、金氏徹平さん、名和晃平さんらの巨大作品を一度に観られる場所です。
京都
▍WeBase京都 《Picture scroll of SHIP’S CAT》、 《SHIP’S CAT(Totem)》
「WeBase京都」は、京都府京都市中京区にあるバックパッカー向けのホステル。こちらに展示されているのが、ヤノベケンジさんと和紙作家の堀木エリ子さんによる作品です。
2018年に日仏友好160周年を記念してパリでおこなわれた「ジャポニスム2018」に向けて制作された4作品のうち、約3mの巨大彫刻《SHIP’S CAT Totem 》と巨大絵巻障子《Picture scroll of SHIP’S CAT》の2作品がこちらに恒久設置されました。
宿泊者用のラウンジに展示されていますが、外からも見ることができました。和紙を通じた柔らかい光が美しいです。
▍ホテル アンテルーム 京都 ヤノベケンジルーム
京都駅から徒歩15分ほどの場所にある「アンテルーム 京都」。エントランスにギャラリーがあり、館内の各所にアート作品が設置された「アート&カルチャー」をコンセプトとしたホテルです。
この中には、名和晃平さんや蜷川実花さんといったアーティストが手掛けるコンセプトルームが9部屋あり、この中にヤノベケンジさんルームも。
こちらは、その部屋に宿泊しないと観ることができませんが、室内には、ホテルの客室によく見られる洋服用のフックや引出しの取手を大きくした作品が。添えられた絵画を見ると、これは、ヤノベさんの作品の巨大な少女《サン・シスター》のための家具だと分かります。曲線が美しい金属の作品と、物語の世界の両方をゆったり楽しめる部屋です。
▍茶山・京都芸術大学駅 《SHIP'S CAT (Tower)》
こちらはわたしは未訪問ですが、2023年4月1日に駅に設置されたそうです。こちらにはプラットフォームギャラリーも設置され、京都芸術大学の学生さんや関わりのあるアーティストさんの作品も展示されているようです。
また、こちらは2023/04/09までの展示だったようですが、茶山・京都芸術大学駅から徒歩10分ほどの場所にある京都芸術大学の正門にも作品が展示されていたようです。ヤノベケンジさんが教鞭をとっていらっしゃる大学なので、今後もまた観られる機会があるかもしれませんね。
兵庫
▍兵庫県立美術館 《サン・シスター》
最後は兵庫県。神戸にある安藤忠雄建築の美術館、兵庫県立美術館の入り口に立つのは、高さ約6Mの少女のオブジェ《サン・シスター》です。
1995年の阪神淡路大震災のモニュメントとして構想され、20年目の節目にあたる2015年に制作された作品で災害による苦難の日々を過ごしてきた人々の過去を想い、乗り越えてきた現在、希望溢れる未来を見守り続ける存在になるよう願いが込められているそう。
《サン・チャイルド》のお姉さんのような存在をイメージして制作され、手には「輝く太陽」を持ち、海の方を見てしっかりと立っています。
まとめ
京都・大阪・兵庫でヤノベケンジさんの作品が見られる場所を、作品の写真と解説をあわせてまとめました。大きさにインパクトがあり、一見かわいらしいオブジェの作品にも、さまざまな願いが込められていることが分かりました。近くを訪問される際には、ぜひこちらにも立ち寄ってみてください。
▼2023年に大阪で開催された「ヤノベケンジ SHIP'S CAT展」の様子はコチラ
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