清少納言を求めて、フィンランドから京都へ
"セイ、機内からだけど、これからよろしく。今、私はシベリアあたりの上空にいて平安京へ向かう途中。そう、平安京へ、京都へ、千年前のあなたの町へ。"2013年発刊の本書は、著者デビュー作にして、清少納言に魅せられたフィンランド女性による時を超えたノンフィクション、自伝紀行文学傑作。
個人的には、最近まわりにフィンランド文化にはまっている人が増えてきた事を縁に本書を手にとってみました。
さて、そんな本書は編集者としての繰り返しの人生に飽きてしまっていた30後半の中年女性の著者が、大学の日本文学講座で知った清少納言『枕草子』に【描かれているのは驚くほど身近で、自分に話しかけられているようなホットな話題】【ジャンルとしての『随筆』には個人を話題にしていたり、断片的だったりするところにブログのルーツか何かを感じる】と、すっかりハマり。長期休暇制度を使って、親近感を感じる清少納言を研究しに日本、京都を訪れた日々が【等身大で飾らないドキュメンタリー】として描かれているのですが。
結論から先に言えば、とても面白かった!旅人としてのフィンランド人女性自らの視線を通して皮肉やユーモアを交えて語られる【京都、日本文化の不思議さ】また、中年女性としての失敗も隠さず綴られている所からは国に関係なく【人生を新たに始める勇気】をそれぞれ刺激的に受け取る事ができた他。
何より!専門家から座学として【関連資料を安易に借りたりせず】自ら清少納言の姿を求めて京都で縁のある場所や図書館資料を探しに足繁く訪れるのはもちろん、ロンドンの大英図書館まで足を運び(!)本書で披露されている【清少納言及び平安時代に対する考察】は、読み手としての私自身の無知さを大きく差し引いても【唸らされる深さ】で。とても勉強になる内容でした。
また、清少納言に『自立した女性』の姿を感じた著者が、紫式部(ムラサキ)は当然に、ヴァージニア・ウルフと比較したりと、フェミニズム的な捉え方も含め、清少納言作品だけではなく【広く文学、文化全般について語っている】のも良かったです。
清少納言や日本文学、平安時代に興味がある方はもちろん。京都でインバウンドに関わる方々、また新しい人生チャレンジを始めようとしている方にもオススメです。