新卒から7年過ごした会社、退職するって決めた
ひとりでは階段を登れない大きなスーツケースを抱えて、東京へ研修に向かった日から、もうすぐ7年が経つ。同期は半分よりもっと少なくなった。長くいたつもりはなかったけど、小学生が入学して、卒業するだけの年月が経っていた。
退職することに決めた。転職することにした。
今の会社が嫌いになったわけではない。ベンチャー気質で、本気で社会を変えていこうとする、ビジョナリーな風土があった。浪漫と算盤を両立するために、優しくも熱意に溢れていて、尊敬できる人がたくさんいた。こうあるべきに囚われず、顧客にとってなにが最善なのかを議論し合える環境だった。
3年目で新規立ち上げを任せてもらった。社歴が自分より浅い方がほとんどになり、重い案件を請け負ったり、育成を任せてもらうことが増えていった。息をつく間もない日々だったけど、同僚とはよく笑った。青春だった。
対人支援という仕事で、人と向き合うことは、社会も人生も何も知らない新卒の私には、重く、どうしたら良いか分からなかった。人の奥底に触れさせてもらうことで、自分の感情も消耗し、この仕事が向いていないのかとよく悩んだ。
生きるのが苦しい気持ちを聞かせてもらうことが、幾度もあった。聞くことだけしかできなかった。無力さの中で、それでも生きていてほしいと願った。
一見無理だと言われるような、本人の希望が成し遂げられることがあった。その可能性を信じ続けるのは、諦めそうになることであり、同時に希望に満ちたことだった。泣きそうになるほど嬉しい瞬間に、何度も立ち会わせてもらった。
死にたい人が生きていてもいいかなと思える、長い時間をかけたゆるやかな変容の隣にいることもあった。何もできないかもしれないけど、支え棒があるのとないのとでは、少しは違うんじゃないか、そうありたいと思った。
運良く仕事を好きだと思えて、仕事で関わる人たちを長く支えていきたいと思う一方で、新しい世界を見てみたいという願望がずっとあった。
変わらない安心と安定を捨てるのは怖かった。
でも、変えなかったことを後悔する未来のほうがいやだった。不安は溢れるほどあっても迷いはなくて、心の奥の気持ちは最初から決まっていた。
不安定なのに自我が強い、手のかかる私を、のびのびと育ててもらったこと、信じて任せてもらえたこと、感謝している。
もっと力をつけて、人に寄り添い続けられる強さと優しさを持って、これから関わる方に、また返していく。
自分のこと、まだまだよりよく変わっていくって信じてるから。飛び立ちます。
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