無題
確実に秋はそこまで来ている。
日が落ちると風が冷たいのが居心地が良いので、ずっとこの感じが続けばいいなと思う。肌寒いくらいのときにするお喋りは自然とポエミィになりがちではあるものの、古い自転車のブレーキ音とかスケボー少年たちのガタガタいう音とかがそうはさせまいとしてくるのが都会の強さかも知れない。
都会的なところより、中途半端な自然の中のほうが私としては絶妙に落ち着いているが、世の中から隠れているつもりのアヴェックがあちらこちらに座るベンチと、季節外れの蚊が必死になって首筋やら足の甲やらを突き刺すのが少々不愉快。
腰かけた階段の上を見上げると長い蔓の植物が絡まって輪っかになっていて、どこかヨーロッパのまじないみたいに思える。あまり知られていない狭いコミュニティのある村か集落のまじない。
ほんとうに日が沈んだ後、「あなたの思う「美」と僕の感じる「美」は西洋的とか東洋的とか、女性的だとか男性的だとか、あれこれ議論したとしても、きっとどこかで惹かれ合うし、とはいえ極限では全く違うところにいるかもしれないね。」とその人は言った。