短編小説🍑桃太郎🍑第5話(最終話)「大団円」
(1)
しばらくすると、孫悟空が帰ってきた。
「住民を見つけたよ。一泊できるかどうか聞いてみたら、何日でも泊まっていいと言われた。みんないっしょに行こう!桃太郎、気分はどうだい?具合はよくなったかい?」
「まあまあだな。まだ少し気分がよくない」
「そっかあ。じゃあ、俺が背負ってやるよ」
(2)
住民の家に3人が到着すると、主人が出てきた。オカッパのような髪型に、お腹には「金」という文字が書かれた腹巻きをしている。
孫悟空におんぶされていた桃太郎だったが、「金」の文字を見た瞬間、ときめいてしまった。そして、主人に言った。
「あなたは、伝説の武術の達人、キム・タロウ様ではありませんか?」
主人は黙ってうなずいた。
(3)
「いかにも、私はキム・タロウ。漢字で書くと、"金太郎"。私のことを、この佐渡の地のゴールドで巨万の富を築いたから、金太郎なんだろうと思っている輩がおるが、それは違う。生まれたときから、おとなのような金玉をもっていたからじゃ!」
桃太郎は一瞬ひるんだ。な、なんの告白なのだろう?
キム・タロウ氏は武術だけに精通しているわけでない。人を惑わす会話術にも長けていると、尊敬の念を新たにした。
しかし、我に返って、金太郎氏に尋ねた。
「私は鬼と対峙するために、この島にやって来ました。鬼はどこにいるのでしょうか?」
金太郎は、その言葉を聞くと、ニッコリと笑ってこう言った。
「鬼というものは、われわれ人間の心の中に棲息するものです。実際に、存在するものではないのですよ。実物としては存在しない。鬼と良心との戦いの場は、私たちの心の中なのだ」
桃太郎は唖然としてしまった。
「そういうことたったのか!鬼は我が心の中にあり」ということか...
(4)
桃太郎、孫悟空、そしてポチも、およそ3ヶ月間、鬼ヶ島で、哲学談義に花を咲かせた。あとは、それぞれの地に戻り、修行に励むのみだ。キム・タロウ氏と熱い抱擁を交わしたあと、桃太郎一行は帰途についた。
その途中、桃太郎は孫悟空と別れた。連絡先の住所はキチンと控えておいた。
お互いに会いたいときには、「飛脚」する約束を交わしておいた。いつかお互いの修行の成果を伝えることを固く誓いながら...
(5)
ああ、馴染んだ、懐かしい我が家が見えてきた。
「ただいま❕」
しばらくすると、見知らぬ男の子👦と女の子👧が出てきた。
「まあ、桃太郎じゃないかあ!!」
桃太郎が遠征している間、ずっと若返りの🍑桃を食べ続けた両親は、桃太郎より、はるか年下になっていた。
「本当の強さってなんだろう?」
と桃太郎は一人つぶやいた。