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読書 | 井上靖「楼蘭」
井上靖「楼蘭」(新潮文庫)。この文庫本には、井上靖の歴史短編小説が12編収められています。
この前、この本に含まれている「補陀落渡海記」の感想文を書きました。今回は表題作の「楼蘭」について書きます。
⚠️以下には、「楼蘭」のあらすじが含まれます。まだ読んいない方はご注意ください。
#楼蘭あらすじ
「楼蘭」という物語には、たくさんの人名が出てきますが、私が読んだところ、主人公らしい主人公はいません。「主人公は?」と問われたら、「楼蘭」という国自体、あるいは「ロブ湖」と私なら答えます。
物語は、紀元前130~120頃の古代から20世紀にヘディンが西域を探検する頃の近現代までに及びます。
楼蘭という国は、読み終わったあとに調べたところ、どうやら架空の国のようですが、漢の張騫や武帝、匈奴、大月氏など実在した人物や国が登場します。
漢は匈奴に横暴に悩まされており、張騫を派遣して、大月氏と同盟を結ぼうとしましたがうまくいきません。しかし、その代わりに、その二国間に位置するロブ湖畔にある楼蘭という国を発見して、匈奴に対抗するために、漢の軍隊を楼蘭に駐留させることにしました。
楼蘭は自国を守るために、匈奴の側に従ったり、漢の側に従ったりする外交努力をしていましたが、漢の怒りを買い、楼蘭という国を捨てて、別の場所に国を移すことを余儀なくされました。
楼蘭人はいつか祖国・楼蘭に戻ることを夢見ていましたが、楼蘭の姫が自殺するという悲劇も経験しました。しかし、長い時が過ぎるにつれて、楼蘭に戻ることの意義さえ、忘れられるようになりました。以後、歴史から楼蘭自体も消えました。
楼蘭の存在が再び呼び起こされたのは、二千年近く経ったときでした。探検家・ヘディンが西域を探検したときになってようやく、楼蘭の姫の遺体が発見されました。
はるかそれ以前にも、元・楼蘭人の子孫が楼蘭を探し求めたことはありましたが、他国の支配下にあり自由に立ち入ることができませんでした。それに加えて、ヘディンたちの推測によれば、ランドマーク的な「ロブ湖」という湖は、1500年周期で移動する湖だったことも、楼蘭の発見が遅れた一因でした。
#短い感想文
以上が新潮文庫で約60ページの長さの「楼蘭」という小説のあらすじです。
楼蘭という国は架空の国ではありますが、実際に楼蘭のような国はあったのかもしれません。
何が主題なのか、というのはわかりませんが、私は「無常観」のようなものかな、と思いました。
楼蘭を脅かした匈奴も、漢も、滅んでいます。誰も記憶する者はいない。楼蘭の姫は、楼蘭人に発見されることがなかった。発見されたのは二千年も後のこと。
領土を拡張しようとする国家理性の愚かさのようなものを感じました。
Geminiによるあらすじの英訳
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承知いたしました。以下に、提示いただいた文章の英訳を提案します。
提案訳
Loulan was rediscovered after nearly two millennia. It was not until the explorer Sven Hedin conducted his expedition in the Western Regions that the remains of a Loulan princess were found.
Long before that, descendants of the Loulan people had sought their ancestral homeland, but they were unable to freely enter the region due to foreign rule. Additionally, according to Hedin's hypothesis, the landmark "Lop Nur" lake was a migratory lake with a 1,500-year cycle, which also delayed the discovery of Loulan.
訳出のポイント
「楼蘭の存在が再び呼び起こされた」: "Loulan was rediscovered" とシンプルに表現しました。
「二千年近く経ったとき」: "after nearly two millennia" と、より具体的な表現に置き換えました。
「探検家・ヘディン」: "the explorer Sven Hedin" と、人名を具体的に示しました。
「楼蘭の姫の遺体」: "the remains of a Loulan princess" と、より丁寧な表現にしました。
「元・楼蘭人の子孫」: "descendants of the Loulan people" と、シンプルに表現しました。
「他国の支配下にあり」: "due to foreign rule" と、簡潔にまとめました。
「ランドマーク的な「ロブ湖」という湖」: "the landmark "Lop Nur" lake" と、湖の名前を具体的に示しました。
「1500年周期で移動する湖だったことも」: "was a migratory lake with a 1,500-year cycle" と、より自然な英語の表現に置き換えました。
補足「楼蘭」は英語では "Loulan" と表記されます。
「西域」は、文脈に合わせて "Western Regions" や "Western Territories" など、様々な訳語が考えられます。
「ロブ湖」は "Lop Nur" と表記されます。
この訳は、元の日本語のニュアンスをできるだけ忠実に再現するように心がけました。しかし、より自然な英語の表現に置き換えるために、若干の言い換えを行っている箇所もあります。
もし、この訳について何かご不明な点やご希望がございましたら、お気軽にお申し付けください。
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