読書感想詩 | 長田弘「読書からはじまる」(ちくま文庫)
言葉にならないという
言葉にすがりたくなくて
言葉から自由になりたくて
言葉から離れようとして
それでも
言葉にならないものに
言葉を与えたくなって
言葉にすがりつく
言葉から情報を得るためじゃなく
言葉から相手の心をつかもうとして
言葉で自分の心を表そうとして
やっぱり言葉じゃダメだと思いつつ
でも言葉以外に
選択肢などあろうはずはないと
あり合わせの言葉で今日も書きなぐる
見たことも感じたことも
結局 言葉の支配下にある
事務的な言葉ではなく
心の言葉ってなんだろうって
コールリッジの詩とか
フロストの詩とか
ホイットマンの草の葉とか
陶淵明の飲酒とか
茨木のり子を読んで
自分の感受性くらい
自分で表してみたくて
でも 出来ていなかった
どんな言葉を使っても
言葉って自分で
作り出したものじゃなく
みんなに共通する言葉以外に
自分を表す手段などなく
相手の言葉から
自分を作り上げるしかなく
また1冊の本を手にとった
読んでみたら
当たり前のことを
当たり前に書いてあるだけだが
僕の心にあっても
表すことが出来なかった
表そうとすらしなかったことが
みごとにそこに書かれていた
一部を切り取ろうとしても
切り取ることが出来ない
詩的な言葉で
雲のように流れてゆく
想念に形を与えておきたくて
書いて書いて書きなぐりつづけて
いっとき気分が晴れても
またすぐに心が曇ってしまうという
ドン・キホーテのような
毎日を繰り返し 繰り返し
無駄と思いつつ
無駄だと言い切れぬ
気持ちにすがりながら
また こんなに言葉を並べてる
言葉からサヨナラ出来れば
どんなに楽になれるだろうかと
思いつつ
虚無をかき集めれば
虚無も虚無でなくなると
軽く信じて 重く傷つきながら
今日も言葉を書きつらねている
継続は力なりって
本当なのかなぁ…
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします