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短編 | ロボットです

 仕事の途中で大雪が降りだした。今日は自宅に戻れそうにない。それにこんなに吹雪く日に窓の清掃などしてなんになろうか?
 しかも働いても働いても「使えない」「使えない」としか言われない。心などないはずなのに胸が痛い。私は広場にうずくまってしまった。

 雪はさらに激しく降り続いた。止む気配すらない。膝を抱えたまま目を閉じて、呆然と座っていることしかできなかった。

 どれくらい時間が経ったのだろう?いつの間にか眠っていたらしい。目を開けると、私の膝下に一匹の猫がいた。図体だけは人一倍大きいからな。

 猫と目が合った。ニャ~と声をあげた。猫語など分かろうはずもないのに、ねぎらいの言葉のように響いた。私は思わず、フフフと笑ってしまった。

「君は仕事などしていないのに、人間に愛されているよね。僕なんか人間のために動きまわってこのザマさ」


「あぁ、あいつ、あんなところで油を売っていやがったか。清掃用のロボットのクセに。明日、処分しようと思っていたんだがな。よかったな。最後の日に猫一匹の役に立てて…」


~おわり~


緒真坂さん(著)「ボブ・ディランとジョン・レノンでは世界は語れない」に収録されている「ロボットです」に触発されて短編を書いてみました。





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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします