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エッセイ | 外国語あれこれ


 否定文の作り方。

 日本語ならば文末を「~ではない」「~ではありません」。英語ならば「not」、ドイツ語ならば「nicht」、ロシア語ならば「не」を肯定文に付け加えればよい。

 けれども、フランス語の否定文は「ne~pas」という2語で動詞を挟む形になる。


#не


#ne_pas


 いくつかの言語をかじってみたが、フランス語のように、2語を必要とする否定文は特殊かな、と思う。

 フランス語と似ている言語(ロマンス諸語)であるイタリア語も調べてみたが、基本的に動詞の前に「non」を置けばよいらしい。

#non


 ここでちょっと考えてみる。

 否定文を作るとき、英語その他のように1語(英語ならnot)で済ませる言語と、フランス語のように2語を必要とする言語とではどちらが合理的か?、と。

 簡潔に1語で済ませたほうが「効率的だ」と主張できる。しかし、「not」や「~ではない」を聞き逃してしまったら、肯定文と勘違いするかもしれない。フランス語のように「ne」を聞き逃しても「pas」があったほうが、誤解が少ないという主張もできるだろう。
 
 「どちらがいいか?」ということを決定したいわけではなく、それぞれの言語にはそれぞれの合理性があるということである。


主語と動詞


 英語の現在形では、三単現のSを付ける以外は人称変化はない。
 だから、文を作るときには必ず「主語」を必要とする。

 しかし、ラテン語やロシア語では、人称によって動詞の形が決まっているから、しばしば主語が省略される。動詞の形を見れば、主語が何なのか分かるからだ。

 ところが、ドイツ語では人称によって動詞の形が決まっているのにもかかわらず、主語は省略できない。文は「主語と動詞」でガチッと固められる。

 日本語では人称変化がないが、主語はしばしば省略される。文脈から誰なのかわかれば、「彼」「彼女」「あなた」でさえ省略される。

 主語を言わなくても分かるならば、主語なんて付けないほうが合理的にも思える。しかし、ドイツ語のように「主語・動詞」を必ず必要とする言語では「誰が~をする」が明確化されるから誤解する余地はない。これもまた合理的であると言える。


 言語学ではどんな言語でも平等に扱う。かつてのインテリ(今もそういう人はいるかも)の中には、「英語のほうが日本語より論理的な言語である」みたいな主張をした人がいたけれど、浅はかだと思う。

 いろんな外国語をかじると、どの言語がヨリ論理的かなんて、言えなくなるものだ。くだんの主張をしたインテリは、英語と日本語しか知らない優等生タイプの阿呆だろう。


 しかし、である。

 言語学では、言語に美醜があるとは教えない。言語学には音声学という学問があるが、美醜を決めるためのものではない。

 けれども私は、フランス語の響きよりドイツ語の響きのほうが美しいと思ってしまう。韓国語なんか聞くに耐えない。
 英語を学び始めたときは、「英語ってカッコいい!」って思ったが、今はドイツ語(とくに女性の話すドイツ語)と日本語の響き(日本語も女性の話す響き)がいちばん美しいと思ってしまう。

 まだまだ修行が足りないのだろうか?


 サピア=ウォーフ仮説という「仮説」がある。
 簡単に言うと「人の思考や認識は、その人の母語によって影響される」という仮説だが、ある程度、成立するのかな、と思う。

 文化には、言語だけでなく様々要素が入り交じるものだが、私の感覚として、フランス語は絵画的であり、ドイツ語は音楽的である。
 フランスといえば、有名画家が何人も思い浮かぶが、ドイツだと思い浮かばない。
 ドイツ語圏内といえば、バッハ、モーツァルト、ベートーベンなど有名な音楽家が何人も思い浮かぶが、フランスだと思い浮かばない。



*個人的な見解です。


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