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短編小説 | マリー・アントワネットの手紙

ギロチンとは
死刑に処される者の苦痛を
最小限にとどめるために
開発されたと言われている


みんなが喜んでくれることをすることが何故そんなにいけないことなのか、私にはわからなかった。

「パンがなければケーキを食べればいい!」
私の言葉として伝わっているようだけど、これはルソーの「告白」の言葉。「ある婦人が…」と書いてあるだけで私が言ったとはどこにも書いていないんだけど、私が言ったことになっている。
まぁ、誤解されても仕方ないんだけどね。

私は偉大な母の娘としてこの世に生を受けました。母は偉大でも、私は勉強嫌いな女の子でした。天才なんかではなく、ただの凡人でした。
まぁ、でも宿命ってあるんですよね。

言葉の違うフランスへ嫁ぎ、夫の不能のおかげであらぬ噂話をされたりしましたが、ただ泣くことしかできなかった。

でも死ぬときくらいは美しく散ろうと決心していました。

断頭台へ登る朝、私は生理中でした。
死ぬときくらいきれいな下着を身に着けて、この世に悔いを残さぬように死にたかった。でも、それは許されなかった。

首を挟まれ、刃が落ちてくる前は恐怖心でいっぱいでした。
たいていの人は、死を迎える瞬間、声に出さずとも命乞いをするのでしょう。

私は命乞いをする代わりに、スパッと首を切り取られる決意を固めました。

声を発して、決意を皆に伝えることさえしませんでした。それが凡人である私が、最後の最後の瞬間に偉大な王妃になるチャンスだと考えたからです。

私は静かな心で、わずか数秒後に訪れる死の瞬間を生きました。

痛みを感じる暇もなく、自分の頭が地面に転がる音を聞きました。
どのくらいの長さだったか、記憶にはありませんが、首が落ちたあとも、ほんのわずかな間ですが、この世の音を聞き、自らの首のなくなった身体を見ることができました。

誰にも伝えることはできなかったから、今、異世界からこの文章を綴っています。

今年もジャガイモの花がきれいでしたね。これからも異界から地上の様子を見ながら、私がなき後の世の推移を見守っていこうと思っています。

ではまたね。
これからパリでオリンピックが始まりますね。
せめて開催中の期間だけでも、この世から争い事がなくなることを切望しております。


ではまた、いつか…



2024/07/22
マリー・アントワネット


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