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進歩がないなって心底思ったら、それは上達した証拠だよと思ってみよう。

 何事も、最初の一歩を踏み出すとき、大きな飛躍を実感しやすい。しかし、親しむ時間が長くなるにつれて、自分ってぜんぜん上達していないんじゃないか、と思う瞬間があらわれる。

 水に顔をつけることが出来なかったとき、初めて水に顔をつけることが出来たら、やれば出来るじゃないか、と自信を持つことが出来る。
 クロールを泳げるようになれば、そのうちバタフライや背泳ぎも泳げるようになり、大きな喜びを感じることが出来る。
 けれども、4種目を一通り泳げるようになってから数年経つと、記録が最初の時に比べると伸びていかない。

 最初に50mのクロールを泳いだ時は、タイムなんて気にならなかった。2分かかろうが3分かかろうが、「泳げた」という充足感がまさるから。
 1年経って、2分かかったいた50mのクロールが1分で泳げるようになる。しかし、同じ1年という時間を費やしても、次の年に30秒で泳げるわけではない。年月を重ねるこどにコンマ1秒を縮めることさえ難しくなる。やってもやっても記録が伸びないどころか、後退することだってある。

 水泳は記録がタイムという客観的な指標で計りやすいから、なおさら自分の記録の伸びが止まったように思えてしまう。スランプに陥っていると感じる。

 事実そうなのだけれども、スランプという状態は、初心者には味わうことが出来ない感覚である。換言すれば、表面上の記録の伸びが止まっても新たなステージに立つことが出来たという証左でもある。

 頑張って1つのことをつづけていると、自分の成長が感じられにくくなる。そうすると、これだけやってるのに全く進歩しないじゃないかって自暴自棄になりやすい。自分の努力を全否定して今までの努力を投げ捨ててしまいたくなることもある。

 そういう時は、スランプに陥ったと感じられた自分を少しだけ褒めてみよう。努力したからこそ辿り着けた境地なのだと少しだけ自分を讃えてみよう。本当のスタートラインに立つことがで出来た自分を少しだけ祝福してみよう。いちばん最初に第一歩を踏み出した時のことを振り返ってみよう。振り返ってみれば、いちばん最初の地点から、けっこう遠くまでたどり着いているものだよ。




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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします