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読むだけで面白い本5選【意味を求めない読書】

「行動を伴わない読書に意味はない」

これは読書を手段と捉える者の主張。しかし、私にとっては読書自体が目的である。単純に面白いから読んでいる。実生活に役立てようと思って、本を読んではいない。今回は「読むだけで面白い本」を紹介する。

注)紹介文は私の解釈をもとに書いているので、著者の意図とは異なる可能性がある。


森林がサルを生んだ

ひとこと感想
人間は地球というシステムにバグを引き起こすウイルスみたいなもの。

我々人類は、自然界において特殊な存在である。人類の特殊性は二足歩行、体毛、顔の構造など身体的特徴にとどまらない。人類は善悪の概念を生み出し、複雑な社会をつくり、同族殺しも厭わない唯一無二の存在。これらの特殊性はサルから進化する過程で形作られた。文化の対立、同調圧力、性差による抑圧すらも、サルの生態に由来するのだ。当書では、サルの生態的背景から人類の反自然的進化に迫る。

銃・病原菌・鉄

ひとこと感想
人類は壮大な運ゲーに巻き込まれている。

「なぜ、世界の富や権力は今ある形に配分されたのか」この問いに答える形で人類社会の発展を辿る本。歴史を振り返ると、ある人間集団が他の人間集団を侵略・征服してきた。例えばヨーロッパ人によるアメリカ大陸の征服。なぜ、アメリカ先住民はヨーロッパ人に敵わなかったのか。その直接の要因は、ヨーロッパ人が銃器や鉄製武器、疫病の抗体、複雑な政治機構を有していたこと。ではどうして、ある時点で「持てる者」と「持たざる者」に分かれたのか。当書では、ある時点で差が生じた根本の要因を探る。

世界史を変えた新素材

ひとこと感想
人間は材料を操る上位存在ではなく、材料に支配された存在。

歴史は勝者の記録。そして勝者とは新素材を活用した者だ。著者曰く「材料は変革の律速段階」である。新素材を活用できた者たちが、変革を起こし、歴史を動かしてきたのだ。「石器時代」「鉄器時代」のように材料の名を冠する時代があるように、材料と歴史は密接に関わっている。希少性で人々を魅了した金、逆に豊富性をもってして人々の生活を変えた鉄、情報伝播に欠かせないセルロース、人の移動範囲を拡大させたゴムなど12種類の材料の誕生から発展、各時代の用途を紹介している。語り口がわかりやすく、著者の語彙から小説チックな面白さまで感じらる。

コーヒー学講義

ひとこと感想
人間、コーヒーに魅了されすぎ。

金沢大学の講義「コーヒー学講義」をまとめた学術書。植物学、経済学、歴史学、科学などあらゆる立場からコーヒーを語る。歴史や文化に関しては小噺を挟みつつ解説されており、科学については論文並みの実験と考察が展開されている。ハゼ(焙煎中に豆が弾ける音)の前後における香りの変化について、正確な質量測定に加え、電子顕微鏡を用いた形態観察までなされている。歴史上、コーヒーは何度もその飲用を禁じられてきたが、人々はコーヒーへの欲求を抑えきれず現代まで受け継がれてきた。コーヒーを学問する当書の存在もまた、人々のコーヒー愛の表れか。

人間は脳で食べている

ひとこと感想
脳を騙せば、ありふれた食物で酒池肉林を実現できる。

「おいしさ」の正体を追求する本。「おいしさ」を4つの構成要素に分解する考察には納得感がある。極言すれば「おいしさ」は脳内の信号だ。絶対的な「おいしさ」はなくて状況、気分、刷り込み情報によって変動する。どんな高級ワインよりも風呂上がりの水道水の方が「おいしい」し、検尿カップ(医療用具なので超清潔)に注がれたビールは「おいしくない」のだ。そんな当たり前の感覚を再考するきかっけになる本。

あとがき

冒頭にて「実生活に活きるかどうかなんて、どうでもいい」と書いたが、今回紹介した本は(意図せず)実生活に活きている。

たとえば、同調圧力に嫌気が差したときに「まぁ、俺らがサルだった時から続く特性だもんな」と思えれば、いい意味で諦めがつく。

「おいしさ」が脳内の信号だという事実を受け入れれば、高級フレンチよりマクドナルドを「おいしい」と感じる自身の低俗さや、ラーメン屋の解説文を読んでニヤニヤする浅はかさを受容できる。

「読むだけで面白い本」のストックは残っているので、気が向けば第二弾をやる。逆に「めちゃくちゃ役立った本」でもやってみたい。

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