
互いの持ち味を活かして働く
1980年代以降の社会において、雇用と賃金が上昇傾向にある職業は、認知能力だけではなく、ソーシャルスキルも求められるそうだ(Deming, 2017)。
【ポイント】
自動化が困難な仕事ほど、ソーシャルスキルが求められる(ソーシャルスキルが求められない仕事は、ルーチンワークであることが多く自動化のリスクが高い)。
全米青少年縦断調査(NLSY79)から、ソーシャルスキルが高い人は低い人よりも多くの収入を得ている(学歴、認知能力、職種の影響を除いて、この結果が示唆されている)。
ソーシャルスキルとは
一言でいうと、人づきあいの技術である。
下記の記事で詳しくまとめてあるので興味があれば見てほしい。
7つの特徴
ソーシャルスキルには以下の特徴がある(Michelson et al., 1983高山ほか訳1987)。
学習によって獲得される。
言語行動と非言語行動から成り立つ。
対人目標(例:この人と働きたい)を達成するために実行する。
適切性と効果性の観点から評価される。
適切性は、対人行動の実行方法が状況にふさわしいことである。
効果性は、当人の対人目標が達成されたことである。
適切性と効果性は、特定の状況においてどのような対人行動がソーシャルスキルとして機能するのかを評価する基準になる(Spitzberg & Cupach, 1989)。
相手から得られる報酬を最大にする。
状況の特徴に依存する。
介入によって改善できる。
働く人のソーシャルスキルが評価されはじめた
HRに関する近年の研究論文を見ると、働く人のソーシャルスキルが評価されはじめたことがわかる。
最新のソーシャルスキル理論
Heggestad et a(2023)は、ソーシャルスキルに関する実行と評価の両視点が理論的および実践的に求められると主張し、ソーシャルスキルの実行と評価を統合し、下記の理論モデルを提案した。

この理論では、ソーシャルスキルを実行する時に関わる要素として以下のものがあるとされている。
先行事象
決定要因
対人行動
対人行動の効果性認知
自己制御による調整
上記の各要素の詳細は割愛するが、重要な点は次の2つである。
コミュニケーションは相手からの反応と関連づけられて初めて意味を持つ。
相手とのかかわりの中で実行された行動をソーシャルスキルとして評価する必要がある。
相手が行為者の行動をどう認識するかによって、その行為者が実行したソーシャルスキルの評価が形成され、この評価は一旦形成されると、コミュニケーションの結果に重要な影響を及ぼす。
二人称的かかわり
他者は自分のかかわり方次第で違った反応を示す存在なのである。これは、二人称的かかわり(佐伯, 2014)と呼ばれている。
ソーシャルスキルを相手に使う上で、二人称的かかわりの視点が求められる。
互いの持ち味を活かして働くためにソーシャルスキルが必要
比較優位の原則という観点から、互いの持ち味を活かして働くためにソーシャルスキルが求められることを説明する。
比較優位の原則とは
不得意なことは誰かに任せて、自分は得意なことに専念する。
比較優位の原則に基づくと、このような協働を説明することができる。
この時に、自分の得意なことや不得意なことを相手に説明することが求められる。それだけではなく、相手と協働し生産性を高める上で、ソーシャルスキルが必須であろう。
ある仮説
自分は、協働の中でソーシャルスキルが生産性を高めるという点に対して、一つの仮説を持っている。この仮説を下記に紹介する。
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