なんてことない冬のある朝
私の朝は早い。
6時前。ベッドから這い出す前に、横の娘を起こさぬようにこっそり太陽礼拝のポーズ。寝ている間に固まった肩甲骨まわりを少し緩める。
下に降りたら水でさっと顔を洗って、決まった組み合わせの服を着る。髪を梳かして、後ろで一つにまとめる。
身支度はこれでおしまい。
トーストに塗るバターの量をケチらないのが私のポリシー。更にその上からサンダルフォーのミックスベリーのジャムを塗って、冷めないうちにザックザック大きな口でかぶりつく。このジャムは子供の頃から食べていて、ずっと私のお気に入り。
温めたカフェオレを飲みながら、娘の連絡ノートを書いてしまう。昨日の出来事の中から、特に先生に伝えたいものを選ぶ。先生がクスッと笑えて、休憩時間の楽しいアクセントになるようなものを書きたい。
玄関を出ると、キンと冷えた冬の空気が頬に心地よい。
私は酒蔵に囲まれた場所に住んでいるので、通勤路にはいつもつきたてのお餅のような、温かみのある甘い香りがふうわりと漂っている。酒蔵の朝は、私のそれよりもっと早いのだ。
電車に乗り込む。車内の40分はかけがえのない自分だけの時間である。noteを書いたり、本を読んだりして過ごす。
ふと顔を上げて窓の外を見ると、山林が雪化粧している様子が飛び込んできて、思わず目を細める。大人になってからようやく、薄暗い冬の朝にも美しさを感じられるようになってきた。
降車する駅は県内で一番大きく、人々が早足で行き交っている。私もその群れの1匹になり、流れに身を委ねてするりと改札を抜ける。少し前までつい駅のコンビニでお菓子や飲み物を買っていたけど、最近は寄り道グセも無くなった。ずるずると日々に組み込まれたコンビニでの“プチ贅沢”は、決して私を満たしてくれるものではないと気付いた。
バスに乗り換えて、10分もすれば我が職場である。さあ今日も淡々と粛々と、自分の職務を全うしましょう!