ASD長男の行動障害〜遺糞症〜
遺糞症とは、4歳以上の子どもが意識的または無意識に、不適切な場所で排便してしまう状態を指します。その原因は、便秘や排便への恐怖心、過度なストレス、家庭や学校環境の変化などの心理的要因など、さまざまです。今回は、その中でも心理的要因が関わる情緒や行動障害としての遺糞症について、我が家のASD長男(小2)が起こした出来事についてお話しします。
【子供部屋にうんちの化石】
我が家には子ども専用の遊び部屋があります。本棚には絵本や図鑑が並び、大量のおもちゃ箱が置かれている部屋です。ある日、その子ども部屋で何となく臭いが気になり、掃除をしようと本棚やおもちゃ箱を動かしてみたところ、驚くべきものを発見しました。
なんと、化石化したうんちがいくつも落ちていたのです。それらはカチカチのお団子状で、表面にはカビが生えて白くなっており、最初はそれがうんちだと気づきませんでした。
驚いた私は思わず、「なんで部屋の中にうんちが落ちてるのよ!」と厳しい口調で声を上げてしまいました。すると、年中の次男が状況を知っている様子で、「このうんこは兄ちゃんのだよ」「兄ちゃんが部屋でうんこしてたもん」と教えてくれたのです。
頭では、長男を責めても仕方がないと分かっていましたが、実際にうんちがおもちゃ部屋に落ちている事態を受け入れるのは難しく、つい「なんでトイレじゃないところでうんちなんかするの!!」と強く問い詰めてしまいました。すると、案の定、長男は「絶対そんなことしてない!!」と否定し、そこから30分にわたる攻防戦が始まりました。
おそらく長男は、「認めたらもっと怒られるのでは」と恐れて、謝るタイミングを逃してしまったのでしょう。一方で私も、怒りを引っ込められず、「とにかく!当たり前のことだけど、うんちは必ずトイレでして!」と大声で叱りつけて、その日の話し合いは終わりました。
【長男が自分のうんちを外に投げた】
数日後、今度はさらに驚くような出来事が起こりました。我が家の車のフロント部分に、両手いっぱい分ほどの大量のうんちがべっとりと張り付いていたのです。それは明らかに鳥のフンではなく、人間が意図的に付けたような状態でした。さらに周囲をよく観察すると、お隣さんの車のタイヤにも、同じようにうんちがベチャッとついているのを発見しました。
数日前の室内での出来事が頭をよぎり、私は「これは絶対に長男の仕業だ」と確信しました。しかし、直接長男に問い詰める前に、まず次男に話を聞いてみることにしました。すると、次男は申し訳なさそうにこう話し始めました。
「兄ちゃんが2階の窓を開けてお尻を出してうんちしてたよ」「それから、うんちを手に持って外に向かって投げてたのを見たよ」「でも、パパとママには絶対に言わないでって兄ちゃんに言われたから黙ってた」
次男の証言を聞いて、私は驚きと困惑で言葉を失いました。長男がなぜそんな行動を取ったのか、理由を考える必要があると感じつつも、この非常事態にどう対応すればよいのか頭を抱えることになりました。
2階の窓からお尻を出す行為自体、言うまでもなくとても危険な行為です。もしバランスを崩して2階から落下していたら命に関わる事態になっていたかもしれません。そう考えると、背筋が凍る思いでした。
それに加え、うんちを外に向かって投げたり、窓からお尻を出して排便するという異常な行動を取った長男に愕然としました。
さらに、お隣さんの車のタイヤまで汚してしまったことで、「どうやってお詫びすればいいのだろう」と冷や汗が止まりませんでした。まさか、「子どもが2階の窓から自分のうんちを投げ、それが偶然車のタイヤについてしまった、なんて説明できるだろうか……」と途方に暮れました。
怒り、戸惑い、不安――さまざまな感情が絡み合い、私の心のキャパシティを超えてしまいました。そして気づけば、私は長男を感情的に叱りつけていました。
「どうしてこんなところにうんちをくっつけるの!」
「2階からお尻を出すなんて、もし落ちて死んだらどうするの!?」
「小学校2年生にもなって、こんなことするなんて頭おかしいんじゃないの!?」
怒りのスイッチが入ると、アクセルペダルを踏み続けるように感情が加速し、制御不能になってしまいました。一方で長男は「そんなことするわけないじゃん!」と半ギレしながら否定。そんな態度に、私の怒りはさらに頂点に達しました。そしてついに、
「悪いことした上に嘘をついたら警察が来るよ!もうこの家にいられなくなるからね!」
と、半ば脅迫じみた言葉を吐き出してしまったのです。
私の爆発的な怒りに対する恐怖心と、「本当に警察に捕まったらどうしよう」という不安があったのか、長男はついに観念して、「ぼくがうんちを投げた」と自白しました。
長男の自白を受け、少し気持ちの落ち着きを取り戻し、冷静にその時の状況や心境を聞いてみようと思いました。
「どうしてそんなことをしたの?」
「トイレに間に合わなかったの?」
いろいろと聞いてみましたが、長男自身も首を傾げ、理由を説明できませんでした。ただ、「悪いことだと分かっていたけど、どうしてもやりたくなってしまった」とポツリと話しました。その言葉に、私は胸が締め付けられる思いでした。
お隣さんには私がお詫びに行きました。しかし、詳細を正直に話すことは難しく、「子どもが車のタイヤを泥で汚してしまって……」と説明しました。お隣さんは全く気づいていなかったようで、「大丈夫ですよ」と穏やかに謝罪を受け入れてくださいました。
その後、私はお隣さんの車のタイヤを念入りに洗浄しました。お隣さんは「そこまでしなくても大丈夫ですよ」と制止してくださいましたが、内心「これが泥ではなく、うんちだとバレてはいけない!」という一心で、必死にタイヤを掃除させていただきました。申し訳ない気持ちでいっぱいで、何とか綺麗にしなくてはという思いだけで動いていました。
一方、我が家の車のフロントについたうんちに関しては、長男自身に処理させることにしました。彼にはトイレットペーパーを使って汚れを取り除いてもらい、さらに洗剤を使って洗浄までやらせました。長男は泣きながら作業をし、「ごめんなさい、もうしない」と、初めて心からの反省の言葉を口にしました。
それから約2ヶ月が経ちましたが、長男がトイレ以外の場所で排便したり、それを使って遊んだり、いたずらをするような行動は一切なくなりました。
【遺糞症は発達障がい児にたまに見られる行動障害の一種】
今回の一件を療育の先生に相談してみました。先生は、療育で見せる長男の様子からは、とてもそのような行動を想像できないと驚かれていました。ただ、小学校での過剰な適応による精神的な負担が、このような行動障害に結びついている可能性もあるとのことでした。
また、長男が自分のうんちを手で握って投げるという行動については、心の背景を理解するのは難しいものの、もしかすると、そうすることで心の均衡を保っているのかもしれないと説明がありました。この行動を診断名で表すのは難しいですが、強いて言うなら「遺糞症」と考えられるそうです。
療育の先生は、私が長男を強く叱責したことを非難することなく、「こちらでも様子の変化など、気を付けて見ていきますね。ゆったりと見守っていきましょう。」と優しく声をかけてくださいました。
【今回の出来事を振り返って】
この一連の出来事は、私たち親子にとって大きな教訓となりました。長男の行動の背景に何があるのか、そしてそれをどう受け止めるべきなのか、改めて考えさせられる機会になりました。
学校で一生懸命頑張っている長男をもっとねぎらってあげたいと思いました。
そして、長男に「この間は感情的になって怒鳴ってごめんね」と謝ったところ、長男も「ぼくが悪かったから。ごめん」と素直に謝ってくれました。
それ以来、長男の突拍子もない行動は起きていません。しかし、今後も同じようなことが起こり得ると心に留めておき、その時には感情的にならず、長男の気持ちや行動の背景を丁寧に見守っていこうと思っています。
🍀おわりに
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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