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多裂筋の過緊張を改善する簡潔なセルフエクササイズ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

立位での背筋伸展運動の繰り返し-腰背部筋疲労後の筋せん断弾性率変化への影響

Kumamoto T, Seko T, Matsuda R, Miura S. Repeated standing back extension exercise: Influence on muscle shear modulus change after lumbodorsal muscle fatigue. Work. 2021;68(4):1229-1237.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景]
腰痛では、多裂筋の筋繊維が硬直化することが報告されている。腰痛は腰背部筋の疲労と関連していた。腰痛に対する運動即効性のメカニズムをせん断弾性率を用いて検証した報告はない.ここでは、一時的な腰背部筋疲労を生じさせ、疲労に関連した非特異的な腰痛を模擬した。

[目的]
せん断波エラストグラフィーを用いて測定した多裂筋の筋弾性の結果から、疲労した腰背部筋に対する立位背筋伸展運動の効果を評価する。

[方法]
健康な被験者33名を無作為に3群に分けた。腰背部筋の疲労課題としてBiering-Sorensenテストを立位背部伸展運動の前に実施した.疲労負荷群では、疲労負荷終了後、5セットの運動を行った(下図)。疲労非運動群は、疲労課題終了後、運動を行わず、疲労運動群と同じ時間立位を維持した。非疲労運動群は、疲労課題を行わずに5セット運動した。群内要因および群間要因として、運動前後の多裂筋の剪断弾性率を比較した。

[運動手順] まず、前方を見ながら手のひらで骨盤を腸骨稜の後面から前方に押し出し、4秒間で最大に体幹を伸展させ、最大伸展位を10秒間維持した。次に、4秒間で立位に戻り、10秒間立位を維持した。

[結果]
立位後屈運動後の多裂筋のせん断弾性率は、疲労-運動群で有意に低下し、疲労-非運動群および非疲労-運動群では有意な低下が認められなかった。

[結論]
立位背筋伸展運動は、疲労した多裂筋のせん断弾性率を向上させた。したがって、疲労した筋の弾力性の変化が筋疲労による腰痛の予防につながる可能性が示唆された。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅介護職や看護師、リハビリ職の腰痛は、大きな問題と言わざるを得ない。
introductionでも、このように述べられている。

介護職は体幹を前傾させた姿勢が仕事の3割を占めるため、腰痛の有病率が高い
体幹が前屈みになると多裂筋の内圧が上昇し、筋内圧の上昇に伴う筋虚血が腰痛の原因であると報告されている
介護職や看護師を対象とした腰痛に対する介入として、腰背部筋疲労による腰痛を改善・予防するために、立位背部伸展運動(SBEE)のような簡単な運動を定期的に行うことが期待されると報告されている
この運動は、椎間板髄核の後方変位を矯正するのに有効であるとされている
しかし、実際の腰部筋群の筋生理学的な変化については、これまで議論されてこなかった。

今回紹介されているSBEEは、その名の通りの運動であり、極めて簡単である。よく、腰痛をもっている方が、「イテテテ、、」といいながらとる姿勢と似ている。人間の自然の反応というのは、実に理にかなっていると改めて思わされる。
ただ、大切なのは、この運動の目的を知り、反射的ではなく戦略的を行うことで、腰痛軽減の一助になり得るということだ。
患者さんの身体はもちろん、私たち自身の身体も、大切にしていきたい。

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最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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