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書籍「二周目の恋」
7人の人気女性作家による短編集、「二周目の恋」を読みました。
こういうさくっと読める短編集、気持ちが疲れてる時にいいですよね。感想をまとめてみました。
7篇すべて個性的で、退屈な物語は一つもない!
さすが人気作家たち…と唸らされる、彩り豊かな恋愛小説たちでした。
中でも特に印象的だったのはこの2つ。
・綿矢りさ「深夜のスパチュラ」
・桜木紫乃「無事に、行きなさい」
「深夜のスパチュラ」/綿矢りさ
物語ってこんな文体で書けるんや、ということにまず驚きます。
主人公の一人称で、考えていることをノンストップで綴り続けるスタイル。
可耶には、何回かデートを重ねもうすぐ付き合えそうな同じ大学の男の子がいます。
明日のバレンタイン、彼に何を渡すか、作るか、買うか、お店を見て回りながら永遠しゃべってる。
例えば、こんな一節があります。
「偽万札チョコ四百万円分!? ふざけてるわ、笑いを取りに走る系?こういうギャグ風味のチョコを渡す人は案外照れまくってるだけの本気って言う可能性すら出てくる。好きな人の彼女にはなれなくても、せめてインパクトだけは残したい、みたいな……。」
めっちゃおもろい。
大学生女子の脳内を完全再現しつつ、綿矢りさのセンスに溢れてる。
最後、彼氏にもらったお菓子がパティシエ級に美味いというオチも完璧で、軽快な気分でサクサクっと読めます。
「無事に、行きなさい」/桜木紫乃
こちらは桜木さんらしい落ち着いた文体。
THE 大人の恋愛!って感じでこれまた面白いです。
北海道で人気レストランのシェフをつとめる倫彦は、アイヌ紋様のデザイナーとして注目されているミワと恋仲。
しかし物語冒頭から、倫彦のミワへの愛情は本当なのに、何か気持ちに翳りが見える。何を思っているのか、よくわからないまま進みます。
倫彦の新店の壁に、ミワが大胆なデザインを施す。
今をときめく大人気の若手デザイナーにつてがあるなんてすごい、と周囲から羨望の眼差しをうける倫彦。
その後、バイトで雇った大学院生の女子と、なんかようわからんけど関係を持ってしまう。
倫彦の気持ちの変化にミワが気付いて、先に別れを切り出すミワ。
倫彦ずるいわあ。
ミワとはもう付き合えないって決めてるくせに、はっきり言わんと、相手に言わせるタイプのやつ。
ミワは「ああ、振られちゃった。悔しいなあ」とか言うてる。
ミワの心境、お察しします。
こいつ、もう私のこと好きじゃないくせに、自分からは別れようっていう勇気ない。でももう付き合い続けられへんことは明確やから、こっちから言うしかない。みたいなシチュエーション、経験したことある女性は多いのではないでしょうか(急にめっちゃ喋る)
最後、こんな文章で物語は終わります。
「もう、肌を重ね終えたときの不安に遭わずに済む。
ただ単に怖かったのだと、風が教えた。」
…相手が魅力的すぎて振られたり自分が傷ついたりするんが怖かっただけやないかい!
となりますが、納得です。こういうやついる。
他の5つの物語も、甲乙つけがたい面白さなので、ぜひご一読ください。