55 「人という字を3回書いたら」試験前の緊張が和らぐ理由 ~メントレと脳神経科学の視点で解説~
こんにちは、co-育てメンタルトレーニングへようこそ!今回は、我が家で実際にあったエピソードをもとに、「試験前の緊張」と「おまじないの力」をメントレと脳神経科学の視点からお話しします。
息子がスイミングスクールの試験前に緊張
先日、息子がスイミングスクールの最上位クラスへの試験を控え、「緊張する…」と呟きました。その時、妻がこんなことを提案しました。
「手のひらに『人』という字を3回書いて飲み込むと、緊張が和らぐよ。」
息子は少し戸惑いながらも、真剣に手のひらに『人』を書いて飲み込む動作を繰り返しました。その姿を見て、改めて「おまじない」の力と脳の働きの関連性に気づきました。
脳神経科学から見た「緊張」とおまじないの関係
「緊張」とは、主に脳内の扁桃体が活性化し、体が「闘争・逃走モード」になる状態を指します。この状態では、自律神経のうち交感神経が優位になり、心拍数が上がり、呼吸が浅く速くなるなど、体がストレスに備える準備をします。
おまじない「手のひらに人を書く」には、以下のようなメントレと脳神経科学的な効果が期待されます。
1. 扁桃体の過剰反応を抑える
扁桃体はストレスを感じたときに活性化し、「危険だ」と認識しますが、手を使った具体的な動作を行うことで、脳の注意が不安から「今やっている動作」へと切り替わります。この注意の切り替えは、前頭前皮質(思考や注意をコントロールする部位)が活性化することで可能になります。
前頭前皮質が活性化すると、扁桃体の過剰な反応が抑えられ、心が落ち着きやすくなるのです。
2. 副交感神経の優位化
手のひらに文字を書くという行動は、触覚や筋肉を使う軽い運動になります。この触覚刺激は、自律神経のバランスを整え、副交感神経(リラックスを司る神経)を優位にする効果があります。
副交感神経が優位になると、心拍数が落ち着き、呼吸が深くゆっくりになるため、緊張が緩和されます。
3. ルーチン化で安心感を得る
おまじないの行動を繰り返すことで、脳は「この行動=リラックスのきっかけ」と学習します。これは脳の古典的条件付けの一種で、「手のひらに『人』を書く」という儀式的行動を行うと安心感が得られるようになります。
この学習は、脳内の海馬(記憶や習慣を司る部位)が関与しており、特定の行動を通じて緊張の緩和を期待できるようになるのです。
4. 自己暗示の力(プラセボ効果)
おまじないに「効く」と信じることで、脳内ではドーパミン(快感や安心感を与える神経伝達物質)が分泌されます。このドーパミンが「これをやれば大丈夫だ」という安心感を生み出し、結果的に緊張を和らげる効果が期待できます。
親ができる「緊張サポート」
おまじないを取り入れる以外にも、子どもの緊張を和らげるために親ができるサポートをいくつかご紹介します。
1. 呼吸法を一緒に練習する
呼吸は自律神経と密接に関係しています。「4秒吸う → 4秒止める → 4秒吐く」を数回繰り返すことで、副交感神経が優位になり、リラックスを促します。
2. ポジティブな声かけをする
緊張を否定せず、「緊張するのは頑張ろうとしている証拠だよ」「大丈夫、今までの練習があるから」と肯定的な言葉をかけることで、プレッシャーを和らげます。
3. 試験後の安心感を共有する
「どうだった?」と結果を聞くよりも、「頑張ったね」「最後までやり切ったね」と努力を認めることで、次回への自信につながります。
試験後の息子の言葉
試験が終わったあと、息子は笑顔でこう言いました。
「『人』の字、効いたよ!」
その一言に、私たち親も心から嬉しくなりました。おまじないの力と、それを信じて実践することで、緊張を乗り越える力が湧いてきたのだと実感しました。
おわりに
「手のひらに人を書く」というシンプルなおまじないが、脳神経科学的に見ても意味のある行動であることがお分かりいただけたでしょうか?大切なのは、この行動が「自分には緊張をコントロールする力がある」と感じさせるきっかけになることです。
緊張は成長のサインでもあります。それを否定せず、親子で一緒に向き合い、支え合いながら乗り越えていけたら素敵ですね。次回も、「co-育て」のヒントをお届けします!