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46 病院の窓口で感じた不信感 〜家庭というチームの心理的安全性を脳神経科学で考える〜
先日、とある病院の窓口に問い合わせをしました。その対応は、話を途中で遮られたり、冷たい態度を取られたりと非常に不快なものでした。私は困りごとを解決するために電話をしたのに、その瞬間から「ここに頼るのはやめよう」と思うほどの不信感を抱きました。
この体験を通じて改めて感じたのは、心理的安全性の重要性です。相手が話を遮られたり、冷たく扱われたりすると、心の中に不信感や不安が刻まれ、それが強く記憶に残ります。そして、心理的安全性の欠如は、その場にいる人たちの脳の働きにも大きく影響を及ぼします。
そこで今回は、家庭というチームにおける心理的安全性の重要性を、脳神経科学の観点から考えてみたいと思います。
1. 心理的安全性と脳の働き
心理的安全性が失われると、人の脳内で何が起きるのでしょうか?
(1) 扁桃体が過剰に反応する
扁桃体は、脳内で「危険」や「脅威」を感知する部分です。話を遮られる、冷たい態度を取られる、否定されるなどの経験は、扁桃体を活性化させ、「この場は危険だ」「守らなければ」といった防衛反応を引き起こします。
• 結果:
• 心拍数やストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が増え、身体的・心理的に緊張状態になる。
• 相手に対して不信感を抱き、対話を避けるようになる。
(2) 前頭前野の働きが低下する
前頭前野は、論理的思考や感情のコントロール、問題解決に関与します。しかし、心理的安全性が低い状況では、ストレスが強まり、前頭前野の働きが抑えられてしまいます。
• 結果:
• 冷静な判断や柔軟な対応が難しくなる。
• 感情的な言動が増え、攻撃的または防衛的な態度になりやすい。
(3) 記憶の強化と学習の妨害
ストレス状態では、扁桃体が強く活性化する一方で、記憶を司る海馬の働きが低下します。その結果、「嫌な記憶」は強く刻まれる一方で、新しい学びやポジティブな記憶が形成されにくくなります。
• 結果:
• ネガティブな経験がトラウマのように記憶に残る。
• 子どもの場合、成長に必要な学習能力や好奇心が損なわれる。
2. 家庭における心理的安全性の重要性
家庭は、子どもが最初に接する「社会」です。ここで心理的安全性が確保されているかどうかは、子どもの脳の発達や人格形成に大きな影響を与えます。
(1) 安心感と成長ホルモンの分泌
子どもが安心感を持てる環境では、ストレスホルモンが抑えられ、成長ホルモンや幸せホルモン(セロトニン、オキシトシン)が分泌されやすくなります。これにより、脳の発達や心の安定が促されます。
(2) 自己効力感の育成
心理的安全性が高い家庭では、子どもが自分の意見を自由に言えたり、失敗を許容されたりするため、「自分には価値がある」「自分にはできることがある」という自己効力感が育ちます。
3. 親が作る心理的安全性のある家庭
親として、子どもに心理的安全性を提供するためにできる具体的な工夫を、脳神経科学の観点を踏まえながら考えます。
(1) 子どもの話を最後まで聞く
話を遮られる経験は、扁桃体を活性化させ、不信感や恐れを生みます。親が意識的に「最後まで聞く」ことで、子どもの脳は「ここは安全な場所だ」と認識します。
• アクション例:
• 子どもの話を途中で否定せず、「それでどう思ったの?」と続きを促す。
• 忙しいときでも「今は時間がないけど、後でちゃんと聞くね」と約束をする。
(2) 失敗を受け入れる態度を持つ
失敗を責められると、子どもの脳はそれを「脅威」として捉え、行動が萎縮します。一方で、失敗を受け入れる環境では、挑戦心や創造性が育ちます。
• アクション例:
• 「どうしてこんなことをしたの?」ではなく、「次にどうすればうまくいくと思う?」とポジティブな問いかけをする。
(3) 親自身が余裕を持つ
親がストレスやイライラを感じていると、その感情は子どもに伝染し、家庭全体の心理的安全性が損なわれます。親自身が心の余裕を持つことが、心理的安全性を守る第一歩です。
• アクション例:
• 自分のストレス解消法を見つけ、日常的に取り入れる(趣味やリラックスの時間を確保する)。
• 子どもに「今日はちょっと疲れたから、少しのんびりさせてね」と素直に伝える。
(4) 感謝と承認を伝える
ポジティブなフィードバックは、子どもの脳を活性化させ、安心感を与えます。特に、オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌が促進されるため、親子の絆が深まります。
• アクション例:
• 「お手伝いしてくれて助かったよ」「学校で頑張ったね」と具体的に感謝を伝える。
4. 家庭に心理的安全性を取り入れるための習慣
1. 家族会議を定期的に開催: 家族全員で意見を共有する場を作り、誰もが話せる雰囲気を育む。
2. 感情の名前を共有: 「今イライラしてる?」「ちょっと疲れたのかな?」と感情を言葉にする習慣をつける。
3. 小さな成功体験を褒める: 子どもが少しでも進歩したら、それを認めて伝える。
5. まとめ:心理的安全性が家庭の未来を支える
病院の窓口で感じた不信感は、心理的安全性の欠如によるものでした。これを家庭というチームに置き換えると、親の言動が子どもの脳や心に大きな影響を与えることがわかります。
親が心理的安全性を意識して家庭を運営することで、子どもは安心感を持ち、自分らしく成長することができます。扁桃体の過剰反応を抑え、前頭前野を活性化させるために、家庭内のコミュニケーションや雰囲気を見直すことが、これからの時代における「親のリーダーシップ」だと言えるでしょう。
家庭は、子どもが初めて経験する社会です。その中で心理的安全性を提供できれば、子どもは未来に向けて力強く成長していけるのです。