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中庸

秋分を過ぎましたが、9月7日は二十四節気の一つ『白露(ハクロ)』でした。
毎日30℃超えの地域が多いですが、白露は野の草に露が宿って白く見え、秋の趣が感じられる頃という意味です。
白露を過ぎると日中は真夏のような暑さでも、夜が長くなるにつれて朝晩は次第に涼しくなり、暑くもなく寒くもなく、ちょうど良く過ごしやすい季節が到来します。

このちょうど良い状態を漢方では『中庸』と呼びます。

江戸時代の有名な儒学者、貝原益軒(かいばらえきけん)は著書『養生訓』の中で、「養生の道は中庸を守らねばならない」と記しています。
「中庸」の類義語には次のようなものがあります。
・適度(ちょうど良い程度)
・良い加減(適度)
・中位(中程度の位)
・中道(一方に偏らず穏やかなこと)
・頃合い(適当な時期。ちょうどよい程度)
・緩和(厳しさや激しさを和らげること)
・中立(偏りがない状態)
・ニュートラル(どちらにも属さないこと。中立)

ここで秋に多いお悩みの1つ「肌荒れ」に関して2つの例を挙げてみましょう
①体力があって、暑がりで赤ら顔、胃腸が強く便秘気味、風邪をひくときは高熱がでるが回復も早い、赤く膿をもった吹き出物ができる
②体力や抵抗力がなく、痩せ型、または水太りで顔が青白く、下痢気味で寒がり、肌が乾燥して白い粉がでる
の方がいらっしゃるとします。

①の方に対して
漢方薬では、身体の余分な熱を冷ます=清熱と、エネルギーを巡らせる=理気の生薬を使い、
日常生活では高カロリーの食事を控え、ストレッチやリラックスの養生で中庸を目指します。

②の方に対して
漢方薬では、エネルギー(気)と血を補う=補気、補血と、身体を温める=補陽の生薬を使い、
日常生活では温かい食事や入浴後の保湿、身体を冷やさない養生をご提案し中庸を目指します。

漢方薬をお選びする際には、「陰と陽」「虚と実」「熱と寒」などの『証』を見て体質を判断するのですが、
現代社会では、冷房や冷蔵庫、パソコンなどの電化製品の普及などを背景に、生活は便利になりましたが、運動不足や不自然な食事、猛暑などのストレスが原因で、
②のように体が冷えて寒さに弱い状態である「寒」と、体力が不足して体質的に弱った状態である「虚」に傾きやすくなっていると言えます。

繰り返しますが養生の基本とされるのは「中庸」です。

「中庸を守る」ことは、ただ闇雲にやるのではなく、環境の中で起こる様々な変化に寄り添いながらバランスを見つけて過ごすこと。
食事でも体にいいからと言って過剰に摂取し続ければ体に悪影響を及ぼすことがありますし、運動し過ぎても関節を痛めたり疲労につながります。
思考もそうです。
偏りや偏見、強いこだわりを持ちすぎると、自分だけでなく周りをも苦しくさせてしまいます。常に平常心で物事に対処すること。
聖人と言われる人でもなかなか出来ないことですが、それ自体が徳が高いと言われます。どっちつかずや 平均的 とは全く意味が違います。
常に動く思考の中で中庸を守ることはとても難しいものですが、
食べ過ぎない。眠りすぎない。動きすぎない。喋りすぎない。考えすぎない。
適当であるということは、何事においても大切であるということを覚えておきましょう。

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