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「死顔(吉村昭)」を読む
吉村昭著「死顔」読了
雑文です、作品には触れません
内容や解説は、良識のある方のレビューをお読み下さい
遺作です
この作家に出会ったのは、30年前の高校生の頃、
映画「漂流 (森谷司郎監督 1981年)」の原作者として
その頃は、あらゆるジャンルの映画を観て、本をかたっぱしから読み流していた
20代前半の頃まで歴史小説は、司馬遼太郎に傾注した、
誰もが見聞きしたことのある人物が、時代に翻弄されながらも情熱的に躍動し立志していく様を、情緒あふれる文体で描き、時には著者自身の考えを直接挿入してくる
憧れと高揚感を持って読み進めた
この年代にありがちなことです
そのため、この作家に入り込む余地がなかった
それが、30代のころから徐々に嵌まっていく、
歴史ものは、その時代を象徴しているがあまり日の当たらない事案や時代に埋没している人物を題材にしている
状況や行動を細かに描写し、感情や言葉は選び抜いた簡潔な表現で構成する、ひとつひとつの事案が写実的で臨場感を持って迫ってくる
短編やエッセイは、自己の若い頃の生死を彷徨ったことを根底として生に対し向き合った作品である
歴史もの、短編とも、そのリアリティーから生きていることの意味を問い掛けれ、戸惑いと焦り、同時に執着そして恐怖すらを感じさせられた
自分自身も社会で揉まれ、多少なりとも経験を積んだことで、
この作家の描く作品に追い付いたのだろう
その後は、安心して読める作家のひとりとして重宝させて頂いた
作家の死後、忙しさにかまけ、なかなか作品に手が出なかったが、遺作ということもあり、久し振りに読ませて頂いた
表題である作品を含め、作品集の掲載作品は、どれも「死」にかかわる内容である
読む側も随分歳をとり、沢山の別れを経験し、死に対しても抵抗がついたのか淡々と読みきることができた
ただ、改めて思うに、わたしには、まだ明らかに辿り着けない領域があるように思えた
「覚悟」ではないかと思う
作家でもある奥方の後書き、
作家の最後を書く使命を背負った人の描いた壮絶な文章である
そこには、逝くべくことへの覚悟をがあった
それは、凄まじい執念をもって生きてきた人が持てる領域ではないだろうか
やはりまだ読むべきではなかったのかと、
その覚悟を持てるまで、もだもう少し前を向いて行かなければならない
いいおっさんのつもりであったが、まだまだ小僧であることに気付かされた作品である