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人気ラッパーが大麻産業に参入する件(日本じゃないよ)

▼たまたま山梨日日新聞を読んだら、小さいが面白い記事が載っていた。2019年7月12日付。共同通信配信の記事だ。

〈米人気ラッパー ジェイ・Zさん 大麻産業参入へ〉

〈【ロサンゼルス共同】米人気男性ラッパーで実業家でも知られるジェイ・Zさん(49)が10日までに西部カリフォルニア州の企業と提携し、大麻産業に参入すると明らかにした。米国では同州など11州で嗜好品(しこうひん)としての大麻使用が合法化され、急成長する市場に注目が集まっている。

 提携企業は娯楽用の大麻販売を手掛ける「カリバ」。人気歌手ビヨンセの夫でもあるジェイ・Zさんはブランド戦略を担う予定で「素晴らしい何かを楽しみながらつくり出し、良いことで人々を導きたい」と声明を出した。

 ジェイ・Zは元囚人が職業訓練を通じ更生を目指す活動を支援し、ファッションブランドなどでも成功を収めている。先月にはヒップホップアーティストとして初めて経済誌フォーブスの億万長者リストに入った。

 合法化された大麻産業には女優ウーピー・ゴールドバーグさんやカントリー音楽の大御所ウィリー・ネルソンさんら多くの有名人も携わっている。〉

▼つくづくお国の違いだと感じる記事だ。

大麻産業に参入することが「良いことで人々を導きたい」というコメントで語られる国と、「あいつはクスリに手を出した」ということで、薬物依存の人を心身ともにボロボロになるまで叩き潰そうとする国と、叩き潰したあとはそのことをすっかり忘れ去る国と。

単純に比べるのは愚かだが、こうした記事は小さい扱いだけれども、自らの社会の特徴を客観視して、文化の特徴を相対化する手がかりになると思う。

▼日本社会のSNSを介した攻撃性、他罰性の強さは、いったい何が源になっているのだろう。この人たちは、なにかクスリでもやっているんじゃないだろうかと思うほど、激しい攻撃性を剥き出しにした書き込みを目にすることが、最近増えているように感じる。

「ケガレ」を極端に嫌う思想がーーそれは「神道」と結びついたり、「国家の秩序」と結びついたりするーー、今もかたちを変えて噴出しているのだろうか。もしそうだとしたら、薬物依存の人は、たしかに犯罪者なのだが、なによりも治療が必要な患者だ、と言っても、大勢は変わらない。それは思想の次元の話だからだ。

新自由主義」と呼ばれる思想や、「自己責任論」の形で定着してしまった思想について、それまでの思想と何が違うのか、何が新しくて何が古いのか、腑分(ふわ)けする必要がある。

その作業は、たとえば「自己責任論の海」で溺れている人や、たとえば一瞬の「反射」や「感情」に任せて「スマホの奴隷(どれい)」や「SNSの奴隷」状態に慣らされてしまった人にはできない。

奴隷には奴隷の喜びや楽しみがある。

(2019年8月5日)

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