楽しみに身をひたして|型染め・江戸更紗体験
新しい場所は、少し緊張する。
それが楽しいことだとしても。
エプロンのみ持参とのこと。
でも暑さ対策グッズをわんさか持って、出掛けたのは8月初旬。
以前から型染めが気になっていました。
沖縄の紅型の影響をうけた芹沢銈介や、そのお弟子さんの柚木沙弥郎が好きで。
ぱきっとしたモチーフと色彩。素朴な優しさがあり、北欧テキスタイルに通じるよう。
日本民藝館の特別展や、静岡市の芹沢銈介美術館へ伺ったりしたけれど、実際に型染めをした事は無く。
どこかで体験出来ないかなと思い「染の里おちあい」を発見しました。
今回は江戸更紗のテーブルセンター染め体験を予約。勢いで申し込んだものの、どきどき。
まずはショップで受付をし、工房へ。
川のせせらぎと、緑が心地よい。
更紗とは
・更紗はインド発祥の木綿布。鮮やかな色彩と、唐草や花鳥図などが特徴。日本へはポルトガル、オランダの貿易船が交易の品として持ってきた。インド更紗は木版や手描き。染料を使うため繊維の中まで浸透する。
・和更紗は、本場の更紗にあこがれ作られた日本ならではの更紗。型紙で模様を作り、刷毛で色を擦り込むという独自の方法。顔料を使い熱で定着させる。色落ちしやすい。
・江戸更紗は、渋い色味とエキゾチックな雰囲気。一つの模様を複数の型紙に分けて摺る「追いかけ」の技法が特徴。通常30枚、精密なものは300枚もの型紙を使用する。
型染め体験
・染める(型紙14枚、顔料7色)
参加者は私を含め6名。
そのうち外国から2名。
染めの職人さんが教えてくださいます。
工房はエアコン完備。長い板が渡してあり、布がぴたっと貼ってある(もち粉で溶いたものを糊にするそう)。
型を乗せ、刷毛で色を上下左右に擦り込む。これを14枚の型で繰り返す。軽くすべらせるのがコツ。力を入れすぎると滲むので、焦らず重ねていく。最初はこわごわ、少しずつ楽しくなって。
刷毛の絵具が薄くなったら職人さんが付け足してくださるので、私達はひたすらシャカシャカ。
・蒸す(100℃で15分)
待っている間に、江戸更紗の反物を見せて頂く。一同が声をあげる。
こちらは江戸更紗を作るもとになった、江戸小紋の型紙。小紋は型を抜いた部分に防染の糊を置き、模様が白く残ります。
外国のかたからの質問は、翻訳アプリで。
「布の細い線は仕上げに手で描いたの?」
「いや、全て型ですよ」
「型を彫っていて、ミスしたら?」
「始めからやり直しです」
Oh…と、ため息。
技術と根気に圧倒される。
・干して出来あがり
蒸す前は薄いかなと思っていたけれど
色が濃く深くなって、好きな仕上がりに。
家で良く干してくださいねと、できたてホヤホヤを紙袋に入れてもらう。
手仕事って楽しい
ショップへ寄り、江戸小紋の型をモチーフにしたカードを購入。
炎天下のなか電車に揺られ、帰宅した頃には更紗はすっかり乾いていた。
* * *
派手に思えたテーブルセンターは、意外と部屋に馴染んでる。
見るたびに、あの日の夏空を思い出す。
そして、さらさら流れる川の音も。
伝統を絶やさないようにするには、きっと並々ならぬ努力があるはず。簡単にひとことでは言えないこともあるだろう。
でも、手を動かすって楽しい。
手仕事って、いいなあと。
無心になって作業する時間は、
楽しみに自分を染めていくよう。
なんだか私もふっくら蒸され
異国の風に包まれたみたいだった。
「染の里おちあい」
東京都新宿区上落合2−3−6
https://www.ochiai-san.com/
参考:
「インドの更紗手帖」田中敦子 編著
染の里おちあい「江戸染色の技法」
Google Arts & Culture「和更紗」立命館大学アート・リサーチセンター