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音無蓮/Ren Otonashi
2021年9月6日 22:27
家の狭い自室で仕事をしていると、時折モクモクが心臓に針をさす。その痛みのせいで、ため息が増えてしまうのが最近の悩みのタネだ。私が『モクモク』と呼んでいるそいつは、芥川龍之介なら、「将来に対する唯ぼんやりした不安」と訳すだろう。絶望だとちょっと過激かなって思う。だから、私は珍妙なそいつに『モクモク』と名付けた。お風呂に入りながら、ふと頭に浮かんだのが『モクモク』だった。湯気みたいだけどさっぱり
2021年9月5日 23:58
書いている原稿が詰まって丸一日悶々としていた。原稿自体は3000字ほど進んだが、いかんせん小説じゃないので進捗がすこぶる悪い。あと1日か2日で書き上げたら、小説に取り掛かりたい。小説と小説じゃない文章の書き方は違う。根本的な文章作法は同じだが、構成の練り方が違う。私は基本、理解しやすい文章を作るようにしている。巧みな比喩が使える自信はないので、気持ちいい感覚で使ってみた喩えを、読み返して
2021年9月4日 23:28
今日は仕事関係の勉強会に参加した。プログラマやシステムエンジニアの見習いなので、それ関係。具体的にはデータベースについて。まだサワリしか学べていないが、データベースと問い合わせ言語について考えるのは面白い。今まではもっぱら、クエリ(データベースを操作するためのプログラムのようなもの)を書くことに面白さを見出していた。しかし、データを扱っているうちに、0からデータの枠組みを設計して、そこにデ
2021年9月1日 22:13
9月になって一気に冷え込んだ。夏は死んだらしい。唐突な訃報に、先週と変わらず半袖のポロシャツで出勤する私は肩を縮ませるばかりだった。肩にずっしりと夏の死体がもたれかかってくるからか、身体が少しばかり重い。体調管理に気をつけたいね。今日は早めに寝ることにした。夏が終われば秋が来て、秋は一呼吸のうちに冬になる。緑と燦々太陽色の街並みを、刷毛を持った木枯らしが銀色に塗りたくる。冬まではまだ
2021年8月31日 23:17
在宅勤務だと往々にして、家から一歩も出ずに一日が終わることがある。退勤してすぐに『トップガン』を観はじめて、終わる頃には夜の帳が開いていた。昼過ぎから降り始めた大雨は癇癪を起こした赤ん坊のようにさんざ喚き散らして、どこかに消えてしまった。喧嘩のほとぼりから冷めたあとの静寂って、なんだかおかしくて笑いそうになる。シリアスな場面なのに腹の虫が内側から、ちょうど脇腹から肋骨にかけてをくすぐってくる
2021年8月16日 19:32
有給で取った夏休みは雨が続いた。 雨じゃなかろうと、遠出はしない予定だったけど。 お盆なんだし、お墓参りくらいしたかった。 今日の夕方になってようやく雨がおさまった。 お盆になって、死んだ人たちが精霊馬に乗ってやってきて、帰っていく。 まばたきの間の、死者との邂逅。 私は毎年、地元の、母方の実家に線香をあげに行っていた。 母方の祖父は私が物心ついてすぐに亡くなった。 父方の祖