津軽のカミサマ―救いの構造をたずねて (自然誌選書)
青森県の津軽地方には、カミサマと呼ばれる人たちがいます。
正確には、「いました」というべきかも知れません。二〇一五年現在の津軽に、カミサマたちがいるかどうかは、確認していません。
けれども、一九八七年―本書が出た年―までの日本には、確実に、存在しました。
カミサマといっても、新興宗教の教祖さまではありません。もっと地域に根差した、伝統的な存在です。イタコのようなもの、といえば、わかっていただけるでしょうか。
本書によれば、イタコとカミサマとは、似て非なるものだそうです。
イタコは、「死者の霊を呼び出す人」です。他にも、イタコの役割はありますが、ここでは省略します。
カミサマは、「神を拝んで、超常能力を授かった人」です。一般的な日本語で言えば、祈祷師【きとうし】か、拝み屋になるでしょうか。
イタコと違うのは、基本的に、死者の霊の呼び出しをやらないことです。あくまで「基本的に」です。やる場合もあります。
津軽のカミサマたちは、地域の相談役として、それなりに重要な役割を果たしてきました。さまざまな苦しみ―家庭の問題、仕事の問題、健康の問題など―を背負った市井の人々を、救う役割がありました。
そのカミサマたちの実態に迫ったのが、本書です。
一般向けに書かれた「カミサマ」の本としては、本書が、唯一のものだと思います。
現代の日本社会がなくしつつある、伝統的なシャーマニズムの形を、見ることができます。
多くの日本人にとっては、「津軽のカミサマ」の世界は、まったく未知のものでしょう。
しかし、そこで語られる人の悩みは、いつの世も共通のものです。私たちの住む二〇一五年の日本と、つながっているんだな、と感じます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
第一章 カミサマの世界
MさんとKさんのこと
イタコとカミサマ
聖地・赤倉
神たち、ホトケたち
カミサマの仕事
カミサマは生きている
第二章 救いの構造
本当に救われるのか
救いとは何か
救いの文化論
運命――第一のテーマ
共苦共感の神々――第二のテーマ
こばみ――第三のテーマ
救いの構造
第三章 先祖とホトケ
先祖とホトケ
日本の先祖祭祀
因縁罪障と救い
先祖の絆
「甘え」と「察し」
結びにかえて――シャマニズム研究への一視点
註
あとがき