ドーベルマンに何があったの?―アメリカの「新しい」都市伝説
ドーベルマンに何があったの?―アメリカの「新しい」都市伝説
ブルンヴァンを読まずして、都市伝説を語ることなかれ!
この本の著者、ジャン・ハロルド・ブルンヴァンJan Harold Brunvandは、アーバン・レジェンドUrban Legend―日本語に訳して、都市伝説―という言葉を、世に定着させた功労者です。
都市伝説に関して、実のあることを語ろうと思うなら、この人の著書を読まなければいけません。
『ドーベルマンに何があったの?』は、ブルンヴァン氏の日本語訳された著書としては、二冊目です。一冊目は、『消えるヒッチハイカー』です。この本を読む前に、できれば、『消えるヒッチハイカー』を読んでおいたほうがいいです。
けれども、『消えるヒッチハイカー』を読んでいなくても、充分、楽しめます。
この本の厚さに、ためらう人がいるかも知れませんね。大丈夫です。厚くても、するすると読めます。
文章が平易で、読みやすいからです。そのうえ、書いてある内容が、興味深いです。
題名になっている『ドーベルマンに何があったの?』は、有名な都市伝説の一つです。それは、こんな内容です。
ある女性(←女性、がポイントの一つです)の飼うドーベルマンが、突然、具合が悪くなりました。獣医に連れてゆくと、獣医は、ドーベルマンの喉に、何かが詰まっているのを発見しました。
さて、詰まっていたものとは?
続きは、ぜひ、本書をお読み下さい。
この伝説では、「ドーベルマン」というイヌの品種も、ポイントの一つです。
都市伝説のヴァージョンによっては、「ジャーマン・シェパード」、「ボクサー」など、別の品種のイヌが登場することもあります。
本書では、この『ドーベルマン』都市伝説の成立の状況が、丹念に追跡されています。都市伝説というものが、どのように成立してゆくのか、わかります。
これ以外にも、たくさんの都市伝説が、紹介されています。私がざっと数えただけでも、六十以上の伝説がありました。
例えば、以下のような伝説です。
高層マンションに住んでいる女性がいました。彼女は、室内で、小型犬を飼っていました。そこへ、女性の男友達がやってきます。
女性が身支度をしているあいだ、彼は、室内で、イヌとボール遊びをしていました。ところが、イヌが、ボールを追っているうちに……。
プロクター・アンド・ギャンブルという会社があります。略称は、P&Gです。石鹸やシャンプー、歯ブラシ、食器用洗剤などを売っている会社です。
米国で、この会社のマークについて、悪い噂が立ったことがありました。その内容は、普通の日本人であれば、奇想天外としか言いようがないものでした。
いったい、どんな噂だったのでしょう?
P&Gの都市伝説については、普通に入手できる本の中では、この本が、最も詳しく書いていると思います。
他に、「なめられた手」、「じゅうたんの出っぱり」、「ショッピングセンターのトイレ」、「エスニック・レストランの異物」、「くっついたカップル」、「誤って送られた手紙」、「ビデオに写った泥棒」、「爆発するライター」、「コンタクトレンズで失明」、「ジョガーの財布」、「二重盗難」などと略称される伝説が載っています。
怖い話も、笑える話もあります。
なお、本書は、以前に、『チョーキング・ドーベルマン』という題名で、日本語訳されています。
内容は同じですから、『チョーキング・ドーベルマン』のほうが入手しやすい方は、そちらを読んでもいいでしょう。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに・アメリカの都市伝説に魅せられて
1 「のどをつまらせたドーベルマン」とその原型
2 車とRVにまつわる伝説をさらに
3 怖い話をさらに
4 恐ろしい汚染の話をさらに
5 セックス・スキャンダル
6 情報源としてのメディアとビジネスにまつわる伝説
7 本当に、全く真新しい本物の都市伝説
補遺・都市伝説のテクストの実例
訳者あとがき
参考文献